「イブプロフェン」の解説 
作用・使用上の注意・製品一覧

「イブプロフェン」についての簡単な解説です。

目次

イブプロフェンを含む市販薬の製品一覧

解説記事を書いたことのある製品を載せています。

※ここでご紹介している製品がすべてではありません。
あと、すでに製造中止になっている製品もあるかもしれません。
そのへんはご了承くださいますようお願い申し上げます。

解熱鎮痛剤

イブプロフェンを含む解熱鎮痛剤については下の記事に書いています。
イブプロフェンについてこの記事より詳しい解説も書いてるので、興味のある方は読んでみてください。

風邪薬(総合感冒薬)

クリック・タップで開きます。

製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。

製品名1日あたりの成分量その他の解熱鎮痛剤
エスタックイブ450mgなし
エスタックEXネオ600mgなし
持続性パブロン錠400mgなし
新コンタックかぜEX
持続性
400mgなし
ストナアイビージェルEX600mgなし
パブロンエースPro600mgなし
パブロンエースPro-X600mgなし
パブロンセレクトN450mgなし
パブロンセレクトT450mgなし
ベンザブロックIP450mgなし
ベンザブロックIP
プレミアム
360mgアセトアミノフェン:180mg
ベンザブロックL450mgなし
ベンザブロックL
プレミアム
600mgなし
ベンザブロックYASUMO450mgなし
ルルアタックCX450mgなし
ルルアタックCX
プレミアム
600mgなし
ルルアタックEX450mgなし
ルルアタックEX
プレミアム
600mgなし
ルルアタックNX450mgなし
ルルアタックNX
プレミアム
450mgなし

「かぜ薬の製造販売承認基準について」によると、市販の風邪薬では1日最大450mgとなっているのですが、2020年頃から1日600mgの製品が出てきました。

450mg/日以下の製品と600mg/日の製品とでは、添付文書の「次の人は服用しないこと」のところが違います。

600mg/日の製品には基本的に以下の記載があります。
「医療機関で次の病気の治療や医薬品の投与を受けている人。
胃・十二指腸潰瘍、血液の病気、肝臓病、腎臓病、心臓病、高血圧、ジドブジン(レトロビル)を投与中の人

450mg/日と600mg/日ではそれほど違わないし、体重は人それぞれ(40kgの人もいれば80kgの人もいる)です。
正直ナンセンスだと思いますけどね。

総合感冒薬(かぜ薬)の一覧表もあるので見てみてください。
製品ごとの主要成分も載せています。

分類・作用機序

イブプロフェンの化学構造式

「ブルフェン」の添付文書より

分類

解熱鎮痛剤」です。

いわゆる「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」の一種です。

その中でもプロピオン酸系というのに含まれます。

作用機序

※詳しくはこちらの記事(「イブプロフェン」についての詳細ガイド 効果・使用方法・おすすめ製品【薬剤師が解説】)に書いているので、ここでは簡単に。

シクロオキシゲナーゼ(COX)の働きを阻害する事でプロスタグランジン(以下、PG)の合成を抑えます

PGは腫れや熱感などの炎症反応に関わっているのと、ブラジキニンなどの発痛物質の働きを強める作用があります。

また、風邪などによって発熱の情報を持つPGが作られると、それが脳の視床下部の体温調節中枢というところを刺激して体温が上昇します。

NSAIDsはPGの働きを抑えることで炎症やブラジキニンによる疼痛を抑え、発熱を抑える作用を持ちます。

効果や使用方法

効果

いろんな痛み、発熱に使います。

ただ、イブプロフェン含むNSAIDsには神経痛にも適応があるものがありますが、NSAIDs全般は神経痛にはあまり効果がない印象です。使わないこともないけど。
「消炎鎮痛剤」とも言いますし、あくまで炎症を起こしてる痛みに対して、という感じですね。
現在は医療用だと神経痛に特化した痛み止めが出てますしね(「リリカ(プレガバリン)」「タリージェ」)。

イブプロフェンはよくアセトアミノフェンと比較されますが、アセトアミノフェンはNSAIDsではありません
アセトアミノフェンは中枢において痛みを感じにくくし、NSAIDsは末梢において炎症や痛みを抑える、といった感じです。

アセトアミノフェンとNSAIDsとの違いを簡単に表にしておきます。

アセトアミノフェンNSAIDs
解熱作用ありあり
鎮痛作用ありあり
抗炎症作用ほぼなしあり
主な副作用肝障害消化性潰瘍
腎障害

医療用の使用例

イブプロフェンは小児の頭痛や足の痛みなどによく使われていますね。

安全性が高いので使いやすくはあるのですが、実際は成人にはあまり使う機会はないでしょうか。
他にもいろんなNSAIDsがありますしね。

解熱については基本的にはアセトアミノフェン一択だと思います。
高熱でアセトアミノフェンだと弱い、という時だけロキソプロフェンを使いますね。

小児の解熱については国際的にはイブプロフェンかアセトアミノフェンが推奨されていますが、イブプロフェンは日本では小児の解熱には適応がありません
小児には痛み止めとしてだけしか使えないんですよね。

これは「ライ症候群」を警戒してのようです。

ライ症候群
極めてまれですが、小児がインフルエンザや水痘・帯状疱疹にかかってる間にアスピリンなどのサリチル酸系の解熱鎮痛剤を飲むと発症する事があります。
症状は、脳浮腫や頭蓋内圧の上昇によって激しい吐き気・嘔吐、けいれん、意識障害、高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血糖などが短期間に発現して、死に至ることもあります。
特別は治療法はなく、急性期を乗り越えても後遺症が生じることが少なくありません。

ただ、一応適応外として「1回5~10mg/kg(体重)、6~8時間ごと(1回最大400mg、あるいは1日最大40mg/kg)」として使うこともあります。

NSAIDsとして一括りにされてしまいますが、ライ症候群と確定された症例はすべてアスピリン及びジクロフェナクとの併用例となります。他のNSAIDsに関しては禁忌にはなっていませんね。

小児の解熱には使えない、成人だと他のNSAIDsが使える、ということで、イブプロフェンは使える場面が少ないですね。

用法・用量

市販薬では解熱鎮痛剤としても風邪薬としても、基本的には1日450mgまで、となっているはずなのですが、いつの間にか1日600mgの製品が出ていますね。結構調べたのですが、何でかは分かりません。

なので、
1回200mg・1日3回(1日600mg)
が最大用量となっています。

医療用の場合、
痛み:1日600mgを3回に分けて
発熱:1回200mgを頓用・1日最大600mg
となっています。

つまり、医療用のも
1回200mg・1日3回(1日600mg)
が最大用量となっています。

市販のも医療用のも同じですね。

市販薬は15歳未満は使えませんが、医療用だと5歳から使えます。
5~7歳:1日200~300mg
8~10歳:1日300~400mg
11~15歳:1日400~600mg
を3回に分けて、となっていますね。

解熱で使う場合は問題になることもありますが、痛みで使う場合は問題ないので(実際に現場では使ってる)、もし家にアセトアミノフェンがなくイブプロフェンの製品がある場合は、上のを参考に使ってみても良いでしょう。
立場上、おすすめはできませんけど。

使用上の注意点

医療用の「ブルフェン」の添付文書の内容を書いておきます。

市販薬の場合は1日450mgまでの製品と1日600mgの製品とで注意点が異なりますが、結局は同じ薬です。
注意すべき点も同じになります。

禁忌

  • 消化性潰瘍
  • 重篤な血液の異常
  • 重篤な肝障害
  • 重篤な腎障害
  • 重篤な心機能不全
  • 重篤な高血圧症
  • アスピリン喘息又はその既往歴
  • ジドブジン(「コンビビル」「レトロビル」)を投与中
  • 妊娠後期の女性(具体的には28週以降)

以上のような疾患、または状態にある方は禁忌となっています。

NSAIDs全般的にほぼ同じなのですが、ジドブジンに関してはイブプロフェン特有のものです。
ジドブジンは抗HIV薬ですが、併用すると出血傾向が強まるそうです。

他のものは他のNSAIDsも大体同じですね。

特に妊娠後期の女性は注意してください。胎児の動脈管が収縮したとの報告があります。
後期でなくてもNSAIDsは他の危険性があるので、妊娠中の方は必ず受診して薬を処方してもらってください

消化性潰瘍については何とも言えないところですね。
現在穴が開いてる真っ最中、というならやめた方が良いですけど、以前やった事がある、というくらいであれば普通に使いますし。
ただ再発する可能性はあるので、一度でも胃潰瘍などやった経験のある人は病院で処方してもらった方が良いでしょう。
胃に負担のかかりにくい薬は他にもありますし。

副作用

NSAIDsの中でも安全性はかなり高い薬で小児でも使えるのですが、副作用が全くないわけではありません。

一番多いのは「嘔気・悪心」「食欲不振」「胃痛」「胃部不快感」などの消化器症状です。

次いで「発疹」「そう痒感」。薬疹みたいなものですね。
これはどんな薬でも起こりえます。

次に「浮腫」、むくみですね。
NSAIDsはナトリウムを体に貯める作用があります。ナトリウムと水は同じ動きをするので、ナトリウムが溜まると水も溜まります。

消化器症状については減量して様子見で良いかと思いますが、発疹や浮腫みが出た場合は中止した方が良いでしょう。

相互作用

医療用の「ブルフェン」の添付文書に書いてあるものをそのまま載せておきます。

併用禁忌

スクロールできます
薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
ジドブジン
 レトロビル
 コンビビル
血友病患者において出血傾向が増強したとの報告がある機序は不明である。

併用注意

スクロールできます
薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
クマリン系抗凝血剤
 ワルファリン
クマリン系抗凝血剤(ワルファリン)の作用を増強するおそれがあるので、用量を調節するなど注意すること。ワルファリンの血漿蛋白結合と競合し、遊離型ワルファリンが増加するためと考えられる。
アスピリン製剤
(抗血小板剤として
投与している場合)
アスピリンの血小板凝集抑制作用を減弱するとの報告がある。血小板シクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)とアスピリンの結合を阻害するためと考えられる。
抗凝血剤
 ワルファリン等
抗血小板剤
 クロピドグレル等
選択的セロトニン
再取り込み阻害剤
(SSRI)
 フルボキサミン、
 パロキセチン等
消化管出血が増強されるおそれがある。相互に作用を増強すると考えられる。
リチウム製剤
 炭酸リチウム
リチウムの血中濃度が上昇し、リチウム中毒を呈したとの報告があるので、併用する場合にはリチウムの血中濃度をモニターするなど観察を十分に行い、慎重に投与すること。プロスタグランジン合成阻害作用により、腎でのナトリウム排泄が減少してリチウムクリアランスを低下させ、リチウムの血中濃度が上昇すると考えられる。
チアジド系利尿薬
 ヒドロクロロチアジド
ループ利尿薬
 フロセミド
これら利尿薬の作用を減弱するとの報告がある。プロスタグランジン合成阻害作用により、水・ナトリウムの体内貯留が生じるためと考えられる。
ACE阻害剤
 エナラプリル等
β遮断剤
 プロプラノロール等
降圧作用が減弱するおそれがある。プロスタグランジン合成阻害作用により、血管拡張作用及び水・ナトリウムの排泄が抑制されるためと考えられる。
タクロリムス水和物急性腎障害があらわれたとの報告がある。プロスタグランジン合成阻害作用による腎障害がタクロリムス水和物の腎障害を助長するためと考えられる。
ニューキノロン系抗菌剤
 エノキサシン水和物等
他の非ステロイド性消炎鎮痛剤で併用により痙攣があらわれたとの報告がある。ニューキノロン系抗菌剤のGABA阻害作用が併用により増強されるためと考えられる。
メトトレキサートメトトレキサートの作用を増強するおそれがあるので、用量を調節するなど注意すること。プロスタグランジン合成阻害作用により腎血流が減少し、メトトレキサートの腎排泄が抑制されることにより、メトトレキサートの血中濃度が上昇すると考えられる。
コレスチラミン本剤の血中濃度が低下するおそれがある。コレスチラミンは陰イオン交換樹脂であり、消化管内で本剤と結合して本剤の吸収が遅延・抑制されると考えられる。
スルホニル尿素系
血糖降下剤
 クロルプロパミド、
 グリベンクラミド等
血糖降下作用を増強(低血糖)することがあるので、用量を調節するなど注意すること。これらの薬剤の血漿蛋白結合と競合し、遊離型薬剤が増加するためと考えられる。
CYP2C9阻害作用を
有する薬剤
 ボリコナゾール、
 フルコナゾール
本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。これらの薬剤は本剤の代謝酵素(CYP2C9)を阻害するためと考えられる。

併用注意についての簡単な説明

クリック・タップで開きます。

・ワルファリンは脳梗塞や心筋梗塞に使われる薬です。
出血傾向が見られたら、イブプロフェンを減量または中止した方が良いでしょう。

・アスピリンは痛み止めとして使うよりも少ない量(100~200mg)で抗血栓薬として使います。
「バイアスピリン」や「アスピリン腸溶錠」という名前の薬です。
でもこれらを服用中でもNSAIDsは普通に使われますね。
気になる方は痛み止めはアセトアミノフェンを使いましょう。

・クロピドグレルなどの抗血小板薬は脳梗塞心筋梗塞に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は抗うつ剤です。
これらを服用中でもNSAIDsは使われますが、胃の調子をみながらですね。

・リチウム製剤は気分安定剤です。躁病や双極性障害などに使われます。
NSAIDsを使ってはダメという事はないのですが、
・手が震える
・意識がぼんやりする
・眠くなる
・めまいがする
・言葉が出にくくなる
・吐き気がする
・下痢をする
・食欲がなくなる
・口が渇く
・お腹が痛くなる
などの複数の症状が出た場合はリチウム中毒の可能性もあります。
腎機能が低下している方は注意してください。

・チアジド(サイアザイド)系利尿剤、ループ系利尿剤は高血圧浮腫に使われます。
血圧が上がってきた、浮腫みが出てきた、息切れするなどの症状が出てきたらイブプロフェンは中止してください。

・ACE阻害剤、β遮断剤は高血圧心不全などに使われます。
血圧が上がってきたらイブプロフェンは減量・中止してください。まず問題ないと思いますけど。

・タクロリムスは免疫抑制剤です。臓器移植における拒絶反応の抑制重症筋無力症などに使われます。
こういった疾患等がある方が痛み止めを使う場合は主治医に処方してもらった方が良いでしょう。
タクロリムス(プロトピック)軟膏というアトピー性皮膚炎に使われる外用薬もありますが、こちらは気にしなくて大丈夫です。

・ニューキノロン系抗菌剤は細菌性感染症で使われます。ウイルス性疾患である風邪には通常は使われません。
よく使われるのはクラビット(レボフロキサシン)、オゼックス(トフスロキサシン)、ジェニナック(ガレノキサシン)、グレースビット(シタフロキサシン)、ラスビック(ラスクフロキサシン)あたりでしょうか(ジェニナックとラスビックはまだ後発品が出てません)。
プロピオン酸系のNSAIDs(イブプロフェン、ロキソプロフェン等)との併用で痙攣が出る可能性があります。
こういう抗菌剤を使っている場合はアセトアミノフェンの方が良いでしょうね。

・メトトレキサートは免疫抑制剤です。よく関節リウマチに使われていますね。
おそらく一緒に痛み止めも処方してもらっていると思うので、市販薬を追加して使用しない方が良いと思います。

・コレスチラミンは高コレステロール血症に使う薬ですが…今はほとんど使われていません(1回9gも粉薬を飲まなくちゃいけないやつ)。
一緒に飲んでもイブプロフェンの吸収が悪くなるだけです。副作用が出やすくなるとかではありません。

・スルホニル尿素系血糖降下剤は糖尿病の薬です。
この種類の薬はだいぶ使われなくなってきてますが、まだまだ現役ですね。
この種類の薬自体が低血糖を起こしやすいので注意してください。

・CYP2C9阻害作用を有する薬剤というのは、要はイブプロフェンの代謝を妨げる薬の事です。
イブプロフェンの効き目が強く出ることがあるのですが、胃の調子をみながら使えば問題ないと思います。

ここに書いてあることはあまり気にしなくて大丈夫ですが、上記の薬を服用中の方は「一応そういう可能性もあるんだな」と思っておいてください。

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