『ベンザブロックYASUMO』は「眠り」に焦点を当てた風邪薬になります。ちょっと珍しいですね。
風邪をひいた時ってぐっすり眠りたいのに、咳が出たり鼻水がひどかったりして眠れないことも多いですよね。
風邪薬を飲めば症状はやわらぎますが、カフェインが入っているものだと逆に眠れなくなったりして。
この薬はあえて眠気の副作用が強い成分を配合しています。
それが良いのか悪いのか、この記事を読んで判断していただけたらと思います。
基本情報
・製造会社:アリナミン製薬
・主な成分
成分名 | 1日量 (15歳以上の) | はたらき |
---|---|---|
イブプロフェン | 450㎎ | 熱をさげ、痛みを和らげる |
トラネキサム酸 | 420㎎ | 喉の痛みを和らげる |
ジフェンヒドラミン塩酸塩 | 75㎎ | 鼻水、くしゃみを抑える |
デキストロメトルファン | 48㎎ | 咳を抑える |
グアイフェネシン | 250㎎ | 痰を出しやすくする |
dl-メチルエフェドリン塩酸塩 | 60㎎ | 気管支をひろげ、咳を鎮める |
リボフラビン(ビタミンB2) | 12㎎ | ビタミン補給 |
・包装
18錠、30錠
(PTP包装)
各成分の効果・注意点
『ベンザブロックYASUMO』の7種の主要成分について、それぞれの効果と注意点を簡単にまとめています。
- イブプロフェン
- NSAIDsの一種。痛みや熱、炎症を抑えます。
- 胃に負担がかかることがあります。アスピリン喘息にも注意を。
- トラネキサム酸
- 抗炎症作用があり、喉の腫れや痛みを軽減します。
- 腎機能に問題がある方は用量の調整が必要です。透析を受けている方で痙攣の報告あり。
- できた血栓が残りやすくなる可能性があります。血液凝固に関わる疾患がある方は注意を。
- ジフェンヒドラミン
- 鼻水やくしゃみをおさえます。かゆみ止めとしてもよく使われます。
- 鎮静作用が強めです。眠気には注意してください。
- 抗コリン作用により、眼圧上昇や排尿困難などの副作用が出る可能性があります。
- デキストロメトルファン
- 中枢性の非麻薬性鎮咳薬で、咳を抑える効果があります。とされていますが、急性上気道炎に対する有効性は示されていません。
- 吐き気や眠気、めまいなどの副作用が出る可能性があります。重大な副作用として呼吸抑制あり。
- セロトニン症候群の危険性あり。パーキンソン病薬や抗うつ剤を服用中の方は注意してください。
- 乱用による死亡例あり。通常用量であれば心配いりません。適正な使用を。
- グアイフェネシン
- 痰を薄めて出しやすくしたり、咳を抑える作用があります。
- 特に注意点はありません。
- dl-メチルエフェドリン塩酸塩
- 気管支拡張作用があり、咳を鎮めたり呼吸を楽にします。
- 副作用には動悸や手の震えがあり、心疾患のある方は特に注意が必要です。
- 「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
- リボフラビン(ビタミンB2)
- 水溶性ビタミンで、代謝やエネルギー産生に関与します。
- 不足すると口唇炎や角膜炎などを起こすことがあります。
- 摂り過ぎても尿として排泄されるため過剰症のリスクはほぼありません。
使い方(用法・用量)
年齢 | 1回の服用量 | 1日の服用回数 |
---|---|---|
15歳以上 | 2錠 | 3回 |
「食後なるべく30分以内に」となっています。
イブプロフェンで胃に負担がかかる場合もあるので一応注意してください。でもそれほど心配しなくても良いかと思います。
15歳未満の方は服用しないでくださいとのことです。
イブプロフェンが入っていると15歳未満には使えないことになっています。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)
医療用のイブプロフェンは小児の解熱に適応がないんですよね。
滅多にないですが、ライ症候群を警戒して、という事だと思います。
イブプロフェンはサリチル酸系ではなくて、プロピオン酸系と呼ばれるものになります。
ライ症候群と確定された症例はすべてアスピリン及びジクロフェナクとの併用例となります。他のNSAIDsに関しては禁忌にはなっていません。
インフルエンザ脳症についても問題になるのはジクロフェナクです。(メフェナム酸は微妙)
国際的に小児の解熱にはアセトアミノフェンかイブプロフェンが推奨されているのに、市販薬だとイブプロフェンが使えないのは少しもったいないですね。
15歳未満の方はアセトアミノフェンが入ってるものにしましょう。
大人の方でも解熱だけが目的の場合はアセトアミノフェンが良いと思います。
製品全体としての注意点
注意してほしいこと
いくつか注意点を書いておきます。
- 眠気に注意:眠気が出る可能性があるので注意してください。
- この製品に入っている抗ヒスタミン薬(鼻水の薬)は鎮静作用が強めです。
- 「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」となっています。ただ、全然眠くならない方もいるのでそういう方は問題ないですね。
- 喘息:イブプロフェンによって喘息発作が誘発される事があります。
- 他の風邪薬や解熱鎮痛剤で喘息の症状が出た事がある人は、解熱鎮痛剤としてはアセトアミノフェンだけが入ってる風邪薬を選ぶと良いかと思います。
- 喘息治療中の方:気管支拡張薬のメチルエフェドリンが入っているので、喘息を治療中の方はすでに服用(吸入)してる可能性があります。過剰摂取にならないように注意してください。
- 抗コリン作用:口の渇きや目のかすみ、眼圧上昇、排尿困難、便秘などの症状が出る可能性があります。
- 気になる場合は減量または中止してください。
- 血栓:血栓が溶けにくくなるので、血栓症の方は注意を。
- また、ピル(特にエストロゲンを含む低用量ピル)との併用は血栓のリスクを高める可能性があるので注意してください。
- ジドブジン(商品名:レトロビル、コンビビル)服用中の方は注意してください。
- イブプロフェンと併用すると出血傾向が強まる可能性があります。
- この製品の添付文書には記載がないですが、医療用のイブプロフェンはジドブジンとの併用は禁忌となっています。
- 服用期間:「長期連用しないでください」となっています。
- 風邪薬は症状を緩和するもので、風邪自体を治すわけではありません。3~4日服用しても症状が良くならない場合は、医師の診察を受けた方が良いかと思います。
- デキストロメトルファンのオーバードーズ(過剰摂取)の問題もあります。
妊娠中の方
妊娠後期(28週以降)の方は禁忌です。
(この風邪薬の添付文書には「出産予定日12週以内の妊婦は飲まないで」という書き方になっています)
イブプロフェンにより胎児の動脈管(心臓と大動脈をつなぐ血管)が収縮した、という報告があります。
妊娠後期の方はアセトアミノフェンという解熱鎮痛剤が入ったものにした方が良いかと思います。
それ以前であれば問題はなさそうですが、メチルエフェドリンによって胎児が頻脈を起こす可能性もあります。
原則として、妊娠してる方は市販薬は使わず受診して医師に薬を処方してもらった方が良いと思います。
(というか、必ず受診してください)
授乳中の方
この製品の添付文書では
「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること」
という書き方になっています。
ジフェンヒドラミンが入っているため、この記載があります。
とはいえ、そこまで心配する事もないかと思います。
ジフェンヒドラミンのインタビューフォーム(薬の解説書みたいなの)には、
「海外において、1回50mgを3時間毎に投与したところ、3回目に乳児の傾眠状態を認めた」との記載があります。
また、「動物実験(ラット)において、乳汁中/血漿中濃度比が4.4~7.5との報告がある」とのことで、乳汁中に移行しやすいみたいですね。
この製品の場合は1回25mgとなっています。上の海外の事例の半分ですね。
ジフェンヒドラミンは服用後、2時間ちょっとで血中濃度が一番高くなります。この時間は避けたほうが良いかもしれません。
Mothers’ Milk基準では、この製品に入ってる成分中一番リスクの高いもので、
- トラネキサム酸
- デキストロメトルファン
- グアイフェネシン
の3つがL3(概ね適合)となっています。
(ちなみに、ジフェンヒドラミンはL2でさらにリスクが低いということになっています)
ただこの3つに関しては特別心配する事はありません。
メチルエフェドリンに関してはデータがありません。
基本的には「避けてください」と言われる事が多いですが…生後3ヵ月から使える製品も存在します。
「多くの薬は母親が飲んだ量の1%未満しか母乳中に移行しない」という事を考えると過剰な心配はいらないかと思います。
心配であれば授乳後に薬を服用すると良いでしょう。次の授乳までに薬はかなり分解されてます。
この場合、食後とかは気にしないでOKです。4~5時間程度時間を空けて、服用できるタイミングで服用してください。
ジフェンヒドラミンに関しては、赤ちゃんがやたらとよく寝ていたら薬を一旦止めるか、授乳を止めて粉ミルクにした方が良いかもしれません。
とはいえ、眠気以外には特別問題になる事もないでしょう。
製品の特徴や利点、個人的な感想
特徴としては、「眠り」というものに焦点を当てた珍しい風邪薬ですね。
といっても、他の市販薬と違うのは
・カフェインが入っていない
・抗ヒスタミン薬がジフェンヒドラミン
という2つくらいでしょうか。
カフェインが入っていない風邪薬は他にもあります。特徴というには少し弱いかも。
ジフェンヒドラミンは眠気の強い抗ヒスタミン薬です。
眠気の発現頻度は約35%。3人に1人は眠くなるみたいですね。
基本的には、飲み薬よりも痒み止めの塗り薬に配合されていることが多いと思います。
医療用でも塗り薬は使われてますね。飲み薬はあまり使われていません。
市販では睡眠改善薬としても売られています。
例えば『ドリエル』という薬では、寝る前に50mg服用することになっています。
『ベンザブロックYASUMO』の1回は25mg。1日75mgとなります。
人によってはかなり眠くなると思うので、車の運転などは注意してください。
他の成分に関してですが、
イブプロフェンが1日450mg。微妙です。
今は1日600mg配合されている風邪薬も出てきてます。熱や痛みがひどい方は、600mg入っている製品を選んだ方が良いでしょう。
それか、アセトアミノフェンが1回300mg(1日900mg)の製品の方がまだ効果はあるかもしれません。
トラネキサム酸の量も1日420mgと少なめ。
15歳以上に限定しているので、どうせなら750mgは入れてほしかったと思います。
咳止めは2種類入っています。メチルエフェドリンとデキストロメトルファン。
メチルエフェドリンは良いとして、デキストロメトルファンは急性上気道炎への効果は否定されています。
成人では鎮咳作用はなく、小児でもプラセボ(偽薬)と有意差がないと。
咳止めは使わずに去痰薬単独の方が咳の治りが早い、とも言われてますね。
その去痰薬はグアイフェネシンが入っています。安全性は高いとされていますが、効果はどうなのか…
医療用のが販売中止(注射はまだありますが、それも販売中止になる)になってますし。
カルボシステインとかアンブロキソールの方がなんとなく良いかも。個人的にですけど。
全体的に見ると、ジフェンヒドラミンが入っているという事以外には特徴がありません。
ぐっすり寝ることで回復を促すのは良いと思いますが、日中の眠気が問題になる可能性があります。
仕事などを休めない方は、朝と昼は違う薬を飲んで夜だけこの薬を使う、という手もあるかと思います。
使用した方の口コミ・レビュー、値段など
「ものログ」というサイトの口コミです。
良い評価としては、
といった具合。
否定的な意見としては、
といった感じ。
否定的なのはあまり無かったです。
やっぱり「眠り」についてコメントしてる方が多い印象。
でもこれは先入観もあると思います。そもそもこの薬を買う人はそこを気にしてこれを買ってるでしょうし。
ただ、「日中眠くなる」といった意見がなかったのは意外でした。ここは個人差が大きいので何とも言えないですが。
値段について
メーカーの希望小売価格(税込)を見ると、
18錠 | 1,298円 |
30錠 | 1,738円 |
ということでした。
Yahooショッピング(送料含まず)で見てみると、
包装 | 値段 | 1日分に換算 |
18錠 | 950~1,500円 | 317~500円 |
30錠 | 1,280~2,000円 | 256~400円 |
※1日分のは、1日6錠で計算
※2025年1月時点です。
こんな感じでした。
基本的に割安になる大きい包装ので、安くて1日250円くらい。
風邪薬としては普通でしょうか。特別高いって感じではありません。
まとめ
この記事では『ベンザブロックYASUMO』について、各成分の効果と注意点、個人的な感想、使用者のレビューなどをご紹介しました。
この製品は「眠り」というものに焦点を当てた、というのが特徴でしょうか。
とはいえ、睡眠改善薬として使うような成分を配合してるのは良いのか悪いのか。
風邪薬を買う人の目的が「眠るため」ではなくて「風邪の症状を抑えるため」であると考えると、ちょっと微妙ですね。
夜は良いとして、日中の眠気や注意力低下が問題になる可能性があります。
この薬で眠気が出ない人であれば問題はないのですが、そういう人ならわざわざこの薬を使う必要はないですし。
でも、ちょっとでもカフェインを摂ると眠れなくなる方には良い選択肢になるかもしれません。
ちなみにカフェインが入ってない風邪薬は他にもあります。
風邪の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。
ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。
効果を感じられない場合や、症状が改善しない場合は、適切な医療機関を訪れることをお勧めします。
この記事を読んで、それでも「買おうかな?」と興味を持たれた方へ
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