『ルルアタック®NX』の特徴・効果・注意点【薬剤師が解説】

『ルルアタックNX』は「特にかぜに伴う鼻の症状が気になる時に」とメーカーのサイトには書いてます。
パッケージにも「鼻水」と大きく書かれていますね。

これを見ると「鼻の症状に特化した製品」という印象を受けますが、全然そんなことはありません。

単に「値段の高い普通の総合感冒薬」です。

これを買おうかな?と考えている方は、記事を読んで「本当に買う価値があるか」を判断していただけたらと思います。

他の風邪薬については一覧を作ってあるのでこちらを見てみてください。まだ数は少ないですが。
風邪薬(総合感冒薬)一覧

※この記事にアフィリエイトリンクはありません。通販サイトではほぼ販売されてないようです。
そもそもおすすめできる製品ではありません。

目次

基本情報

製造販売元:第一三共ヘルスケア

・主な成分

成分名1日量(15歳以上の)はたらき
イブプロフェン450mg熱をさげ、痛みを和らげる
ベラドンナ総アルカロイド0.3mg鼻水を抑える
クレマスチンフマル酸塩1.34mg鼻水、くしゃみを抑える
ブロムヘキシン塩酸塩12mg痰を出しやすくする
ジヒドロコデインリン酸塩24mg咳を抑える
dl-メチルエフェドリン塩酸塩60mg気管支をひろげ、咳を鎮める
無水カフェイン75mg頭痛・頭重感を和らげる
ベンフォチアミン(ビタミンB₁誘導体)25mgビタミン補給
リボフラビン(ビタミンB₂)12mgビタミン補給
スクロールできます
成分名1日量
(15歳以上の)
はたらき
イブプロフェン450mg熱をさげ、痛みを和らげる
ベラドンナ
総アルカロイド
0.3mg鼻水を抑える
クレマスチンフマル酸塩1.34mg鼻水、くしゃみを抑える
ブロムヘキシン塩酸塩12mg痰を出しやすくする
ジヒドロコデイン
リン酸塩
24mg咳を抑える
dl-メチルエフェドリン
塩酸塩
60mg気管支をひろげ、咳を鎮める
無水カフェイン75mg頭痛・頭重感を和らげる
ベンフォチアミン
(ビタミンB₁誘導体)
25mgビタミン補給
リボフラビン
(ビタミンB₂)
12mgビタミン補給

・包装

・錠剤:12錠、24錠
(PTP包装)

各成分の効果・注意点

『ルルアタックNX』の9種の主要成分について、それぞれの効果と注意点を簡単にまとめています。

各成分名をタップ・クリックするとそれぞれの成分の簡単な解説記事にいきます。

  1. イブプロフェン
    • NSAIDsの一種。痛みや熱、炎症を抑えます。
    • 胃に負担がかかることがあります。アスピリン喘息にも注意を。
  2. ベラドンナ総アルカロイド
    • 抗コリン作用により鼻水や涙を抑えます。
    • 閉塞隅角緑内障や前立腺肥大などの疾患を持つ方は注意を。
    • 口の渇きや便秘が起こりやすいです。
  3. クレマスチンフマル酸塩
    • 鼻水やくしゃみ、痒みを抑えますが、鼻づまりにはあまり効きません。
    • 他の第一世代抗ヒスタミン薬と比べると持続的。
    • 特に眠気には注意してください。
    • 抗コリン作用により、眼圧上昇や排尿困難などの副作用が出る可能性があります。
  4. ブロムヘキシン塩酸塩
    • 気道の粘液をサラサラにし、痰を切れやすくする効果があります。
    • 使用開始時には一時的に痰の量が増えることがあります。
  5. ジヒドロコデインリン酸塩
    • 中枢性麻薬性鎮咳薬で、咳中枢を抑制することで咳を抑えます。
    • 痰を硬くする可能性があるので、主に痰のからまない咳に使います。
    • 便秘、眠気などの副作用に注意を。
    • 依存形成の可能性があり「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
    • 12歳未満は禁忌です(呼吸抑制のリスクが高い)。
  6. dl-メチルエフェドリン塩酸塩
    • 気管支拡張作用があり、咳を鎮めたり呼吸を楽にします。
    • 副作用には動悸や手の震えがあり、心疾患のある方は特に注意が必要です。
    • 濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
  7. 無水カフェイン
    • 血管拡張性の頭痛や片頭痛の症状をやわらげます。
    • 覚醒作用があるので眠気防止にも。
    • 副作用として、不眠や振戦(手の震え)、動悸、めまいなどがあります。
  8. ベンフォチアミン(ビタミンB₁誘導体)
    • 水溶性ビタミンで、糖からエネルギーを作り出すのに必要です。
    • 摂り過ぎても尿として排泄されるため過剰症のリスクはほぼありません。
  9. リボフラビン(ビタミンB₂)
    • 水溶性ビタミンで、代謝やエネルギー産生に関与します。
    • 不足すると口唇炎や角膜炎などを起こすことがあります。
    • 摂り過ぎても尿として排泄されるため過剰症のリスクはほぼありません。

他の成分の薬を探してる方はこちらから。
成分の一覧表

使い方(用法・用量)

年齢1回の服用量1日の服用回数
15歳以上2錠3回

「食後なるべく30分以内に」となっています。
イブプロフェンで胃痛が起こる方もいるので一応注意してください。でもあまり心配は要らないです。

15歳未満の方は服用しないでくださいとのことです。

イブプロフェンが入っていると15歳未満には使えないことになっています。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)

医療用のイブプロフェンは小児の解熱に適応がないんですよね。
滅多にないですが、ライ症候群を警戒して、という事だと思います。

ライ症候群
極めてまれですが、小児がインフルエンザや水痘・帯状疱疹にかかってる間にアスピリンなどのサリチル酸系の解熱鎮痛剤を飲むと発症する事があります。
症状は、脳浮腫や頭蓋内圧の上昇によって激しい吐き気・嘔吐、けいれん、意識障害、高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血糖などが短期間に発現して、死に至ることもあります。

イブプロフェンはサリチル酸系ではなくて、プロピオン酸系と呼ばれるものになります。
ライ症候群と確定された症例はすべてアスピリン及びジクロフェナクとの併用例となります。他のNSAIDsに関しては禁忌にはなっていません。
インフルエンザ脳症についても問題になるのはジクロフェナクです。(メフェナム酸は微妙)

国際的に小児の解熱にはアセトアミノフェンかイブプロフェンが推奨されているのに、市販薬だとイブプロフェンが使えないのは少しもったいないですね。

15歳未満の方はアセトアミノフェンが入ってるものにしましょう。
大人の方でも解熱だけが目的の場合はアセトアミノフェンが良いと思います。

製品全体としての注意点

注意してほしいこと

いくつか注意点を書いておきます。

  • 眠気に注意:眠気が出る可能性があるので注意してください。
    • 服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」となっています。ただ、全然眠くならない方もいるのでそういう方は問題ないですね。
  • 喘息:イブプロフェンによって喘息発作が誘発される事があります。
    • 他の風邪薬や解熱鎮痛剤で喘息の症状が出た事がある人は、解熱鎮痛剤としてはアセトアミノフェンだけが入ってる風邪薬を選ぶと良いかと思います。
  • 喘息治療中の方
    • 気管支拡張薬のメチルエフェドリンが入っているので、喘息を治療中の方はすでに服用(吸入)してる可能性があります。過剰摂取にならないように注意してください。
    • ジヒドロコデインは気道分泌の抑制と気管支を収縮させる作用もあるので、基本的には喘息には使いません(喘息発作には禁忌)。
  • ジドブジン(商品名:レトロビル、コンビビル)服用中の方は注意してください。
    • イブプロフェンと併用すると出血傾向が強まる可能性があります。
    • この製品の添付文書には記載がないですが、医療用のイブプロフェンはジドブジンとの併用は禁忌となっています。
  • 抗コリン作用:口の渇きや目のかすみ、眼圧上昇、排尿困難、便秘などの症状が出る可能性があります。
    • 気になる方は抗コリン薬の入っていない製品を選ぶと良いでしょう。
      (抗コリン薬:ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミドなど)
  • 服用期間:「5日間を超えて服用しないでください」となっています。
    • 風邪薬は症状を緩和するもので、風邪自体を治すわけではありません。3~4日服用しても症状が良くならない場合は、医師の診察を受けた方が良いかと思います。
    • ジヒドロコデインのオーバードーズ(過剰摂取)の問題もあります。

妊娠中の方

妊娠後期(28週以降)の方は禁忌です。
(この製品の説明書では「出産予定日12週以内の妊婦は飲まないで」という書き方になっています)

イブプロフェンにより胎児の動脈管(心臓と大動脈をつなぐ血管)が収縮した、という報告があります。
妊娠後期の方は、解熱鎮痛剤としてはアセトアミノフェンだけが入ったものにした方が良いかと思います。
(アセトアミノフェンは短期間であれば問題ないとされています)

また、ジヒドロコデインは妊娠28週以降は推奨されません
豪州ADECという危険度分類ではジヒドロコデインの分類はAとなり、「今までの使用経験上では大丈夫だった」とのことです。
ただ、違う基準(Briggs基準)によるとリスク4の「妊娠28週以降は胎児への危険性が示唆される」という分類になっています。

28週以前であれば問題はなさそうですが、ベラドンナ総アルカロイドやメチルエフェドリンによって、胎児が頻脈を起こす可能性はあります。
この2つは入っているとは言え量も少なめです。あまり心配は要らないかと思います。

服用するにしても短期間の使用にとどめておいた方が無難だとは思います。
原則として、妊娠してる方は市販薬は使わず受診して医師に薬を処方してもらった方が良いと思います。
(というか、必ず受診してください)

授乳中の方

この製品の説明書には
授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること
と書いてあります。
ジヒドロコデインが入っているため、この記載があります。

とはいえ、そこまで心配する事もないかと思います。

Mothers’ Milk基準では、この製品に入ってる成分中一番リスクの高いもので、

  • クレマスチン:「L4(悪影響を与える可能性あり)

となっています。

でもクレマスチンって1歳未満でも使えるんですよね。小児用のシロップもあるあるし。

他には、

  • ジヒドロコデイン
  • ベラドンナ総アルカロイド

の2つが「L3(概ね適合)」となっています。

ジヒドロコデインは基本的には「授乳を避けること」となっています。母乳に移行して乳児にモルヒネ中毒(傾眠、哺乳困難、呼吸困難等)が生じたとの報告があります。
母親に便秘や眠気などの副作用が出ている場合は授乳をやめた方が良いでしょうね。
似たようなものでデキストロメトルファンというのがあり、こちらは一応安全に使用可能となっています(効くかどうかは別)。

心配な方はジヒドロコデインが入っていない薬を選ぶようにしましょう。

メチルエフェドリンに関してはデータがありません。
基本的には「避けてください」と言われる事が多いですが、生後3ヵ月から使える製品も存在します。

「多くの薬は母親が飲んだ量の1%未満しか母乳中に移行しない」という事を考えると過剰な心配はいらないかと思います。

心配であれば授乳後に薬を服用すると良いでしょう。次の授乳までに薬はかなり分解されてます。
この場合、食後とかは気にしないでOKです。4~5時間程度時間を空けて、服用できるタイミングで服用してください。

また、ベラドンナ総アルカロイドは乳汁の分泌を抑えてしまう可能性があります。
入ってる量が少ないので問題ないかとは思いますが。

心配な方は、薬を服用中は粉ミルクを使うという手もあります。

妊娠・授乳中の薬物治療に関して不安を持つ方も多いかと思います。
そういう方の相談に乗ってくれる機関があるので、そこのサイトのリンクを貼っておきます。
妊娠と薬情報センター:https://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

製品の特徴や利点、個人的な感想

この製品は「鼻水」に重点を置いたものだそうです。
ということで、他の一般的な風邪薬よりは鼻水に関する成分が多いと思われるかもしれませんが、残念ながらそんな事はありません。

鼻水に使う成分は、

  • クレマスチンフマル酸
  • ベラドンナ総アルカロイド

の2つです。量も普通。

それぞれ抗ヒスタミン薬と抗コリン薬になりますが、この2種類が入っている製品は他にいくつもあります。

そして、鼻づまりに効果のある成分(例えばプソイドエフェドリン)は入っていません。
製品の説明書などにはクレマスチンが鼻づまりにも効果があるように書いていますが、第一世代の抗ヒスタミン薬はあまり効果は期待できないでしょう。

鼻の症状に特化するのであれば、咳止めのメチルエフェドリンではなくてプソイドエフェドリンを入れてほしかったですね。
(この2つは市販薬には一緒に配合することができません)

去痰薬はブロムヘキシンが入っています。
他の去痰薬、例えばカルボシステインアンブロキソールは副鼻腔炎の排膿に使うので「鼻にも効果がある」と言えますが、ブロムヘキシンはそういう使い方はしません。
ここのチョイスもよく分かりません。

総合感冒薬としてみた場合だとそれほどバランスが悪いとは思わないのですが、「鼻の症状に」と言われると何とも言えません。別にこの薬である必要は全然ないんですよね。

例えばですが、同じメーカーので『新ルルAゴールドs』という製品があります。

スクロールできます
『ルルアタックNX』
(この記事)
新ルルAゴールドs
解熱鎮痛剤イブプロフェン:450mgアセトアミノフェン:900mg
咳止めジヒドロコデイン:24mg
メチルエフェドリン:60mg
ジヒドロコデイン:24mg
メチルエフェドリン:60mg
ノスカピン:48mg
鼻水の薬クレマスチンフマル酸:1.34mg
ベラドンナ総アルカロイド:0.3mg
クレマスチンフマル酸:1.34mg
ベラドンナ総アルカロイド:0.3mg
鼻づまりの薬なしなし
痰の薬ブロムヘキシン:12mgブロムヘキシン:12mg
〇〇mgの数字は、成人の1日の量です。

※ビタミンやカフェインは除外しています。

『ルルアタックNX』との違いは、
・解熱鎮痛剤がアセトアミノフェン
・ノスカピンが入っている
です。他の成分量は全て同じです。

イブプロフェン450mgとアセトアミノフェン900mgだと、若干ですがアセトアミノフェン900mgの方が強いかな?というくらい。

そして解熱鎮痛剤以外は、ノスカピンが入っている分『新ルルAゴールドs』の方が入っている成分数・成分量が多い、という事になります。
(関係ない成分は入ってない方が良いですけど)

なのですが、『ルルアタックNX』は『新ルルAゴールドs』と比べると値段がかなり高いんですよね。
「イブプロフェンじゃなきゃヤダ!」とかこだわりがないのであれば『新ルルAゴールドs』の方で良いかと思います。

使用した方の口コミ・レビュー、値段など

「ものログ」というサイトの口コミです。

良い評価としては、

「飲んだらすぐに鼻の通りがよくなった」
「せきやたん、鼻水が出る人はおすすめ」
「鼻水と鼻水による頭が重い感じがすぐになくなった」

といった具合。

否定的な意見としては、

「効きすぎて渇くので鼻が痛いくらい、喉も渇くので咳が止まらなくなる」
「正直効き目もわからんし、高すぎる」
「眠気は結構あった」

といった感じ。

効果に対する評価は高いです。びっくりするくらい。
「効かなかった」という人はほとんどいなかったですね。

「効きめが早い」という意見が多いですね。
ベラドンナ総アルカロイドがすぐに溶けだす製法を用いているようです。

ただ、上の比較を見ていただけると分かると思いますが、これが効くなら『新ルルAゴールドs』も効くんですよね。

否定的な意見では「値段が高い」というのがかなり多かったです。

値段について

メーカーの希望小売価格(税込)を見ると、

12錠1,320円
24錠2,200円

ということでした。

通販サイトを見てみると、Amazon、楽天、Yahooのどこも販売していませんでした。
(『ルルアタックNXプレミアム』はあるけど)
売れないからかな?店頭にはあったし販売中止にはなってないと思いますが。

希望小売価格だと、24錠のでは1日550円になります。

上に書いてた『新ルルAゴールドs』は、安いのだと1日150円以下です。

買う価値はないと思います。(自分は写真のために買いましたけど)

まとめ

この記事では『ルルアタックNX』について、各成分の効果と注意点、個人的な感想、使用者のレビューなどをご紹介しました。

鼻の症状に重点を置いた製品のはずですが、そんなことはありませんでした。
鼻に関する成分は他の一般的な総合感冒薬と何も変わりません。

全体的に『新ルルAゴールドs』に劣るのに、パッケージをきらびやかにして値段を高くした製品ですね。

買う価値はないと思います。

この業界ってこういうのが多いですね。気を付けてください。

他の風邪薬については一覧を作ってあるのでこちらを見てみてください。まだ数は少ないですが。
風邪薬(総合感冒薬)一覧

風邪の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。

ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。

効果を感じられない場合や、症状が改善しない場合は、適切な医療機関を訪れることをお勧めします

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