「メチルエフェドリン」の解説 
作用・使用上の注意・製品一覧

「メチルエフェドリン」についての簡単な解説です。

目次

メチルエフェドリンを含む市販薬の製品一覧

解説記事を書いたことのある製品を載せています。

※ここでご紹介している製品がすべてではありません。
あと、すでに製造中止になっている製品もあるかもしれません。
そのへんはご了承くださいますようお願い申し上げます。

風邪薬(総合感冒薬)

総合感冒薬(かぜ薬)の一覧表もあるので見てみてください。
製品ごとの主要成分も載せています。

鼻炎薬(飲み薬)

クリック・タップで開きます。

製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。

製品名1日あたりの成分量
コルゲンコーワ鼻炎
ジェルカプセルα
45mg

鼻炎用内服薬に配合できる最大用量は1日110mgとなっています。
(「鼻炎用内服薬の製造販売承認基準について」より)

分類・作用機序

dl-メチルエフェドリン塩酸塩の化学構造式

「メチエフ散」の添付文書より

分類

交感神経刺激薬ですが、
その中でも「β(ベータ)刺激薬」となります。

自律神経には交感神経と副交感神経と2つあって、そのうちの交感神経に働くものですね。

交感神経には大きく分けて「α受容体」と「β受容体」という2種類の受容体があり、メチルエフェドリンはその両方に作用します。
さらに「β受容体」は「β1」「β2」などいくつかタイプがあります(今分かっているのは「β3」まで)。

メチルエフェドリンを薬として使う場合は、主に「β2刺激薬」として使います。

作用機序

間接作用と直接作用があります。

間接作用:交感神経終末からのノルエピネフリンの遊離を促進します。
     タキフィラキシーあり

直接作用:β受容体刺激作用。
     タキフィラキシーなし

※タキフィラキシーについて

きつね作です。

通常の状態では、

  1. メチルエフェドリンなどの物質が交感神経終末に作用
  2. 交感神経終末からノルエピネフリン(以下:NE)が放出
  3. 放出されたNEがαやβ受容体に結合
  4. 交感神経刺激作用が起こる

のですが…この状態が続くと交感神経終末からNEが出続けて、交感神経終末内のNEが枯渇してしまいます。

こうなるといくらメチルエフェドリンなどの物質が交感神経終末に作用してもすでにNEの在庫がなく、交感神経刺激作用が起きません。

これがタキフィラキシーです。たぶん。

メチルエフェドリンはβ受容体へは直接結合できるので、このタキフィラキシーが起こりません。
(上の図でいうと、β受容体へはメチルエフェドリンがNEの役割を果たします)

なので、このメチルエフェドリンはβ刺激作用が主な作用となります。
α刺激作用もありますが、一時的なものとなります。

効果や使用方法

効果

主にβ2刺激作用による気管支拡張ですね。
気管支を広げることで呼吸を楽にします。

メチルエフェドリンには中枢性の鎮咳作用もあるので、普通の咳止めとしても使えますね。
(鎮咳作用の強さは、コデインを1としたら、ジヒドロコデインは1.4、メチルエフェドリンは0.6となります)

あと一応抗アレルギー作用もあって蕁麻疹や湿疹にも適応があるのですが、これで使ってるのは見た事がありません。
抗アレルギーに特化した薬が他にあるので、わざわざこれを使う理由もないですしね。

市販の鼻炎用内服薬では「鼻づまり」に使うようで、「鼻粘膜の充血やハレを抑え、鼻づまりを緩和します」と書いているものがありますが、医療用では通常そういう使い方はしません(適応がない)。
(鼻粘膜血管収縮作用があるのは「エフェドリン」の方)

メチルエフェドリンの主な作用は「β刺激作用」です。
血管収縮は「α刺激作用」になります。

メチルエフェドリンのα刺激作用は作用機序のところに書いてある間接作用となり、反復投与すると効果がなくなります(タキフィラキシー)。
β2刺激作用である気管支拡張作用にはタキフィラキシーは現れません。

メチルエフェドリンの利点は「α刺激作用が少ない」という事もあるので、血管収縮剤として使うにはメリットがないように思います。

医療用の使用例

メチルエフェドリン単独の薬は粉薬や注射なのですが、あんまり使われてない印象です。
(注射はどうかな?病院にはあまり長くいなかったので分かりません)

使うとしたら「フスコデ配合錠」という
・メチルエフェドリン
・ジヒドロコデイン
・クロルフェニラミン
の3つが入ってる薬を咳止めとして使います。
咳と鼻水に効く成分が入ってるので風邪薬ですね。

でもこれもあまり使われていないと思います。
いろいろと入っているのは使いにくいですしね。
(咳を止めたいなら咳止めだけ使えばいいので)

用法・用量

市販薬だと基本的には
風邪薬:1回20mg1日3回(1日60mg)
となっていますね。

鎮咳去痰薬だと1回25mg・1日75mgが最大用量
鼻炎用内服薬だと1日110mgが最大用量
となっています。

咳止めなのに鼻炎薬の方が多く入れる事ができるのは不思議ですね。

医療用では通常は
1回25~50mg1日3回
となっています。

市販薬は医療用よりも少なめではあるのですが、大体の製品はこれ以外にも咳止めが入っていますね。

使用上の注意点

禁忌

カテコールアミン製剤(アドレナリン、イソプレナリン塩酸塩等)を投与中の人

となっていますが、この辺は循環不全の急性期(いわゆるショック)に使うものなので、「市販の風邪薬を飲もうかな?」なんて時にはまず使っていないと思います。

服用注意な人

甲状腺機能亢進症
高血圧症
心疾患
糖尿病
低酸素血症

このような疾患のある方は、それそれの症状が悪化する可能性があるので一応注意してください。

通常用量を短期間使う程度で問題になることはないと思います。

副作用

交感神経に働くものなので、全身にいろいろ出てくる可能性があります。

結構古くからある薬なのですが、副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないそうですが、
医療用の「メチエフ散10%」のインタビューフォームによると、

総症例1,806例中、副作用が報告されたものは139例(7.7%)で、
主な副作用は
・胃腸障害(1.7%)
・動悸(1.2%)
・不眠(1.2%)
・悪心(0.9%)
であった。(再評価結果)
なお、重大な副作用として、β2刺激剤により重篤な血清カリウム値の低下が報告されている。

ということです。

胃腸障害や悪心はどんな薬でも起こりうるので、特徴的なのは動悸でしょうか。
心臓のβ1受容体を刺激すると心拍数が高くなります。

他のβ刺激薬だと手の震えなども出たりします。

動悸や手の震えが出てきたら減量・中止した方が良いでしょう。
過度に使用を続けた場合は不整脈、場合によっては心停止を起こすおそれがあります。
特に心疾患のある方は注意してください。

相互作用

医療用の「メチエフ散10%」の添付文書に書いてあるものをそのまま載せておきます。

併用禁忌

スクロールできます
薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
カテコールアミン製剤
アドレナリン(ボスミン)
イソプレナリン塩酸塩(プロタノール)
不整脈、場合によっては心停止を起こすおそれがあるので併用を避けること。相加的に作用(交感神経刺激作用)を増強させる。

併用注意

スクロールできます
薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤
 セレギリン塩酸塩
 ラサギリンメシル酸塩
 サフィナミドメシル酸塩
作用が増強されるおそれがあるので、減量をするなど慎重に投与すること。これらの薬剤のMAO-B選択性が低下した場合、交感神経刺激作用が増強されるおそれがある。
甲状腺製剤
 チロキシン
 リオチロニン等
作用が増強されるおそれがあるので、減量をするなど慎重に投与すること。これらの薬剤が心臓のカテコールアミンに対する感受性を増大するおそれがある。
キサンチン誘導体
 テオフィリン
ステロイド剤
 プレドニゾロン
利尿剤
 アミノフィリン
血清カリウム値が低下するおそれがある。
併用する場合には定期的に血清カリウム値を観察し、用量について注意すること。
相加的に作用(血清カリウム値の低下作用)を増強する。
β2刺激剤はcAMPを活性化しNa-Kポンプを刺激する。

併用注意についての簡単な説明

クリック・タップで開きます。

・モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬はパーキンソン病に使われています。
MAOにはAとBがあり、Aがノルエピネフリンとセロトニン、Bがドパミンを分解します。
MAO-Bを阻害することでドパミンの分解を阻害してパーキンソンの症状を抑えるのに使うのですが、その選択性が低下した場合、つまりMAO-Aも阻害してしまうとノルエピネフリンが増えて、交感神経刺激作用が強くなります。

・甲状腺製剤は甲状腺機能低下症に使うものです。
「チラーヂンS(レボチロキシン)」「チロナミン」があります。
(チロナミンっていうのは見た事ないけど)

・キサンチン誘導体は気管支喘息に使います。
主に「テオフィリン」ですね。先発名だと「テオドール」や「ユニフィル」です。
気管支喘息で治療中の方はすでにβ刺激薬を使っている可能性が高いので、市販の咳止めは使わない方が良いでしょう。

・ステロイド剤はホントにいろいろ使います。
飲み薬だと「プレドニン」「プレドニゾロン」「リンデロン」「デカドロン」「コートリル」「レダコート」「セレスタミン」などがあります。

・利尿剤は高血圧浮腫に使われます。
利尿剤はカリウムを低下させるものと上昇させるものがあります。ここで問題にしてるのは低下させる方ですね。
アミノフィリンはキサンチン誘導体でもあり利尿剤としても使います。

あと、上には載ってないですが、一応カフェインもキサンチン誘導体になります。
利尿作用は知られているところですし、昔は喘息にも使われていましたね。

ここに書いてあることはあまり気にしなくて大丈夫ですが、上記の薬を服用中の方は「一応そういう可能性もあるんだな」と思っておいてください。

特に気管支喘息治療中の方はβ刺激薬が重複してしまう可能性があるので注意してください。
吸入薬としてステロイドと一緒になっている事が多いはずです。

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