『パブロンせき止めトリプル錠』の特徴・効果・注意点【薬剤師が解説】

この製品の特徴は、

  • 気管支拡張薬がメトキシフェナミン
  • トラネキサム酸が入っている

の2点でしょうか。

メトキシフェナミンは気管支拡張薬ですが、使われている市販薬はおそらく2製品のみです。
似たような成分であるメチルエフェドリンと比べて心臓への副作用が出やすい可能性があり、ちょっと使いにくく感じます。

トラネキサム酸は喉の炎症を抑える成分です。ただ、入っている量が少なく役に立たないでしょうね。
「入ってないよりはマシ」程度に思っておいた方が良いでしょう。

他の製品を使って効果がいまいちだった、という時に試してみるのは良いと思いますが、最初に手に取る製品ではないかと思います。

他の咳止めについては一覧を作ってあるのでこちらを見てみてください。まだ数は少ないですが。
鎮咳去痰薬の一覧表

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目次

基本情報

製造販売元:大正製薬

・主な成分

成分名1日量(15歳以上の)はたらき
デキストロメトルファン
臭化水素酸塩水和物
60mg咳を抑える
クロルフェニラミンマレイン酸塩12mg鼻水、くしゃみ、痒みを抑える
アレルギー性の咳を抑える
メトキシフェナミン塩酸塩150mg気管支をひろげ
呼吸を楽にする
トラネキサム酸280mg喉の腫れや痛みを抑える
スクロールできます
成分名1日量
(15歳以上の)
はたらき
デキストロメトルファン
臭化水素酸塩水和物
60mg咳を抑える
クロルフェニラミン
マレイン酸塩
12mg鼻水、くしゃみ、痒みを抑える
アレルギー性の咳を抑える
メトキシフェナミン
塩酸塩
150mg気管支をひろげ
呼吸を楽にする
トラネキサム酸280mg喉の腫れや痛みを抑える

・包装

錠剤:16錠・32錠
(PTP包装)

各成分の効果・注意点

『パブロンせき止めトリプル錠』の主要成分について、それぞれの効果と注意点を簡単にまとめています。

各成分名をタップ・クリックするとそれぞれの成分の簡単な解説記事にいきます。

  1. デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物
    • 中枢性の非麻薬性鎮咳薬で、咳を抑える効果があります(とされていますが、急性上気道炎に対する有効性は示されていません)。
    • 吐き気や眠気、めまいなどの副作用が出る可能性があります。重大な副作用として呼吸抑制あり。
    • セロトニン症候群の危険性あり。パーキンソン病薬や抗うつ剤を服用中の方は注意してください。
    • 乱用による死亡例あり。通常用量であれば心配いりません。適正な使用を。
  2. クロルフェニラミンマレイン酸塩
    • 鼻水やくしゃみ、痒みを抑えますが、鼻づまりにはあまり効きません。
    • この製品にはアレルギー性の咳を抑える目的で配合されているようです。
    • 眠気には注意してください。
    • 抗コリン作用により、眼圧上昇や排尿困難などの副作用が出る可能性があります。
  3. メトキシフェナミン塩酸塩
    • 気管支拡張作用があり呼吸を楽にします。
    • 副作用には動悸や手の震えなどがあり、心疾患のある方は特に注意が必要です。
    • 高血圧、糖尿病、甲状腺機能障害がある方も注意を。
  4. トラネキサム酸
    • 抗炎症作用があり、喉の腫れや痛みを軽減します。
    • 腎機能に問題がある方は用量の調整が必要です。透析を受けている方で痙攣の報告あり。
    • できた血栓が残りやすくなる可能性があります。血液凝固に関わる疾患がある方は注意を。

他の成分の薬を探してる方はこちらから。
成分の一覧表

使い方(用法・用量)

年齢1回の服用量1日の服用回数
15歳以上1錠4回まで

一応「食後」となっていますが、あまり気にしなくて良いでしょう。
「1日3回食後+必要に応じて寝る前も」となっているので「1日4回まで」ですね。

15歳未満の方は服用しないでくださいとのことです。
成分自体は小児でも使用可能ですが、15歳以上が1回1錠のため量の調節ができないからですね。

製品全体としての注意点

注意してほしいこと

いくつか注意点を書いておきます。

  • 眠気に注意:眠気が出る可能性があるので注意してください。
    • 服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」となっています。
    • 全然眠くならない方もいるのでそういう方は問題ないですね。
  • 喘息治療中の方
    • 気管支拡張薬のメトキシフェナミンが入っているので、喘息を治療中の方はすでに服用(吸入)してる可能性があります。過剰摂取にならないように注意してください。
  • MAO阻害薬・SSRIを服用中の方:製品の説明書には書いてないですが、セロトニン症候群があらわれることがあります。
    • MAO阻害薬はパーキンソン病の治療に使われる薬です(「セレギリン」「エフピー」「アジレクト」など)。
    • SSRIは抗うつ剤です(「パロキセチン」「エスシタロプラム」「セルトラリン」など)。
    • 併用禁忌ではありませんが、興奮・意識障害、震え・けいれん、発汗・発熱などがあれば中止して受診してください。
  • 血栓:血栓が溶けにくくなるので、血栓症の方は注意を。
    • また、ピル(特にエストロゲンを含む低用量ピル)との併用は血栓のリスクを高める可能性があるので注意してください。
  • 抗コリン作用:口の渇きや目のかすみ、眼圧上昇、排尿困難、便秘などの症状が出る可能性があります。
    • 気になる場合は減量または中止してください。
  • 服用回数:「5~6 回服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、医師等に相談を」となっています。
    • こういう咳止めは咳を一時的に鎮めるだけのものであり、咳の原因を治すものではありません。症状が長引いている場合は医師の診察を受けてください。
    • オーバードーズ(過剰摂取)の問題もあります。

薬物乱用について

他のところにも書いてるので折り畳みにしておきます。

クリック・タップで開きます。

近年、ジヒドロコデインに変わって乱用が増加してきているのが、このデキストロメトルファンです。
(ジヒドロコデインも咳止めです)

デキストロメトルファンは通常使う量であれば安全な成分ですが、高用量を摂取オーバードーズ)することで多幸感幻覚作用解離性作用を引き起こすことがあります。

特に若年層の間で薬物乱用の報告があり、一部の国では販売規制が設けられています。

乱用は重篤な副作用を引き起こす可能性があり、特に呼吸抑制意識障害セロトニン症候群横紋筋融解症(筋肉の壊死により急性腎不全を起こす)などが発生するリスクがあります。
日本でも急性中毒による死亡例があります。

必ず用法・用量を守って使用してください

妊娠・授乳中の使用について

大事な事ですが、対象者が限られるため折り畳みにしておきます。

クリック・タップで開きます。

妊娠中の方

この製品の説明書では
服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください
という書き方になっています。

デキストロメトルファン、クロルフェニラミン、トラネキサム酸については特に問題ないとされています。

ただ、メトキシフェナミンについてはデータがありません。添付文書には
「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と書かれています。

他のβ刺激薬だと特に問題になるものはないので、おそらくはメトキシフェナミンもそれほど問題はないかな、とは思います。
ただ、この成分が含まれている市販薬はそれほどないので、あえてこの製品を使う必要もないかと思います。

服用するにしても短期間の使用にとどめておいた方が無難だとは思います。
原則として、妊娠している方は市販薬を使わず、受診して医師に薬を処方してもらった方が良いと思います。
(というか、必ず受診してください)

授乳中の方

この製品の説明書には、授乳に関しては何も記載がありません。

Mothers’ Milk基準では、この製品中の成分で一番リスクの高いもので、

  • デキストロメトルファン
  • クロルフェニラミン
  • トラネキサム酸

の3つが「L3(概ね適合)」となっています。

メトキシフェナミンについては授乳に関してもデータがありません。添付文書やインタビューフォームにも何も記載がありません。

「多くの薬は母親が飲んだ量の1%未満しか母乳中に移行しない」という事を考えると過剰な心配はいらないかと思います。

心配であれば授乳後に薬を服用すると良いでしょう。次の授乳までに薬はかなり分解されてます。
4時間程度時間を空けて、服用できるタイミングで服用してください。

できれば咳が酷い時だけ使用する方が良いでしょうね。

心配な方は、薬を服用中は一時的に粉ミルクを利用する方法もあります。

妊娠・授乳中の薬物治療に関して不安を持つ方も多いかと思います。
そういう方の相談に乗ってくれる機関があるのでそこのサイトのリンクを貼っておきます。
妊娠と薬情報センター:https://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

製品の特徴や利点、個人的な感想

この製品の特徴は、

  • 気管支拡張薬がメトキシフェナミン
  • トラネキサム酸が入っている

の2点でしょうか。

メトキシフェナミンを配合してる市販薬は、きつね調べでは2製品のみでした。

メトキシフェナミンはメチルエフェドリンと同じ系統の気管支拡張薬(β刺激薬)ですが、メチルエフェドリンよりも心臓への影響が強く出る可能性があります。心配な方はメチルエフェドリンが入っている製品の方が無難だと思います。

また、メチルエフェドリンと違い中枢性の鎮咳作用があるかどうかは確認できませんでした。
インタビューフォームにも記載がなく、海外の文献も調べましたが見当たりませんでした。

トラネキサム酸は喉の炎症を抑える効果があります。咳をすることで喉が荒れますし、入ってないよりは入っていた方が良いと思います。
ただ、量がかなり少なめ。この製品には1回あたり70mgしか入っていません。病院で処方される場合は基本的には1回250~500mgです。
ほぼ意味はないと思って良いでしょう。

中枢性鎮咳薬はデキストロメトルファンです。ジヒドロコデインよりも安全性は高いですが、効果はいまいち。

クロルフェニラミンは抗ヒスタミン薬です。アレルギー症状を抑えるものですが、アレルギー性の咳でなければ必要ありません。
市販の鼻炎薬の最大量と同じ量が入っているので、眠気には注意してください。

中枢性の鎮咳薬や抗ヒスタミン薬は痰を硬くして出しにくくする可能性があるので、痰が絡む咳にはあまり使用しない方が良いでしょう。

製品全体としては、どうもちょっと使いにくく感じます。

一応デキストロメトルファンは市販薬としての最大量である1日60mg(4回使った場合)入ってますが、今は基準を超えた1日90mgの製品もありますしね(『メジコンせき止め錠Pro』)。

メトキシフェナミンはあまり使われてなく実績に乏しいです。副作用のことを考えるとちょっと使いにくいですね。
普通にメチルエフェドリンが入っている製品で良いかと思います。

基本的に中枢性の鎮咳薬はあくまで痰の絡まない咳(乾性咳嗽)に使うものですが、痰の絡まない咳の原因もさまざまです。
咳喘息、アトピー咳嗽、胃食道逆流症、百日咳、気管結核、マイコプラズマ、薬によるものなどいろいろあります。

製品の説明書にも書いてある通り、5~6回使用しても良くならないようであれば受診して原因をはっきりさせた方が良いでしょう。

痰の絡む咳が出る方は、効果は弱いかもしれませんがなるべく去痰薬だけの製品を使った方が良いかと思います。

去痰薬は以下のような成分があります。
解説記事にその成分を含む製品一覧も載せてるので興味があれば見てみてください。
カルボシステイン
アンブロキソール
ブロムヘキシン
グアイフェネシン
グアヤコールスルホン酸

去痰薬だけの製品はこんなのがあります。

カルボシステインとブロムヘキシンは作用が違うため、合わせて使うとより効果的です。

あと、カルボシステインだけの製品もありますね。
これはちょっと値段が高いのであまりお勧めできませんけど。

使用した方の口コミ・レビュー、値段など

「ものログ」というサイトの口コミです。

良い評価としては、

「だいぶ咳が楽になった」

といった具合。

否定的な意見としては、

「二箱(8日分)くらい飲まないと効き目がわからない」

といった感じ。

口コミ自体が少なく、よく分かりませんでした。
あまり使われてないみたいですね。

値段について

メーカーの希望小売価格(税込)を見ると、

16錠1,408円
32錠1,958円

となっていました。

Yahooショッピング(送料含まず)で見てみると、

包装値段1日分に換算
16錠800~1,400円200~350円
32錠1,250~2,000円156~250円

※1日分のは1日4錠で計算
※2025年6月時点です。

こんな感じでした。Amazonや楽天だとまた違うと思いますけど。

咳止めとしては高くはないですね。
トラネキサム酸が入っている薬って高くなりがちですが、これはそうでもありません。入っている成分量が少ないのもあると思いますが。

この記事を読んで「買おうかな?」と興味を持たれた方へ

まとめ

この記事では『パブロンせき止めトリプル錠』について、各成分の効果と注意点、個人的な感想、使用者のレビューなどをご紹介しました。

メトキシフェナミンやトラネキサム酸が入っているのは咳止めとしては珍しいですね。

ただ、メトキシフェナミンはメチルエフェドリンと比べると心臓への副作用が出やすい可能性があり使いにくいと感じます。
トラネキサム酸は量が少ないのでほとんど意味がないでしょう。

他の咳止めを使って効果がいまいちだった場合にこの製品を試してみるのも良いかと思いますが、たぶんこの製品の方が効くということはないでしょうね。

また、デキストロメトルファンのような中枢性の鎮咳薬は長期で使用するものではありません。
一時的な症状緩和が目的であり、根本治療ではありません。

過量服用・長期連用はしないでください。
用法・用量は必ず守って服用するよう、お願いいたします。

他の咳止めについては一覧を作ってあるのでこちらを見てみてください。まだ数は少ないですが。
鎮咳去痰薬の一覧表

咳の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。

ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。

効果を感じられない場合や症状が改善しない場合は、医療機関を受診することをお勧めします

上の方でも紹介しましたが、再度リンクを貼っておきます

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