
この製品の特徴は、中枢性鎮咳薬の成分量が市販薬の中で最大、ということですね。
(唯一『パブロンSせき止め』という製品が同等。他にあったらすみません)
また、咳止めとしては珍しくトラネキサム酸(喉の炎症を抑える)が入っています。
ただ量がちょっと少なめ。それほど効果はないと思います。
咳止めとしての効果は高いかもしれませんが、中枢性鎮咳薬は使える場面が限られます。
風邪が治った後に咳だけが続いてる、という時くらいですね。
一応去痰薬も入ってはいるのですが、あまり効果は期待できないでしょう。
痰の絡んだ咳に使うと症状が悪化する可能性もあるので使わないほうがいいかと思います。
基本情報
・製造販売元:アリナミン製薬
・主な成分
成分名 | 1日量(15歳以上の) | はたらき |
---|---|---|
ジヒドロコデインリン酸塩 | 30mg | 咳を抑える |
dl-メチルエフェドリン塩酸塩 | 75mg | 気管支をひろげ、咳を鎮める |
ノスカピン | 60mg | 咳を抑える |
ブロムヘキシン塩酸塩 | 12mg | 痰を出しやすくする |
トラネキサム酸 | 420mg | 喉の腫れや痛みを抑える |
成分名 | 1日量 (15歳以上の) | はたらき |
---|---|---|
ジヒドロコデイン リン酸塩 | 30mg | 咳を抑える |
dl-メチルエフェドリン 塩酸塩 | 75mg | 気管支をひろげ、 咳を鎮める |
ノスカピン | 60mg | 咳を抑える |
ブロムヘキシン塩酸塩 | 12mg | 痰を出しやすくする |
トラネキサム酸 | 420mg | 喉の腫れや痛みを抑える |
・包装
錠剤:36錠
(PTP包装)
各成分の効果・注意点
『ベンザブロックせき止め錠』の主要成分について、それぞれの効果と注意点を簡単にまとめています。
- ジヒドロコデインリン酸塩
- 中枢性麻薬性鎮咳薬で、咳中枢を抑制することで咳を抑えます。
- 痰を硬くする可能性があるので、主に痰のからまない咳に使います。
- 便秘、眠気などの副作用に注意を。
- 依存形成の可能性があり「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
- 12歳未満は禁忌です(呼吸抑制のリスクが高い)。
- dl-メチルエフェドリン塩酸塩
- 気管支拡張作用があり、咳を鎮めたり呼吸を楽にします。
- 副作用には動悸や手の震えがあり、心疾患のある方は特に注意が必要です。
- 「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
- ノスカピン
- 中枢性の非麻薬性鎮咳薬で、咳を抑える効果があります。
- 分泌を抑制せず、痰の排出も妨げられないそうです。
- 副作用や依存性はあまりなく使いやすいですね。
- ブロムヘキシン塩酸塩
- 気道の粘液をサラサラにし、痰を切れやすくする効果があります。
- 使用開始時には一時的に痰の量が増えることがあります。
- トラネキサム酸
- 抗炎症作用があり、喉の腫れや痛みを軽減します。
- 腎機能に問題がある方は用量の調整が必要です。透析を受けている方で痙攣の報告あり。
- できた血栓が残りやすくなる可能性があります。血液凝固に関わる疾患がある方は注意を。
使い方(用法・用量)
年齢 | 1回の服用量 | 1日の服用回数 |
---|---|---|
15歳以上 | 3錠 | 3回 |
12~14歳 | 2錠 | 3回 |
「食後に」となっていますが、あまり気にしなくても良いでしょう。
基本は「1日3回」なのですが、症状がひどい時だけ使用するというのでも良いでしょうね。
12歳未満の方は服用しないでくださいとのことです。
ジヒドロコデインが入っているからですね。
製品全体としての注意点
注意してほしいこと
いくつか注意点を書いておきます。
- 眠気に注意:眠気が出る可能性があるので注意してください。
- 「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」となっています。
- この製品には抗ヒスタミン薬は入っていないので、眠気はそれほど強くはないかと思います。
- 喘息治療中の方
- ジヒドロコデインは気道分泌の抑制と気管支を収縮させる作用もあるので、基本的には喘息には使いません(喘息発作には禁忌)。
- 気管支拡張薬のメチルエフェドリンが入っているので、喘息を治療中の方はすでに服用(吸入)してる可能性があります。過剰摂取にならないように注意してください。
- 血栓:血栓が溶けにくくなるので、血栓症の方は注意を。
- また、ピル(特にエストロゲンを含む低用量ピル)との併用は血栓のリスクを高める可能性があるので注意してください。
- 服用回数:「過量服用・長期連用しないでください」となっています。
- こういう咳止めは咳を一時的に鎮めるだけのものであり、咳の原因を治すものではありません。症状が長引いている場合は医師の診察を受けてください。
- オーバードーズ(過剰摂取)の問題もあります。
薬物乱用について
他のところにも書いてるので折り畳みにしておきます。
クリック・タップで開きます。
近年、市販薬による薬物乱用が増えていますが、その筆頭がこの製品にも入っているジヒドロコデインのようです。
(73.5%がジヒドロコデイン含有製品というデータも)
市販薬は医療用医薬品と違い、店頭やネットで簡単に買えますしね。
一時的に多幸感があったり気分が落ち着いたり疲労感がなくなったりしますが、同じ量を服用していても効き目が薄くなっていき、服用量が増えていきます。
大量に飲めば麻薬と同じです。
「オーバードーズ(過剰摂取)」というやつですね。
死亡例もあります。
使われている製品は鎮咳去痰薬として売られているものが圧倒的に多いようです。
風邪薬よりも1日に使える成分量が多くなっています(1回10mg・1日30mgまで)。
ジヒドロコデイン単体でも薬物依存が形成されますが、風邪薬や鎮咳去痰薬の場合は他にも
・抗ヒスタミン薬
・エフェドリン類
・カフェイン
などが入っていて、依存形成を助長します。
(この製品にはメチルエフェドリンが配合されています)
ただ、通常用量で問題になる事はまずないと思います。
必ず用法・用量を守って使用してください。
妊娠・授乳中の使用について
大事な事ですが、対象者が限られるため折り畳みにしておきます。
クリック・タップで開きます。
妊娠中の方
この製品の説明書では
「服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください」
という書き方になっています。
ジヒドロコデインは妊娠28週以降は推奨されません。
豪州ADECという基準ではAとなり、「今までの使用経験上では大丈夫だった」とのことです。
ただ、違う基準(Briggs基準)によるとリスク4の「妊娠28週以降は胎児への危険性が示唆される」という分類になっています。
他の成分については影響は少ないとされています。
メチルエフェドリンによって胎児が頻脈を起こす可能性もありますが、あまり心配は要らないかと思います。
ただ、服用するにしても短期間の使用にとどめておいた方が無難だとは思います。
原則として、妊娠している方は市販薬を使わず、受診して医師に薬を処方してもらった方が良いと思います。
(というか、必ず受診してください)
授乳中の方
この製品の説明書には
「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること」
と書いてあります。
ジヒドロコデインが入っているため、この記載があります。
Mothers’ Milk基準では、この製品中の成分で一番リスクの高いもので、
- ジヒドロコデイン
- トラネキサム酸
の2つがL3(概ね適合)となっています。
ジヒドロコデインは基本的には「授乳を避けること」となっています。母乳に移行して乳児にモルヒネ中毒(傾眠、哺乳困難、呼吸困難等)が生じたとの報告があります。
母親に便秘や眠気などの副作用が出ている場合は授乳をやめた方が良いでしょうね。
似たようなものでデキストロメトルファンというのがあり、こちらは一応安全に使用可能となっています(効くかどうかは別)。
トラネキサム酸は1歳未満でも使えますね。
ノスカピンやブロムヘキシンはあまり気にしなくても良いでしょう。
メチルエフェドリンに関してはデータがありません。
基本的には「避けてください」と言われる事が多いですが、生後3ヵ月から使える製品も存在します。
「多くの薬は母親が飲んだ量の1%未満しか母乳中に移行しない」という事を考えると過剰な心配はいらないかと思います。
心配であれば授乳後に薬を服用すると良いでしょう。次の授乳までに薬はかなり分解されてます。
4時間程度時間を空けて、服用できるタイミングで服用してください。
可能なら症状がひどい時だけ頓用で使用する方が良いでしょう。
心配な方は、薬を服用中は粉ミルクを使うという手もあります。
製品の特徴や利点、個人的な感想
この製品の特徴は、
- 中枢性鎮咳薬の成分量が市販薬の中で最大
- トラネキサム酸が入っている
ということでしょうか。
中枢性鎮咳薬は、
- ジヒドロコデイン:30mg/日
- ノスカピン:60mg/日
の2つが入っています。それぞれ市販薬に配合できる最大量ですね。
この2つの成分がこの量入っているのは、この製品と『パブロンSせき止め』の2つだけです。たぶん。
ノスカピンの鎮咳作用は一応ジヒドロコデインの半分くらい(ラットでの実験データですが)とされていて、あくまで目安ですが、この製品の総合的な鎮咳作用はジヒドロコデイン60mg相当とも言えます。
また、気管支拡張薬としてメチルエフェドリンが最大量入っています。
中枢性鎮咳薬と気管支拡張薬の成分量だけでみると、この製品以上のものはありません。
去痰薬はブロムヘキシンが入っていますが、これ単独だと効果はあまり期待できないでしょうね。
トラネキサム酸は喉の炎症を抑える成分です。
鎮咳去痰薬の製品でトラネキサム酸が入っているのは珍しいです。4製品しか見つかりませんでした(きつね調べ)。
ただ量がちょっと少なめ。この製品は1日420mgですが、医療用の場合は1回に250~500mg・1日3回使います。
「入ってないよりは良いかな」くらいに思っておいた方が良いでしょうね。
アレルギー性の咳に使う抗ヒスタミン薬は入っていません。
アレルギー性の咳ではない方、抗ヒスタミン薬で眠気が出る方は使いやすいかと思います。
ちゃんと咳・痰・喉の痛みに使う成分のみが入っていて使いやすい製品かと思います。
他の製品だと抗ヒスタミン薬やカフェインなど、あまり必要のない成分も入ってますしね。
ジヒドロコデインは痰を硬くするので、痰の絡んだ咳が出る場合は控えた方が良いでしょうね。
痰の絡まない咳だけに使用した方が良いかと思います。
ブロムヘキシンが入っていますが、これ単独では効果はあまり期待できないと思います。
総合的には痰が出しにくくなって、逆に症状が悪化する可能性があります。
咳止めの成分量が多いからといって、それが良いとは限りません。
中枢性の鎮咳薬は、あくまで痰の絡まない咳(乾性咳嗽)に使うものですが、痰の絡まない咳の原因もさまざまです。
咳喘息、アトピー咳嗽、胃食道逆流症、百日咳、気管結核、マイコプラズマ、薬によるものなどいろいろあります。
製品の説明書にも書いてある通り、5~6回使用しても良くならないようであれば受診して原因をはっきりさせた方が良いでしょう。
風邪の他の症状がほぼ良くなったのに咳だけが続いてる(感染後咳嗽)ときなどには使えます。
風邪をひいた時の咳に使う場合も、できれば頓用の方が良いでしょう。夜に咳が出て寝付けない時とか。
痰の絡む咳が出る方はこの製品は選択肢には入らないと思います。
効果は弱いかもしれませんが、去痰薬だけの製品を使った方がまだ良いでしょうね。
去痰薬はブロムヘキシンの他に以下のような成分があります。
解説記事にその成分を含む製品一覧も載せてるので興味があれば見てみてください。
・カルボシステイン
・アンブロキソール
・グアイフェネシン
・グアヤコールスルホン酸
去痰薬だけの製品はこんなのがあります。

カルボシステインとブロムヘキシンは作用が違うため、合わせて使うとより効果的です。
あと、カルボシステインだけの製品もありますね。
これはちょっと値段が高いのであまりお勧めできませんけど。

使用した方の口コミ・レビュー、値段など
「ものログ」というサイトの口コミです。
良い評価としては、
といった具合。
否定的な意見としては、
といった感じ。
否定的な意見はほぼなかったですね。効いた、という人がほとんど。
ミント味で清涼感があるみたいです。
値段について
メーカーの希望小売価格(税込)を見ると、
36錠 | 1,650円 |
ということでした。
Yahooショッピング(送料含まず)で見てみると、
包装 | 値段 | 1日分に換算 |
36錠 | 1,200~1,600円 | 300~400円 |
※1日分のは1日9錠で計算
※2025年6月時点です。
こんな感じでした。Amazonや楽天だと違うかもしれませんが。
ん~、咳止めとしてはちょっと高いですね。効果は高いと思いますけど。
この記事を読んで「買おうかな?」と興味を持たれた方へ
まとめ
この記事では『ベンザブロックせき止め錠』について、各成分の効果と注意点、個人的な感想、使用者のレビューなどをご紹介しました。
この製品は、中枢性鎮咳薬の成分量が市販薬の中で最大となっています(きつね調べでは)。
それが良いとは言いませんけど。症状に合ってなければ逆効果となる場合もあるので注意してください。
風邪が治った後に咳だけが続いてて困るという時には使えると思います。夜に咳が出て眠れないときとか。
抗ヒスタミン薬は入ってないので眠気は少なめかと思いますけど(ジヒドロコデインでも眠気が出ることがあります)。
逆に、他の咳止めで日中眠くなる方には良いかもしれません。
ただし、「痰の絡まない咳」だけにした方が良いかと思います。
中枢性鎮咳薬は痰を硬くして出しにくくなる可能性があります。
この製品には去痰薬としてブロムヘキシンが入っていますが、これ単体だとあまり効果は期待しない方が良いでしょう。
できれば咳が酷い時だけ頓用で使用するようにしてください。
ジヒドロコデインのような中枢性の鎮咳薬は長期で使用するものではありません。
一時的な症状緩和が目的であり、根本治療ではありません。
製品の説明書にも書いてある通り、過量服用・長期連用はしないでください。
用法・用量は必ず守って服用するよう、お願いいたします。
咳の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。
ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。
効果を感じられない場合や症状が改善しない場合は、医療機関を受診することをお勧めします。
上の方でも紹介しましたが、再度リンクを貼っておきます
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