
この製品の特徴は、
- 水なしで服用できる(トローチではない)
- 抗ヒスタミン薬がd-クロルフェニラミン
の2点でしょうか。
鎮咳去痰薬にはトローチタイプの製品も多いのですが、ジヒドロコデインが配合されているものはありません(たぶん)。
水なしで服用できる製品としては比較的強めの方だと思います。
抗ヒスタミン薬は一応眠気の少なめの成分が入っています。それほど違いは分からないと思いますけど。
たまに外出先で突発的に咳が出るため咳止めのトローチを持ち歩いてるけど効果がちょっと弱いな~、と感じてる人には良いかもしれません。
ただ、中枢性鎮咳薬と抗ヒスタミン薬が配合されていて去痰薬が配合されていないので、痰の絡まない咳だけに使用してください。
基本情報
・製造販売元:佐藤製薬
・主な成分
成分名 | 1日量(15歳以上の) | はたらき |
---|---|---|
ジヒドロコデインリン酸塩 | 24mg | 咳を抑える |
dl-メチルエフェドリン塩酸塩 | 60mg | 気管支をひろげ、咳を鎮める |
d-クロルフェニラミンマレイン酸塩 | 3mg | 鼻水、くしゃみ、痒みを抑える アレルギー性の咳を抑える |
成分名 | 1日量 (15歳以上の) | はたらき |
---|---|---|
ジヒドロコデイン リン酸塩 | 24mg | 咳を抑える |
dl-メチルエフェドリン 塩酸塩 | 60mg | 気管支をひろげ、咳を鎮める |
d-クロルフェニラミン マレイン酸塩 | 3mg | 鼻水、くしゃみ、痒みを抑える アレルギー性の咳を抑える |
・包装
錠剤:12錠(水なしで飲めるタイプ)
(PTP包装)
各成分の効果・注意点
『トニン咳止サット』の主要成分について、それぞれの効果と注意点を簡単にまとめています。
- ジヒドロコデインリン酸塩
- 中枢性麻薬性鎮咳薬で、咳中枢を抑制することで咳を抑えます。
- 痰を硬くする可能性があるので、主に痰のからまない咳に使います。
- 便秘、眠気などの副作用に注意を。
- 依存形成の可能性があり「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
- 12歳未満は禁忌です(呼吸抑制のリスクが高い)。
- dl-メチルエフェドリン塩酸塩
- 気管支拡張作用があり、咳を鎮めたり呼吸を楽にします。
- 副作用には動悸や手の震えがあり、心疾患のある方は特に注意が必要です。
- 「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
- d-クロルフェニラミンマレイン酸塩
- 鼻水やくしゃみ、痒みを抑えますが、鼻づまりにはあまり効きません。
- この製品にはアレルギー性の咳を抑える目的で配合されているようです。
- 眠気には注意してください。
- 抗コリン作用により、眼圧上昇や排尿困難などの副作用が出る可能性があります。
使い方(用法・用量)
年齢 | 1回の服用量 | 1日の服用回数 |
---|---|---|
15歳以上 | 1錠 | 3回 |
「食後に」となっていますが、あまり気にしなくても良いでしょう。
基本は「1日3回」なのですが、症状がひどい時だけ使用するというのでも良いでしょうね。
特にこの製品は頓服での使用に適した口腔内崩壊錠です。
口に入れて10~15秒で溶けるそう。ちなみにコーヒーミント味だそうです。
15歳未満の方は服用しないでくださいとのことです。
成分自体は12歳から使えるものですが、15歳以上を1回1錠にしてるため量の調節ができないからですね。
製品全体としての注意点
注意してほしいこと
いくつか注意点を書いておきます。
- 眠気に注意:眠気が出る可能性があるので注意してください。
- 「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」となっています。
- 全然眠くならない方もいるのでそういう方は問題ないですね。
- 喘息治療中の方
- ジヒドロコデインは気道分泌の抑制と気管支を収縮させる作用もあるので、基本的には喘息には使いません(喘息発作には禁忌)。
- 気管支拡張薬のメチルエフェドリンが入っているので、喘息を治療中の方はすでに服用(吸入)してる可能性があります。過剰摂取にならないように注意してください。
- 抗コリン作用:口の渇きや目のかすみ、眼圧上昇、排尿困難、便秘などの症状が出る可能性があります。
- 気になる場合は減量または中止してください。
- 服用回数:「過量服用・長期連用しないでください」となっています。
- こういう咳止めは咳を一時的に鎮めるだけのものであり、咳の原因を治すものではありません。症状が長引いている場合は医師の診察を受けてください。
- オーバードーズ(過剰摂取)の問題もあります。
薬物乱用について
他の記事でも触れているため折り畳みにしておきます。
クリック・タップで開きます。
近年、市販薬による薬物乱用が増えていますが、その筆頭がこの製品にも入っているジヒドロコデインのようです。
(73.5%がジヒドロコデイン含有製品というデータも)
市販薬は医療用医薬品と違い、店頭やネットで簡単に買えますしね。
一時的に多幸感があったり気分が落ち着いたり疲労感がなくなったりしますが、同じ量を服用していても効き目が薄くなっていき、服用量が増えていきます。
大量に飲めば麻薬と同じです。
「オーバードーズ(過剰摂取)」というやつですね。
死亡例もあります。
使われている製品は鎮咳去痰薬として売られているものが圧倒的に多いようです。
風邪薬よりも1日に使える成分量が多くなっています(1回10mg・1日30mgまで)。
ジヒドロコデイン単体でも薬物依存が形成されますが、風邪薬や鎮咳去痰薬の場合は他にも
・抗ヒスタミン薬
・エフェドリン類
・カフェイン
などが入っていて、依存形成を助長します。
(この製品には上2つが配合されています)
ただ、通常用量で問題になる事はまずないと思います。
必ず用法・用量を守って使用してください。
妊娠・授乳中の使用について
大事な事ですが、対象者が限られるため折り畳みにしておきます。
クリック・タップで開きます。
妊娠中の方
この製品の説明書では
「服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください」
という書き方になっています。
ジヒドロコデインは妊娠28週以降は推奨されません。
豪州ADECという基準ではAとなり、「今までの使用経験上では大丈夫だった」とのことです。
ただ、違う基準(Briggs基準)によるとリスク4の「妊娠28週以降は胎児への危険性が示唆される」という分類になっています。
他の成分については影響は少ないとされています。
メチルエフェドリンによって胎児が頻脈を起こす可能性もありますが、あまり心配は要らないかと思います。
ただ、服用するにしても短期間の使用にとどめておいた方が無難だとは思います。
原則として、妊娠している方は市販薬を使わず、受診して医師に薬を処方してもらった方が良いと思います。
(というか、必ず受診してください)
授乳中の方
この製品の説明書には
「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること」
と書いてあります。
ジヒドロコデインが入っているため、この記載があります。
Mothers’ Milk基準では、この製品中の成分で一番リスクの高いもので、
- ジヒドロコデイン
- クロルフェニラミン
の2つがL3(概ね適合)となっています。
ジヒドロコデインは基本的には「授乳を避けること」となっています。母乳に移行して乳児にモルヒネ中毒(傾眠、哺乳困難、呼吸困難等)が生じたとの報告があります。
母親に便秘や眠気などの副作用が出ている場合は授乳をやめた方が良いでしょうね。
似たようなものでデキストロメトルファンというのがあり、こちらは一応安全に使用可能となっています(効くかどうかは別)。
メチルエフェドリンに関してはデータがありません。
基本的には「避けてください」と言われる事が多いですが、生後3ヵ月から使える製品も存在します。
とはいえ、「多くの薬は母親が飲んだ量の1%未満しか母乳中に移行しない」という事を考えると過剰な心配はいらないかと思います。
心配であれば授乳後に薬を服用すると良いでしょう。次の授乳までに薬はかなり分解されてます。
4時間程度時間を空けて、服用できるタイミングで服用してください。
可能なら症状がひどい時だけ頓用で使用する方が良いでしょう。
心配な方は、薬を服用中は粉ミルクを使うという手もあります。
製品の特徴や利点、個人的な感想
この製品の特徴は、口腔内崩壊錠である(なめたら溶ける)、という事でしょうか。
咳止めだとトローチタイプの製品も多いので特徴としては弱いのですが、トローチでジヒドロコデインが入っているものは確認できませんでした(あったらすみません)。
トローチで使われている中枢性鎮咳薬は大体がデキストロメトルファンですね。鎮咳作用はジヒドロコデインの方が強いです。
あと、d-クロルフェニラミンを使っているのも咳止めとしては珍しいですね。
クロルフェニラミンには「d-クロル~」と「dl-クロル~」の2つがあります(ただ単に「クロルフェニラミン」と書かれているものは全て「dl-クロル~」になります)。
「d-」は「dl-」の約半分の量で効果は同等、眠気は少なめとなっています。
大した違いは感じないと思いますが、一応は「d-」の方が上位という感じですね。
市販の咳止めでクロルフェニラミンが使われているのは、確認できたので30製品あります。
そのうち「dl-」は26製品、「d-」は4製品のみでした。
一応特徴ではありますね。
ただ、どちらにしても第一世代の抗ヒスタミン薬のため抗コリン作用に注意してください。
抗コリン作用は分泌全体を抑えてしまうので、痰が硬くなる可能性があります。
第一世代の抗ヒスタミン薬は抗コリン作用が強く、痰の絡む咳が出る場合はあまり使わない方が良いでしょう。
抗ヒスタミン薬はアレルギー性の咳に使いますが、アレルギー性の咳の場合は痰はあまり出ないはずです。痰が出るようなら他の疾患の可能性があります。
ジヒドロコデインも痰を硬くするので、痰の絡んだ咳が出る場合は控えた方が良いでしょうね。
痰の絡まない咳だけに使用した方が良いかと思います。
配合されている成分量はそれほど多くはないですね。
成分 | この製品 | 市販の咳止めに 配合できる最大量 | 市販の風邪薬に 配合できる最大量 |
---|---|---|---|
ジヒドロコデイン | 24mg | 30mg | 24mg |
メチルエフェドリン | 60mg | 75mg | 60mg |
d-クロルフェニラミン | 3mg | 6mg | 3.5mg |
成分 | この製品 | 市販の咳止めに 配合できる最大量 | 市販の風邪薬に 配合できる最大量 |
---|---|---|---|
ジヒドロコデイン | 24mg | 30mg | 24mg |
メチルエフェドリン | 60mg | 75mg | 60mg |
d-クロルフェニラミン | 3mg | 6mg | 3.5mg |
こんな感じです。
市販薬では最大量配合しているものも多いのですが、この製品は控えめ。
といっても、一番右に書いてある市販の風邪薬の最大量と同じくらいの成分量です。
この程度の差だと効果に関してはそれほど違いは感じないと思います。
水なしでも服用できますし、外出先などで突発的に咳が出始めたときなどには良いかもしれませんね。
ただ、再度書いておきますが喘息発作にはジヒドロコデインは禁忌です。症状が悪化する可能性があります。
風邪の他の症状がほぼ良くなったのに咳だけが続いてる(感染後咳嗽)ときなどには使えます。
風邪をひいた時の咳に使う場合も、できれば頓用の方が良いでしょう。
第一世代の抗ヒスタミン薬は眠気が出やすいので眠れない時には良いかもしれないですね。それ目的で配合してるわけではないと思いますが。
中枢性の鎮咳薬は、あくまで痰の絡まない咳(乾性咳嗽)に使うものですが、痰の絡まない咳の原因もさまざまです。
咳喘息、アトピー咳嗽、胃食道逆流症、百日咳、気管結核、マイコプラズマ、薬によるものなどいろいろあります。
製品の説明書にも書いてある通り、5~6回使用しても良くならないようであれば受診して原因をはっきりさせた方が良いでしょう。
痰の絡む咳が出る方はこの製品は選択肢には入らないと思います。
効果は弱いかもしれませんが、去痰薬だけの製品を使った方がまだ良いでしょうね。
去痰薬は以下のような成分があります。
解説記事にその成分を含む製品一覧も載せてるので興味があれば見てみてください。
・カルボシステイン
・アンブロキソール
・ブロムヘキシン
・グアイフェネシン
・グアヤコールスルホン酸
去痰薬だけの製品はこんなのがあります。

カルボシステインとブロムヘキシンは作用が違うため、合わせて使うとより効果的です。
あと、カルボシステインだけの製品もありますね。
これはちょっと値段が高いのであまりお勧めできませんけど。

使用した方の口コミ・レビュー、値段など
口コミを探したのですが見当たりませんでした。
あんまり使われてないっぽいですね。
値段について
メーカーの希望小売価格(税込)を見ると、
12錠 | 1,760円 |
となっています。(ヨドバシ.comのサイトより)
Yahooショッピング(送料含まず)で見てみると、
包装 | 値段 | 1日分に換算 |
12錠 | 900~1,630円 | 225~408円 |
※1日分のは1日3錠で計算
※2025年5月時点です。
こんな感じでした。Amazonや楽天だと違うかもしれませんが。
ん~、安くはないですね。この成分量ならちょっと高めかと。
この記事を読んで「買おうかな?」と興味を持たれた方へ
まとめ
この記事では『トニン咳止サット』について、各成分の効果と注意点、個人的な感想などをご紹介しました。
この製品の特徴は、
- 水なしで飲める口腔内崩壊錠
- 抗ヒスタミン薬がd-クロルフェニラミン
の2点でしょうか。
水なしで使えるのはトローチも同じですが、こちらは中枢性鎮咳薬はジヒドロコデインが配合されています。トローチでジヒドロコデインが配合されているものはありません。たぶん。
d-クロルフェニラミンは咳止めでは珍しいですね。大体はdl-クロルフェニラミンです。
「d-」の方が一応眠気は少なめとなっています。違いはそんなに感じないと思いますけど。
水なしで使える、眠気が少なめということで、外出先での突発的な咳には使えるでしょうか。
眠気が気になるならそもそも抗ヒスタミン薬は入ってない製品の方がいいと思いますが。
中枢性鎮咳薬と抗ヒスタミン薬が入ってて去痰薬が入ってないので、痰の絡まない咳だけに使用してください。
痰の絡む咳に使用すると、症状が悪化する可能性があります。
また、できれば咳が酷い時だけ頓用で使用するようにしてください。
ジヒドロコデインのような中枢性の鎮咳薬は長期で使用するものではありません。
一時的な症状緩和が目的であり、根本治療ではありません。
製品の説明書にも書いてある通り、過量服用・長期連用はしないでください。
用法・用量は必ず守って服用するよう、お願いいたします。
咳の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。
ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。
効果を感じられない場合や症状が改善しない場合は、医療機関を受診することをお勧めします。
上の方でも紹介しましたが、再度リンクを貼っておきます
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