『エスエスブロン®錠』の特徴・効果・注意点【薬剤師が解説】

この製品は、咳止めのジヒドロコデインが最大量+気管支拡張薬が入っているので、効果は期待できるかと思います。
気管支拡張薬は市販の咳止めとしては控え目ですね。もっと多く入っている製品は他にあります。

「せき・たんに」と書かれていますが、去痰薬は入っていません。
逆に痰を硬くして出しにくくする可能性があるので、「痰が絡んだ咳」が出る場合は使用しない方が良いでしょう。

咳がひどくて夜眠れない、風邪の後に咳だけが続いてる、という場合には頓用で使用することをおすすめします。
長期連用するものではありません。

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記事の内容については公平かつ独立した立場で書かれています。

目次

基本情報

製造販売元:エスエス製薬

・主な成分

成分名1日量(15歳以上の)はたらき
ジヒドロコデインリン酸塩30mg咳を抑える
dl-メチルエフェドリン塩酸塩50mg気管支をひろげ、咳を鎮める
クロルフェニラミンマレイン酸塩8mgアレルギー性の咳を抑える
無水カフェイン90mg他の成分の働きを助ける?
スクロールできます
成分名1日量
(15歳以上の)
はたらき
ジヒドロコデイン
リン酸塩
30mg咳を抑える
dl-メチルエフェドリン
塩酸塩
50mg気管支をひろげ、咳を鎮める
クロルフェニラミン
マレイン酸塩
8mgアレルギー性の咳を抑える
無水カフェイン90mg他の成分の働きを助ける?

・包装

錠剤:60錠・84錠
(瓶包装)

各成分の効果・注意点

『エスエスブロン錠』の主要成分について、それぞれの効果と注意点を簡単にまとめています。

各成分名をタップ・クリックするとそれぞれの成分の簡単な解説記事にいきます。

  1. ジヒドロコデインリン酸塩
    • 中枢性麻薬性鎮咳薬で、咳中枢を抑制することで咳を抑えます。
    • 痰を硬くする可能性があるので、主に痰のからまない咳に使います。
    • 便秘、眠気などの副作用に注意を。
    • 依存形成の可能性があり「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
    • 12歳未満は禁忌です(呼吸抑制のリスクが高い)。
  2. dl-メチルエフェドリン塩酸塩
    • 気管支拡張作用があり、咳を鎮めたり呼吸を楽にします。
    • 副作用には動悸や手の震えがあり、心疾患のある方は特に注意が必要です。
    • 濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
  3. クロルフェニラミンマレイン酸塩
    • 鼻水やくしゃみ、痒みを抑えますが、鼻づまりにはあまり効きません。
    • この製品にはアレルギー性の咳を抑える目的で配合されているようです。
    • 眠気には注意してください。
    • 抗コリン作用により、眼圧上昇や排尿困難などの副作用が出る可能性があります。
  4. 無水カフェイン
    • 血管拡張性の頭痛や片頭痛の症状をやわらげます。
    • 覚醒作用があるので眠気防止にも。
    • 副作用として、不眠や振戦(手の震え)、動悸、めまいなどがあります。

他の成分の薬を探してる方はこちらから。
成分の一覧表

使い方(用法・用量)

年齢1回の服用量1日の服用回数
15歳以上4錠3回
12~14歳2錠3回

「食後」の指定はありません。

「1日3回」となっていますが、症状がある時だけ使う(頓用)というのでも良いかと思います。
4時間程度空けて「1日3回まで」ですね。調節して服用してみてください。

12歳未満の方は服用しないでくださいとのことです。
ジヒドロコデインが入っているからですね。以前は小児も使えたんですけど。

製品全体としての注意点

注意してほしいこと

いくつか注意点を書いておきます。

  • 眠気に注意:眠気が出る可能性があるので注意してください。
    • 服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」となっています。
    • 全然眠くならない方もいるのでそういう方は問題ないですね。
  • 喘息治療中の方
    • ジヒドロコデインは気道分泌の抑制と気管支を収縮させる作用もあるので、基本的には喘息には使いません(喘息発作には禁忌)。
    • 気管支拡張薬のメチルエフェドリンが入っているので、喘息を治療中の方はすでに服用(吸入)してる可能性があります。過剰摂取にならないように注意してください。
  • 服用回数:「過量服用・長期連用しないでください」となっています。
    • こういう咳止めは咳を一時的に鎮めるだけのものであり、咳の原因を治すものではありません。症状が長引いている場合は医師の診察を受けてください。
    • オーバードーズ(過剰摂取)の問題もあります。

薬物乱用について

近年、市販薬による薬物乱用が増えていますが、その筆頭がこの製品にも入っているジヒドロコデインのようです。
(73.5%がジヒドロコデイン含有製品というデータも)

市販薬は医療用医薬品と違い、店頭やネットで簡単に買えますしね。

一時的に多幸感があったり気分が落ち着いたり疲労感がなくなったりしますが、同じ量を服用していても効き目が薄くなっていき、服用量が増えていきます。

大量に飲めば麻薬と同じです。
オーバードーズ(過剰摂取)」というやつですね。
死亡例もあります

使われている製品は鎮咳去痰薬として売られているものが圧倒的に多いようで、この製品もよく名前が挙がりますね。
風邪薬よりも1日に使える成分量が多くなっています(1回10mg・1日30mg)。

ジヒドロコデイン単体でも薬物依存が形成されますが、風邪薬や鎮咳去痰薬の場合は他にも
・抗ヒスタミン薬
・プソイドエフェドリンのようなエフェドリン類
・カフェイン
などが入っていて、依存形成を助長します。
(この製品はまさに上3つが配合されていますね)

ただ、通常用量で問題になる事はまずないと思います。
必ず用法・用量を守って使用してください

妊娠・授乳中の使用について

大事な事ですが、対象者が限られるため折り畳みにしておきます。

クリック・タップで開きます。

妊娠中の方

この製品の説明書では
服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください
という書き方になっています。

ジヒドロコデインは妊娠28週以降は推奨されません
豪州ADECという基準ではAとなり、「今までの使用経験上では大丈夫だった」とのことです。
ただ、違う基準(Briggs基準)によるとリスク4の「妊娠28週以降は胎児への危険性が示唆される」という分類になっています。

メチルエフェドリンによって胎児が頻脈を起こす可能性もありますが、量が少なめなのであまり心配は要らないかと思います。

服用するにしても短期間の使用にとどめておいた方が無難だとは思います。
原則として、妊娠している方は市販薬を使わず、受診して医師に薬を処方してもらった方が良いと思います。
(というか、必ず受診してください)

授乳中の方

この製品の説明書には
授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること
と書いてあります。
ジヒドロコデインが入っているため、この記載があります。

とはいえ、そこまで心配する事もないかと思います。

Mothers’ Milk基準では、この製品中の成分で一番リスクの高いもので、

  • ジヒドロコデイン
  • クロルフェニラミン

の2つが「L3(概ね適合)」となっています。

ジヒドロコデインは基本的には「授乳を避けること」となっています。母乳に移行して乳児にモルヒネ中毒(傾眠、哺乳困難、呼吸困難等)が生じたとの報告があります。
母親に便秘や眠気などの副作用が出ている場合は授乳をやめた方が良いでしょうね。
似たようなものでデキストロメトルファンというのがあり、こちらは一応安全に使用可能となっています(効くかどうかは別)。

心配な方はジヒドロコデインが入っていない薬を選ぶようにしましょう。

メチルエフェドリンに関してはデータがありません。
基本的には「避けてください」と言われる事が多いですが、生後3ヵ月から使える製品も存在します。

「多くの薬は母親が飲んだ量の1%未満しか母乳中に移行しない」という事を考えると過剰な心配はいらないかと思います。

心配であれば授乳後に薬を服用すると良いでしょう。次の授乳までに薬はかなり分解されてます。
4時間程度時間を空けて、服用できるタイミングで服用してください。

心配な方は、薬を服用中は粉ミルクを使うという手もあります。

妊娠・授乳中の薬物治療に関して不安を持つ方も多いかと思います。
そういう方の相談に乗ってくれる機関があるのでそこのサイトのリンクを貼っておきます。
妊娠と薬情報センター:https://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

製品の特徴や利点、個人的な感想

悪名高き、と言ったら怒られるかもしれませんが、「ブロン」は薬物乱用に使われる市販薬の代名詞ですね。

といっても、市販されている他の鎮咳去痰薬と比べて成分量が多いってわけでもありません。
瓶包装なので楽なのかな?PTPだと1錠1錠押し出す手間があるし。よく分かりませんけど。

配合されている成分は

  • ジヒドロコデイン:30mg/日
  • メチルエフェドリン:50mg/日
  • クロルフェニラミン:8mg/日
  • カフェイン:90mg/日

となっています。

ジヒドロコデイン30mg/日は市販の咳止めとして最大量です。医療用と同じ量ですね。
これは中枢性の鎮咳薬ですが、痰の絡む咳には使いません。痰を硬くして出しにくくするので、症状が悪化する可能性があります。

副作用として眠気便秘吐き気などが出る可能性があります。
そういった症状が出る人はデキストロメトルファンの方が良いかもしれません。効くかどうかは別として。

メチルエフェドリンですが、この製品の量は他の咳止めと比べると多くはありません。他の製品だと75mg/日入っているものも多いですね。
といっても医療用でも1日75~150mgなので、50mg/日はやや少なめ、といったところでしょうか。
「たんの排出を促します」と書かれているのですが、その効果は期待しない方が良いでしょう。

クロルフェニラミンは抗ヒスタミン薬ですが、抗ヒスタミン薬は鼻水や痒みの他に、アレルギー性の咳(アトピー咳嗽、咽頭アレルギー)にも使えます。
鎮咳去痰薬には最大12mg/日配合できますが、この製品は8mg/日ですね。8mgでも市販の風邪薬(最大7.5mg)よりは多くなっています。眠気には注意してください。

ただ、通常は「咳が出る」と病院を受診して、初回にアレルギーの薬が処方されることはまずありません。
市販の咳止めにはクロルフェニラミンが入っている事が多いのですが、アレルギー性の咳だという事が確定してないのであれば必要のない成分です。

逆に、アレルギー性の咳であればジヒドロコデインは使いません。アトピー咳嗽の治療の基本は抗ヒスタミン薬とステロイドの吸入です。
喘息もアレルギー性の咳ですが、ジヒドロコデインは痰を硬くしたり気管支を収縮させるので基本的には禁忌となっています。

この製品はアレルギー性の咳も抑えることはできるけどアレルギー性の咳には使わない(使ってはいけない)成分も入っている、ということになるので注意してください。

また、抗ヒスタミン薬には「抗コリン作用」があります。

抗コリン作用」は、抗ヒスタミン薬では基本的に副作用として扱われます。
鼻水や涙を抑える効果がある一方で、口が渇いたり、便秘、排尿がしづらくなる、眼圧が上がるといった作用があります。

抗コリン作用は分泌全体を抑えてしまうので、痰が硬くなる可能性があります。
クロルフェニラミンのような第一世代の抗ヒスタミン薬は、痰の絡む咳が出る場合はあまり使わない方が良いでしょう。

また、アレルギー性の咳の場合は痰はあまり出ないはずです。痰が出るようなら他の疾患の可能性があります。

カフェインについてですが、製品の説明書には「他の成分の働きを助ける」と書いてます。
カフェインというかコーヒーは、昔は喘息の薬としても使われていました。
気管支拡張作用があるので咳にも使えないことはないのですが、量が少なすぎてあまり効果は期待できないでしょう。
90mgだとコーヒー1杯強でしょうか。1日でこの量なので、あまり意味はないですね。
クロルフェニラミンやジヒドロコデインによる眠気には多少は意味があるのかな、くらいです。

全体的に見ると、ジヒドロコデイン最大量+気管支拡張薬で効果は高いかと思います。
抗ヒスタミン薬が邪魔ですが、咳だけじゃなく鼻水も出てる人には良いかも。

・ジヒドロコデインは痰の絡む咳には使わない
・クロルフェニラミンが効果あるのは痰のあまり出ないアレルギー性の咳

ということで、この製品は基本的には「痰の絡まない咳」に対して使用してください。
去痰薬が入っていないので、痰の絡む咳に使うと症状が悪化する可能性があります。

中枢性の鎮咳薬は、あくまで痰の絡まない咳(乾性咳嗽)に使うものですが、痰の絡まない咳の原因もさまざまです。
咳喘息、アトピー咳嗽、胃食道逆流症、百日咳、気管結核、マイコプラズマ、薬によるものなどいろいろあります。

製品の説明書にも書いてある通り、5~6回使用しても良くならないようであれば受診して原因をはっきりさせた方が良いでしょう。

風邪の他の症状がほぼ良くなったのに咳だけが続いてる(感染後咳嗽)ときなどには使えます。
風邪をひいた時の咳に使う場合も、できれば頓用の方が良いでしょう。夜に咳が出て寝付けない時とか。
クロルフェニラミンは眠気が出やすいので眠れない時に良いかもしれないですね。それ目的で配合してるわけではないと思いますが。

痰が絡んでいるときはなるべく使わない方が良いのですが、もし使う場合はせめて去痰薬も一緒に使った方が良いかと思います(去痰薬も効果はいまいちかもしれませんけど)。

去痰薬は以下のような成分があります。
解説記事にその成分を含む製品一覧も載せてるので興味があれば見てみてください。
カルボシステイン
アンブロキソール
ブロムヘキシン
グアイフェネシン
グアヤコールスルホン酸

使用した方の口コミ・レビュー、値段など

「ものログ」というサイトの口コミです。

良い評価としては、

「飲みやすいし眠くなりにくい」
「咳は良く止まる」
「他の咳止めも試したけどこれが1番効くと思った」

といった具合。

否定的な意見としては、

「少々粒が大きいので飲みづらい」
「一瓶飲んだが、まだ咳が出る」
「値段もそこそこお高め」

といった感じ。

効果については満足してる方が多いですね。

眠くなりにくいという意見がありますが、これで眠くならない方は風邪薬で眠くなることはないでしょうね。
注意はしておいた方がいいでしょう。

1店舗につき1個まで、みたいな規制が面倒らしいです。
中毒者は何店舗も回って買うでしょうし、そんな規制してもどうしようもないと思いますけどね。

値段について

メーカーの希望小売価格(税込)を見ると、

60錠1,210円
84錠1,650円

ということですが、オープン価格となっていたりしてよく分かりません。

Yahooショッピング(送料含まず)で見てみると、

包装値段1日分に換算
60錠700~1,200円140~240円
84錠900~1,700円129~243円

※1日分のは1日12錠で計算
※2025年4月時点です。

こんな感じでした。極端に高いのは除外してます。
この製品はさすがに5箱セットとかはなかったですね。

風邪薬だとこの製品の成分構成に解熱鎮痛剤をちょっと足しただけで1日あたり300円とかもありますし、それほど高くはないかと思います。

この記事を読んで「買おうかな?」と興味を持たれた方へ

まとめ

この記事では『エスエスブロン錠』について、各成分の効果と注意点、個人的な感想、使用者のレビューなどをご紹介しました。

この製品はジヒドロコデインが最大量、かつ気管支拡張薬が入っています。
効果は期待できるかと思います。

ただ、「痰の絡まない咳」限定です。
ジヒドロコデインやクロルフェニラミンは痰を硬くして出しにくくする可能性があります。
せめて去痰薬が入っていると良かったのですが。

また、ジヒドロコデインのような中枢性の鎮咳薬は長期で使用するものではありません。
咳がひどくて眠れない、風邪の後に咳だけが長引いてる、といったときに頓用で使用するべきものです。

製品の説明書にも書いてある通り、過量服用・長期連用はしないでください。
ジヒドロコデイン高用量での乱用による中毒・死亡例も報告されています。
用法・用量は必ず守ってください

咳の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。

ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。

効果を感じられない場合や症状が改善しない場合は、医療機関を受診することをお勧めします

上の方でも紹介しましたが、再度リンクを貼っておきます

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