『アストフィリン®S』の特徴・効果・注意点【薬剤師が解説】

この製品は鎮咳去痰薬の分類では珍しく、気管支拡張薬がメインとなっていますね。

中枢性鎮咳薬としてはノスカピンのみ入っています。
ジヒドロコデインやデキストロメトルファンは入っていません。

ついでに去痰薬も入ってませんね。

痰の絡まない、アレルギー性の咳が出る方には良いかもしれません。
ただ、抗ヒスタミン薬は眠気の強めのものを使用しているので注意してください。

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記事の内容については公平かつ独立した立場で書かれています。

目次

基本情報

製造販売元:アルフレッサファーマ
(発売元はエーザイ)

・主な成分

成分名1日量(15歳以上の)はたらき
ジプロフィリン225mg気管支をひろげ、咳を鎮める
dl-メチルエフェドリン塩酸塩18.75mg気管支をひろげ、咳を鎮める
ノスカピン30mg咳を抑える
ジフェンヒドラミン塩酸塩45mg鼻水、くしゃみを抑える
スクロールできます
成分名1日量
(15歳以上の)
はたらき
ジプロフィリン225mg気管支をひろげ、咳を鎮める
dl-メチルエフェドリン
塩酸塩
18.75mg気管支をひろげ、咳を鎮める
ノスカピン30mg咳を抑える
ジフェンヒドラミン
塩酸塩
45mg鼻水、くしゃみを抑える

・包装

錠剤:45錠
(瓶包装)

各成分の効果・注意点

『アストフィリンS』の主要成分について、それぞれの効果と注意点を簡単にまとめています。

各成分名をタップ・クリックするとそれぞれの成分の簡単な解説記事にいきます。

  1. ジプロフィリン
    • 気管支拡張作用があり、咳を鎮めたり呼吸を楽にします。
    • カフェインや、マオウ(麻黄)を含む漢方薬との併用には注意してください。
  2. dl-メチルエフェドリン塩酸塩
    • 気管支拡張作用があり、咳を鎮めたり呼吸を楽にします。
    • 副作用には動悸や手の震えがあり、心疾患のある方は特に注意が必要です。
    • 濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
  3. ノスカピン
    • 中枢性の非麻薬性鎮咳薬で、咳を抑える効果があります。
    • 分泌を抑制せず、痰の排出も妨げられないそうです。
    • 副作用や依存性はあまりなく使いやすいですね。
  4. ジフェンヒドラミン塩酸塩
    • 鼻水やくしゃみをおさえます。かゆみ止めとしてもよく使われます。
    • 鎮静作用が強めです。眠気には注意してください。
    • 抗コリン作用により、眼圧上昇や排尿困難などの副作用が出る可能性があります。

他の成分の薬を探してる方はこちらから。
成分の一覧表

使い方(用法・用量)

年齢1回の服用量1日の服用回数
15歳以上1錠3回

「食後に」となっていますが、あまり気にしなくても良いでしょう。

「1日3回」となっていますが、症状がある時だけ使う(頓用)というのでも良いかと思います。
4時間程度空けて「1日3回まで」ですね。調節して服用してみてください。

15歳未満の方は服用しないでくださいとのことです。
15歳以上が1回1錠で、量の調節ができないからですね。

製品全体としての注意点

注意してほしいこと

いくつか注意点を書いておきます。

  • 眠気に注意:眠気が出る可能性があるので注意してください。
    • 服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」となっています。
    • この製品に入っているジフェンヒドラミンは鎮静作用が強めです。
  • 喘息治療中の方
    • 気管支拡張薬のジプロフィリンが入っていますが、喘息を治療中の方はすでに類似薬(テオフィリン)を服用してる可能性があります。過剰摂取にならないように注意してください。
  • 抗コリン作用:口の渇きや目のかすみ、眼圧上昇、排尿困難、便秘などの症状が出る可能性があります。
    • 気になる場合は減量または中止してください。
  • 服用回数:「5~6 回服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、医師等に相談を」となっています。
    • こういう咳止めは咳を一時的に鎮めるだけのものであり、咳の原因を治すものではありません。症状が長引いている場合は医師の診察を受けてください。

妊娠・授乳中の使用について

大事な事ですが、対象者が限られるため折り畳みにしておきます。

クリック・タップで開きます。

妊娠中の方

この製品の説明書では
服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください
という書き方になっています。

メチルエフェドリンやノスカピン、ジフェンヒドラミンは影響は少ないとされています。
メチルエフェドリンによって胎児が頻脈を起こす可能性もありますが、あまり心配は要らないかと思います。この製品に入っている量は特に少なめですしね。

ジプロフィリンはデータがありません。医療用の添付文書では
「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。テオフィリンの動物実験で催奇形作用等の生殖毒性が報告されている」
とのことです。

ただ、そのテオフィリンも豪州ADECという基準では「A」、Briggs基準でも「適合1」となっていて「妊娠中の投与に適する」となってますね。

ジプロフィリン自体で催奇形作用が報告されてるわけではないですし、そこまで心配は要らないかと思います。

ただ、服用するにしても短期間の使用にとどめておいた方が無難だとは思います。
原則として、妊娠している方は市販薬を使わず、受診して医師に薬を処方してもらった方が良いと思います。
(というか、必ず受診してください)

授乳中の方

この製品の説明書には
授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること
と書いてあります。

とはいえ、個々の成分について見てみると過剰に心配しなくてもいいかもしれません。

Mothers’ Milk基準では、この製品中の成分で一番リスクの高いもので、

  • ジフェンヒドラミン:L2(概ね適合)

となっています。

メチルエフェドリンに関してはデータがありません。
基本的には「避けてください」と言われる事が多いですが、生後3ヵ月から使える製品も存在します。

ジプロフィリンもデータがありません。インタビューフォームでは、
「授乳婦20名にジプロフィリン8mg/kgを筋肉内投与したところ、乳汁/血清 濃度比は2.08±0.52であった」
との記載があります。
母親の血液中よりも乳汁の方が濃度が高くなったんですね。

とはいえ、「多くの薬は母親が飲んだ量の1%未満しか母乳中に移行しない」という事を考えると過剰な心配はいらないかと思います。

心配であれば授乳後に薬を服用すると良いでしょう。次の授乳までに薬はかなり分解されてます。
4時間程度時間を空けて、服用できるタイミングで服用してください。

心配な方は、薬を服用中は粉ミルクを使うという手もあります。

妊娠・授乳中の薬物治療に関して不安を持つ方も多いかと思います。
そういう方の相談に乗ってくれる機関があるのでそこのサイトのリンクを貼っておきます。
妊娠と薬情報センター:https://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

製品の特徴や利点、個人的な感想

この製品の特徴は2つ。

  • 気管支拡張薬のジプロフィリンがメイン
  • 抗ヒスタミン薬にジフェンヒドラミンを使っている

ということでしょうか。

ジプロフィリンはテオフィリン系の気管支拡張薬で、β₂刺激薬のメチルエフェドリンとは作用が異なります。
併せて使うとより効果的ではあると思います。
喘息の人にもこの系統の2種類は使いますしね(ジプロフィリンはまず使わないけど)。

ジプロフィリンの量はそれなりで、1日225mgとなっています。
医療用の咳止めの「カフコデN配合錠」では1日120mgです。医療用の倍近く入っていますね。
かといって危険性が高いというわけではありません。注射では1回に300~600mg使います。

で、ジプロフィリンとは作用の違うメチルエフェドリンも入ってはいるのですが、量が少なめ。
市販の鎮咳去痰薬には最大1日75mg配合できるのですが、この製品は18.75mgです。

鎮咳去痰薬の基準では、ジプロフィリンとメチルエフェドリンを同時に配合する場合、それぞれの量が制限されます。
ジプロフィリンの配合量/最大量+メチルエフェドリンの配合量/最大量が、1を超えてはいけない、となっています。

この製品だとジプロフィリンが225mg/300mg=0.75となり、
メチルエフェドリンは(1-0.75)×75mg=18.75mgまでしか配合できません。

この製品はジプロフィリンに重きを置いて、メチルエフェドリンはその補助に回ってる感じですね。

中枢性鎮咳薬のノスカピンも入っていますが、これも補助的ですね。
鎮咳去痰薬の最大量は1日60mgですが、この製品には1日30mg。総合感冒薬でも大体の製品には1日48mg入っています。
鎮咳去痰薬の分類の製品なのに総合感冒薬より少なめ。

抗ヒスタミン薬としては市販薬では珍しくジフェンヒドラミンです。
確認できた中では、鎮咳去痰薬ではこの製品のみです。
これがなぜあまり使われないかというと鎮静作用が強いからでしょうね。つまり眠くなりやすいです。

総合感冒薬でも『ベンザブロックYASUMO』のように眠りを重視した製品に使われます。
「ドリエル」なんていう睡眠改善薬の主成分もジフェンヒドラミンです。
本当の睡眠導入剤を市販するわけにはいかないので、抗ヒスタミン薬の副作用を利用してるわけですね。
(ただ鎮静作用の耐性形成は早く、4日目だとプラセボと変わらないとか「Tolerance to daytime sedative effects of H1 antihistamines」より)

この製品に入っている量はそれほど多いわけではないのですが、眠気には注意してください。

また、第一世代の抗ヒスタミン薬のため抗コリン作用にも注意してください。

抗コリン作用」は、抗ヒスタミン薬では基本的に副作用として扱われます。
鼻水や涙を抑える効果がある一方で、口が渇いたり、便秘、排尿がしづらくなる、眼圧が上がるといった作用があります。

抗コリン作用は分泌全体を抑えてしまうので、痰が硬くなる可能性があります。
第一世代の抗ヒスタミン薬は抗コリン作用が強く、痰の絡む咳が出る場合はあまり使わない方が良いでしょう。

ただし、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患には吸入の抗コリン薬は使用します。吸入に使われる抗コリン薬は気管支拡張作用が強く、分泌も抑えはするのですが痰への影響はほぼ気にならないそう。むしろ気道が広がることで痰が出しやすくなるみたいですね。痰が気になる人にはもちろん去痰薬も使われますけど。

抗ヒスタミン薬はアレルギー性の咳に使いますが、アレルギー性の咳の場合は痰はあまり出ないはずです。痰が出るようなら他の疾患の可能性があります。

この製品はどういう時に使えばいいのかな?
痰が絡む咳にはあまりお勧めできません。風邪のときに使うのもちょっと違いますね。

毎年同じ季節に症状が出る方はアレルギー性の咳の可能性が高いので、そういう一時的なものには良いかもしれません。
アレルギー性の咳の場合、中枢性の鎮咳薬は使いません。この製品にはノスカピンが入ってますが、量も少ないしあまり関係ないと思って良いでしょうね。

あとは、

  1. もともと喘息があって(確定診断を受けてる)
  2. 今は大体落ち着いてるけどたまに症状が出る
  3. 病院に行くほどでもないかな…

そんな感じのときでしょうか。
もちろん事前に医師と相談して「市販薬で対処してもいいよ」と言われてる場合ですけど。

といっても、喘息の人はたぶん病院でリリーバー(発作時に使うメプチンエアーとか)を処方してもらっているはずなのでそれを使った方が良いと思いますし、もし持ってないなら貰っておいた方が良いでしょう。

仮に市販薬を使ったとしても、1回飲んで改善しないようなら早めに受診した方が良いかと思います。

この製品の説明書には「喘鳴(ぜーぜー、ひゅーひゅー)をともなうせき、たんに」と書いてますが、季節性のものでなかったり、気管支喘息の確定診断を受けたことがない人は喘鳴があるなら受診してください(もちろん喘息の方も症状が治まらないなら受診を)。
喘鳴があるということは、気道が狭くなっているということです。放っておいていい状態ではありません。

診断を受けていない人が「喘息っぽい」症状で自己判断で使うのも避けてください。

喘鳴の原因はいろいろあります。気管支喘息の他に、肺がん、気管支拡張症、うっ血性心不全など重大な疾患が隠れている場合もあります。
気管支喘息もちゃんと治療しないと命にかかわることがある病気です。現在でも多くの方が喘息で亡くなっています。

製品の説明書にも書いてある通り、5~6回使用しても良くならないようであれば原因をはっきりさせるためにも一度受診した方が安心ですね。喘鳴があるならなおさらです。

というか、この製品は別に喘鳴がなくても使って良いと思います。
ノスカピンはジヒドロコデインやデキストロメトルファンと違って依存性もないとされてますし、痰を硬くもしないようです。効果は弱めだと思いますが。

痰の絡む咳が出る方はこの製品は選択肢には入らないと思います。
効果は弱いかもしれませんが、去痰薬を使った方がまだ良いでしょうね。

去痰薬は以下のような成分があります。
解説記事にその成分を含む製品一覧も載せてるので興味があれば見てみてください。
カルボシステイン
アンブロキソール
ブロムヘキシン
グアイフェネシン
グアヤコールスルホン酸

使用した方の口コミ・レビュー、値段など

「ものログ」というサイトの口コミです。

良い評価としては、

「一時しのぎでも効いてくれて助かる」
「咳は出るけどヒューヒューはおさまった」
「量も入っているのでコスパもいい」

といった具合。

否定的な意見としては、

「発作時に飲んだら去痰できず逆に苦しくなって大変」
「飲んだ後30分後くらいに猛烈な眠気」

といった感じ。

評価は良いですね。効かないという意見はあんまりなかったです。

眠気はちょっと気をつけた方が良いかもしれませんね。
風邪薬などで眠くなりやすい方は、違う抗ヒスタミン薬が入っているものを選んだ方が良いかもしれません。

値段について

メーカーの希望小売価格(税込)を見ると、

45錠1,738円

ということでした。

Yahooショッピング(送料含まず)で見てみると、

包装値段1日分に換算
45錠1,300~2,000円87~133円

※1日分のは1日3錠で計算
※2025年4月時点です。

こんな感じでした。Amazonや楽天だと違うかもしれませんが。

鎮咳去痰薬としてはかなり安い方だと思います。

この記事を読んで「買おうかな?」と興味を持たれた方へ

まとめ

この記事では『アストフィリンS』について、各成分の効果と注意点、個人的な感想、使用者のレビューなどをご紹介しました。

この製品は、

  • テオフィリン系のジプロフィリンがメイン
  • 抗ヒスタミン薬としてジフェンヒドラミンを使ってる

というのが特徴でしょうか。

他の咳止めはジヒドロコデインやデキストロメトルファンがメインですが、この製品は気管支拡張薬がメインですね。
ジプロフィリンがメインのため、メチルエフェドリンは量が少なめとなっています。

中枢性鎮咳薬としてはノスカピンが入っていますが、これはジヒドロコデインやデキストロメトルファンよりも弱めかと。依存性がなく、痰を硬くはしないようなので使いやすくはありますね。

抗ヒスタミン薬はなぜかジフェンヒドラミン。
ジプロフィリンに覚醒作用があると言っても、眠気は強めかと思います。注意してください。

アレルギー性の咳に一時的に使うには使いやすいかと思います。
アレルギー性の咳の場合は中枢性の鎮咳薬は使いません。この製品にはノスカピンが入ってますが、量も少ないしあまり気にしなくても良いでしょう。

ただ、「痰の絡まない咳」だけにした方が良いと思います。
気管支拡張薬は確かに痰を出しやすくするのですが、第一世代の抗ヒスタミン薬は痰を硬くして出しにくくします。
レビューにもありましたが、痰が出せず苦しむ事にもなりかねません。

値段は安めなので、合う人には良い製品かな、と思います。

咳の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。

ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。

効果を感じられない場合や症状が改善しない場合は、医療機関を受診することをお勧めします

上の方でも紹介しましたが、再度リンクを貼っておきます

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