「ヨウ化イソプロパミド」の解説 
作用・使用上の注意・製品一覧

「ヨウ化イソプロパミド」についての簡単な解説です。

目次

ヨウ化イソプロパミドを含む市販薬の製品一覧

解説記事を書いたことのある製品を載せています。

※ここでご紹介している製品がすべてではありません。
あと、すでに製造中止になっている製品もあるかもしれません。
そのへんはご了承くださいますようお願い申し上げます。

風邪薬(総合感冒薬)

クリック・タップで開きます。

製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。

製品名1日あたりの成分量
エスタックEXネオ6mg
新コンタックかぜ
EX持続性
5mg
パブロンセレクトN6mg
ベンザブロックS6mg
ベンザブロックS
プレミアム
6mg
ルルアタックNX
プレミアム
6mg

市販の風邪薬では1日最大6mgとなっています。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より

総合感冒薬(かぜ薬)の一覧表もあるので見てみてください。
製品ごとの主要成分も載せています。

分類・作用機序

ヨウ化イソプロパミドの化学構造式

KEGG DRUGより

分子量は480.42。
ヨウ素(I)の原子量は126.9なので、約26.4%がヨウ素ですね。

ヨウ化イソプロパミド6mg中にヨウ素は約1.6mg含まれていることになります。たぶん。

分類など

抗コリン薬」です。
「副交感神経遮断薬」とか「ムスカリン受容体拮抗薬」とも言います。

その中でも「四級アンモニウム化合物」というものになります。

作用機序

きつね作です。

副交感神経の節後線維終末というところから放出されたアセチルコリンがムスカリン受容体にくっつくことで副交感神経刺激作用が起きます。

抗コリン薬は競合的にこれをブロックします。

交感神経と副交感神経の働きはシーソーのような関係にあります。
一方が優位になるともう一方の働きは相対的に弱まります。

副交感神経が遮断されると交感神経の働きが相対的に優位になるため、副交感神経遮断薬(抗コリン薬)は交感神経刺激薬と似たような作用を示す場合があります。

効果や使用方法

効果

副交感神経の働きを抑えることでいろいろな効果を示します。

・散瞳(瞳孔を広げる)
・胃や腸の動きを抑える
・胆道の収縮を抑える
・気管支の収縮を抑える
・心拍数を上げる
・膀胱の緊張を緩める
・分泌を抑える
などの効果があります。

他にもパーキンソンに使ったりもしますね。

副交感神経の働きを抑える作用を「抗コリン作用」と言いますが、これは副作用として問題になる場合があります。
これについては後述します。

医療用の使用例

抗コリン薬がよく使われるのは、
・過活動膀胱
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・胆石による痛み
・パーキンソン
・散瞳目的
あたりでしょうか。

ヨウ化イソプロパミドは医療用医薬品としては存在しません。
「四級アンモニウム」の医療用医薬品はあるのですが、これは基本的には胃腸の過剰な動きを抑えたり胃酸を抑えたり、あとは胆石の痛みなど消化器系に使う事が多いですね。
(「ブスコパン(ブチルスコポラミン)」、「コリオパン」など)

個人的にはお腹が痛い時によく使います。

消化性潰瘍や胃酸過多にも適応はあるのですが、今は他に適した薬があるので抗コリン薬はあまり使われないですね。

市販薬では、風邪薬・鼻炎薬に鼻水や涙を抑える効果を期待して配合されていますね。
基本的に医療用ではそういう使い方はしません。効果はあります。

現在主流で使われている第二世代抗ヒスタミン薬の売りは、第一世代抗ヒスタミン薬で問題になる抗コリン作用を少なくした事でもあるので…あえて抗コリン薬を追加するのも変な話ですね。

鼻アレルギー診療ガイドラインでは、治療に使われるのは主に「第二世代抗ヒスタミン薬」「ロイコトリエン拮抗薬」「鼻噴霧用ステロイド」となります。
(「メディエーター遊離抑制薬」や「トロンボキサンA2拮抗薬」などもありますが、あまり使っているのを見た事がありません)
オプションとして「血管収縮剤の点鼻薬」ですね。これは頓用となります。

あとは『ストッパ』のような下痢止めでしょうか。
これは自分の常備薬でもあります。口がすごく渇くけど。

用法・用量

市販薬では、
風邪薬:1回2mg・1日3回(1日6mg)
の製品が多いですね。

鼻炎用内服薬だと最大1日7.5mgまで使えるようです。

医療用ではヨウ化イソプロパミドは存在しません。
ただ、日本製薬団体連合会(日薬連)というところの資料では、1回3mg、1日2~3回となっています。
最大で1日9mgみたいですね。

使用上の注意点

医療用で存在しないためデータが無いので、同じ四級アンモニウムである「ブスコパン」を参考に書かせていただきます。

いわゆる「抗コリン作用」が問題となります。
抗コリン薬なので抗コリン作用があるのは当たり前ですけど。

禁忌

「ブスコパン」では、

  • 出血性大腸炎
  • 閉塞隅角緑内障
  • 前立腺肥大による排尿障害
  • 重篤な心疾患
  • 麻痺性イレウス

の疾患や状態にある方は禁忌となっています。

緑内障や前立腺肥大、心疾患などがある人はすでに治療中だと思われるので、主治医に聞いてみるといいでしょう。
出血性大腸炎や麻痺性イレウスの状態にある人が市販薬を使う事はないと思います(たぶん入院してる)。

大体の市販薬は「医師・薬剤師に相談」となっていて禁忌にはなっていません。
実際、排尿障害くらいであれば使用する事はよくありますね。

また、細菌性下痢には原則禁忌となっています。
下痢止めのような腸の動きを抑えるものは細菌の排出を遅らせるため基本的には使いません。
あまりに辛かったら使うかもですが。

副作用

出やすい副作用は口渇便秘でしょうか。

医療用の「ブスコパン」のインタビューフォームによると、

  • 口渇:9.4%
  • 便秘:4.4%
  • 眼の調節障害(散瞳):1.7%
  • 心悸亢進(動悸):1.4%
  • 鼓腸:0.65%

とのことです。

抗コリン薬全般的に、上から4つの副作用には注意してください。
口渇くらいなら我慢しても良いでしょうけど。

相互作用

いくつか併用注意のものがあるので載せておきます。

併用注意

スクロールできます
薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
抗コリン作用を有する薬剤
 三環系抗うつ剤
 フェノチアジン系薬剤
 モノアミン酸化酵素阻害剤
 抗ヒスタミン剤等
抗コリン作用(口渇、便秘、眼の調節障害等)が増強することがある。併用により本剤の作用が増強されることがある。
ドパミン拮抗剤
 メトクロプラミド等
相互に消化管における作用を減弱するおそれがある。本剤は消化管運動を抑制するため、ドパミン拮抗剤の消化管運動亢進作用と拮抗する。

併用注意についての簡単な説明

クリック・タップで開きます。

・三環系抗うつ剤はそのまま抗うつ剤ですね。

・フェノチアジン系薬剤は統合失調症に使われる薬ですが、鎮静目的でも使われます。

・モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬はパーキンソン病に使われています。
パーキンソンの薬の調節は結構シビアなので、抗コリン薬の入った市販薬はあまり飲まない方が良いでしょうね。

・抗ヒスタミン剤はアレルギーの薬です。
この中での使用頻度は抗ヒスタミン薬が圧倒的に多いと思いますが、市販薬では一緒に配合されている事もよくあります。
便秘や口渇等あれば減量して様子をみても良いでしょう。

・ドパミン拮抗剤は精神系と消化器系に使うものがありますが、ここでは消化器に使うものを指します。
主に吐き気止めですね。
ドパミン拮抗薬と抗コリン薬は逆の作用をするため、両方の作用が弱まってしまいます。
吐き気と下痢、両方ある場合は感染性胃腸炎の可能性もあるし、下痢止めとして抗コリン薬は使わない方が良いでしょうね。

ここに書いてあることはあまり気にしなくて大丈夫ですが、上記の薬を服用中の方は「一応そういう可能性もあるんだな」と思っておいてください。

他の成分についてはこちらから。
成分の一覧表

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