「アセトアミノフェン」の解説 
作用・使用上の注意・製品一覧

「アセトアミノフェン」についての簡単な解説です。

目次

アセトアミノフェンを含む市販薬の製品一覧

解説記事を書いたことのある製品を載せています。

※ここでご紹介している製品がすべてではありません。
あと、すでに製造中止になっている製品もあるかもしれません。
そのへんはご了承くださいますようお願い申し上げます。

解熱鎮痛剤

アセトアミノフェンを含む解熱鎮痛剤については下の記事に書いています。
アセトアミノフェンについてこの記事より詳しい解説も書いてるので、興味のある方は読んでみてください。

風邪薬(総合感冒薬)

クリック・タップで開きます。

製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。

製品名1日あたりの成分量その他の解熱鎮痛剤
エスタック総合感冒900mgなし
新コンタックかぜ総合900mgなし
新コンタック総合かぜ薬
トリプルショット
500mgエテンザミド:400mg
新ルルAゴールドDXα900mgなし
新ルルAゴールドs900mgなし
新ルル-A錠s900mgなし
ストナジェルサイナスEX900mgなし
ストナファミリー900mgなし
ストナプラスジェルEX900mgなし
パイロンPL360mgサリチルアミド:648mg
パイロンPL Pro600mgサリチルアミド:1080mg
パブロンゴールドA900mgなし
パブロンSゴールドW900mgなし
プレコール持続性カプセル450mgイソプロピルアンチピリン:300mg
ベンザブロックIPプレミアム180mgイブプロフェン:360mg
ベンザブロックS900mgなし
ベンザブロックSプレミアム900mgなし
ルルアタックFxa450mgイソプロピルアンチピリン:300mg

アセトアミノフェンが1日量として900mg入っていると、ルール上、他の解熱鎮痛剤を入れる事ができません。
なので、他のが入っているのはアセトアミノフェンの量が少なくなっています。

「アセトアミノフェン900mg/日だと弱い」という方はここに載っている製品は使わない方が良いでしょう。
2種の解熱鎮痛剤が入っているのは結局はどちらも中途半端です。

例えばイブプロフェンが1日600mg入っているものなどを試してみると良いかと思います。

総合感冒薬(かぜ薬)の一覧表もあるので見てみてください。
製品ごとの主要成分も載せています。

分類・作用機序

「カロナール」の添付文書より

「アセトアミノフェン(acetaminophen)」という名称は主に日本やアメリカで使用されていて、そのほかの国では国際一般名(INN)である「パラセタモール(paracetamol)」という名称が使用されています。

分類

解熱鎮痛剤」です。

よく間違われますが、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)ではありません
(NSAIDsで有名な薬だと「ロキソニン」とか「ボルタレン」とかがありますね)

たぶん一番使われている解熱鎮痛剤だと思います。

作用機序

解熱鎮痛剤としてはかなり古い歴史があるのですが、いまだに作用機序は明らかになっていません。

NSAIDsは末梢において効果を発揮しますが、このアセトアミノフェンは中枢で働くと考えられています。
医療用医薬品の「カロナール」の添付文書にはこう記載されています。

作用機序としては、中枢神経系に作用し、プロスタグランジン合成、カンナビノイド受容体系又はセロトニン作動系などに影響を及ぼすと考えられている。

100年以上も使われているのにどう作用してるのか分からないってすごいですね。

効果や使用方法

効果

中枢(脳や脊髄)において痛みを感じにくくしたり熱を下げたりします。
基本的には平熱より下がる事はありません。

また、NSAIDsと違い抗炎症作用はほぼありません
NSAIDsとの違いを簡単に表にしておきます。

アセトアミノフェンNSAIDs
解熱作用ありあり
鎮痛作用ありあり
抗炎症作用ほぼなしあり
主な副作用肝障害消化性潰瘍
腎障害

NSAIDsは胃に負担がかかるのが問題になりますが、アセトアミノフェンは胃に負担がかかりにくく使いやすいですね。

医療用の使用例

小児から高齢者まで、あらゆる痛み・解熱に使っています。
癌性の疼痛にも使われます。

作用機序が分からないのにもかかわらず、使われてる歴史が長く、その安全性・危険性はほぼ分かってて使いやすいからでしょうね。

「痛みや熱があったらまずはこれ。ダメなら違う薬」という感じです。
誰しも一度は飲んだことがあるのではないでしょうか。

用法・用量

市販薬の場合だと、風邪薬でも解熱鎮痛剤でも1日900mgまでとなっています。

医療用の場合は、
・鎮痛目的:1回300~1,000mg、投与間隔は4~6時間、1日4,000mgまで
・解熱目的:1回300~500mg頓用、原則1日2回、1日最大1,500mg
となっています。

1日900mgまでだとちょっと少ないですが、ルール上仕方ないですね。

NSAIDsと違い胃への負担は軽めなので食後でなくても大丈夫です。

小児の場合

アセトアミノフェンは安全性が高く、小児でもよく使われます。
というか、小児に解熱鎮痛薬を使う場合は、基本的にはアセトアミノフェンにしておいた方が良いかと思います。

用量は、
・体重1kgあたり1回10~15mg
・1日の総量として60mg/kgを限度
となっています。

体重ごとの目安はこのようになります。

体重1回用量
5㎏50~75mg
10kg100~150mg
20kg200~300mg
30kg300~450mg

これを見ると、成人で1回300mgはやっぱりちょっと少ないですね。

使用上の注意点

副作用

アセトアミノフェンは副作用やアレルギーを起こすことが少なく、安全性はかなり高い薬です。
用量を守っていれば問題になることはほぼないでしょう。

といっても、全く安全というわけでもありません。
いくつか注意点を書いておきます。

肝障害

肝障害が問題になることがあり、
重篤な肝障害のある方には禁忌となっています。

重篤な肝障害でなくても、肝機能が悪い方は悪化する可能性があります。

アセトアミノフェンは肝臓で代謝(体の中で別の物質に変わること)されますが、その際に一部がNAPQIという物質になります。
このNAPQIが肝障害の原因とされています。

通常、NAPQIはグルタチオンという物質によって代謝され、メルカプツール酸として尿から排泄されるのですが、NAPQIが増えてくるとグルタチオンが足りなくなって代謝が間に合わなくなります。
で、肝臓に負担がかかります。

アセトアミノフェンを過剰摂取した場合もそうですが、絶食・低栄養状態・摂食障害等によるグルタチオン欠乏、脱水症状のある方でも肝障害は起こりやすくなります。
また、高齢者の方もグルタチオンの合成能が低下しているため肝障害が出やすくなるとされています。

医療用医薬品では、
1日総量1500mgを超す高用量で長期投与する場合には、定期的に肝機能等を確認するなど慎重に投与すること」
「高用量でなくとも長期投与する場合にあっては定期的に肝機能検査を行うことが望ましい」
となっています。

肝機能に問題がある方は注意してください。

消化性潰瘍

NSAIDsと違い胃への負担はそれほどなく、問題になる事はあまりありません

以下の3つを、それぞれ1回650mg、1日4回、計2,600mg投与して糞便中への失血量を比較した試験があります。
・アセトアミノフェン
・アスピリン
・バファリン(アスピリンに制酸剤を配合)

アスピリン、バファリンは失血量が増えましたが、アセトアミノフェンは失血量の増加は認められなかったという結果が出ています。

NSAIDsと一緒にされて「胃に負担がかかる」と言われることがありますが、あまり気にしなくて大丈夫です。
病院でも胃薬なしで処方されることが多いですね。

アスピリン喘息

NSAIDsにより喘息発作が誘発されることがあり、これをアスピリン喘息といいます。

気管支喘息の10%くらいはこのアスピリン喘息とも言われていて、NSAIDsの副作用としては無視できないものですね。
ちなみに、「アスピリン喘息」とは言いますが、アスピリン以外のNSAIDsでも起きます。
飲み薬だけでなく、シップや塗り薬でも起きます。

アセトアミノフェンの添付文書にも
「アスピリン喘息の発症にプロスタグランジン合成阻害作用が関与していると考えられ、症状が悪化又は再発を促すおそれがある」
と書かれてはいるのですが、NSAIDsよりは起きにくいですね。

「アスピリン喘息又はその既往歴のある患者に対する1回あたりの最大用量はアセトアミノフェンとして300mg以下とすること」
とも書かれています。
300mgから始めて問題ないようであれば増量してみてもいいでしょう。

体調によっても変わってくるので、必ず少量から始めてみてください。

気管支喘息の方が解熱鎮痛剤を使う場合はアセトアミノフェンにしておいた方が無難かと思います。

相互作用

併用禁忌のものはありませんが、いくつか併用注意のものがあります。

医療用の「カロナール」の添付文書に書いてあるものをそのまま載せておきます。

スクロールできます
薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
リチウム製剤
 炭酸リチウム
他の非ステロイド性消炎鎮痛剤(インドメタシン、イブプロフェン等)で、リチウムとの併用によりリチウムの血中濃度が上昇し、リチウム中毒を呈したとの報告がある。非ステロイド性消炎鎮痛剤は腎のプロスタグランジン合成を抑制することにより、炭酸リチウムの排泄が減少し、血中濃度が上昇すると考えられている。
チアジド系利尿剤
 ヒドロクロロチアジド等
他の非ステロイド性消炎鎮痛剤(インドメタシン等)で、チアジド系利尿剤の作用を減弱することが報告されている。非ステロイド性消炎鎮痛剤は腎のプロスタグランジン合成を抑制して水、塩類貯留が生じ、チアジド系利尿剤の排泄作用に拮抗すると考えられている。
アルコール(飲酒)アルコール多量常飲者がアセトアミノフェンを服用したところ肝不全を起こしたとの報告がある。アルコール常飲によるCYP2E1の誘導により、アセトアミノフェンから肝毒性を持つN-アセチル-p-ベンゾキノンイミンへの代謝が促進される。
クマリン系抗凝固剤
 ワルファリンカリウム
クマリン系抗凝血剤の作用を増強することがあるので、減量するなど慎重に投与すること。本剤が血漿蛋白結合部位において競合することで、抗凝血剤を遊離させ、その抗凝血作用を増強させる。
カルバマゼピン
フェノバルビタール
フェニトイン
プリミドン
リファンピシン
イソニアジド
これらの薬剤の長期連用者は、肝薬物代謝酵素が誘導され、肝障害を生じやすくなるとの報告がある。
これらの薬剤の代謝酵素誘導作用により、アセトアミノフェンから肝毒性を持つN-アセチル-p-ベンゾキノンイミンへの代謝が促進される。
抗生物質
抗菌剤
過度の体温下降を起こす頻度が高くなることから、併用する場合には観察を十分に行い、慎重に投与すること。機序は不明である。

併用注意についての簡単な説明

クリック・タップで開きます。

・リチウム製剤は気分安定剤です。躁病や双極性障害などに使われます。
アセトアミノフェンはNSAIDsではないのであまり心配いらないですね。実際、よくカロナールは使われています。

・チアジド(サイアザイド)系利尿剤は高血圧に使われます。
これもNSAIDsに関するものですね。あまり気にしなくて大丈夫です。

・アルコール(飲酒)は一応注意ですが、常識的な範囲ではそれほど問題になることはないはずです。
アセトアミノフェン4.8gとお酒を一緒に飲んで急性肝不全で亡くなった例があります
また、市販の風邪薬と大量のお酒を飲ませて死亡させた事件があったみたいです(本庄保険金殺人事件)。
ちなみに、ここの機序のとこに書かれている「N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン」がさきほどの「NAPQI」です。

・ワルファリンは脳梗塞や心筋梗塞に使われる薬です。
出血傾向が見られたら、アセトアミノフェンを減量または中止した方が良いでしょう。

・カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドンはてんかん
・リファンピシンとイソニアジドは結核
に使われる薬です。
常用量のアセトアミノフェンであれば問題ないと思いますが、定期的に血液検査で肝機能を見てもらった方が良いでしょうね。

・抗生物質は細菌性感染症で使われます。ウイルス性疾患である風邪には通常は使われません。
併用する事で過度に体温が低下、と書いてますが…こういう事例は見た事がありません。
アセトアミノフェンの使用で平熱より下がることはないはずなんですよね。
一部の抗生物質とNSAIDsでは痙攣発作が出たりするので、やっぱりアセトアミノフェンの方が使いやすいかと思います。

ここに書いてあることはあまり気にしなくて大丈夫ですが、上記の薬を服用中の方は「一応そういう可能性もあるんだな」と思っておいてください。

一般的に注意した方が良いのはアルコール(飲酒)ですね。飲みすぎ注意。
普通に飲む分(人によるけど)なら特に問題になる事はないので、あまり心配しなくてもOKです。

薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)について

市販の解熱鎮痛剤を頭痛に使う方も多いかと思います。
たまになら良いのですが、連用していると薬が効かなくなってきたり、頭痛が慢性化することがあります。

その場合、「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」の可能性があります。

市販薬では「アスピリン」、「アセトアミノフェンカフェインの併用」などが原因となることが多いですが、他の鎮痛剤が原因になる事もあります。

以下の症状に当てはまる場合は注意が必要です。

・頭痛が月に15回以上ある
・月に10回以上頭痛薬を飲んでる
・薬を飲んでも効かなくなってきた
・朝起きた時から頭痛がある

これらが当てはまる人は、頭痛外来や脳外科などを受診してみてください。

他の疾患の可能性もあるので、頭痛が続いてる場合は必ず医師に相談してください。

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