『パイロンPL』は医療用の「PL配合顆粒」と同じ成分構成になっているのが特徴ですね。
「PL顆粒」と聞けば「あ、これ知ってるかも?」という方も多いのではないでしょうか。
『パイロンPL』と『パイロンPL Pro』の2種類があり、それぞれ錠剤タイプと顆粒タイプがあります。
(※『パイロンPL錠 ゴールド』というのもありますが、こちらは別物になるので別の記事にします)
『PL』も『PL Pro』も成分の量は違いますが構成は同じになるので、一つの記事でまとめて解説します。
医療用と同じだからといっても、それが利点になるとは限りません。
基本情報
・製造会社:シオノギヘルスケア(塩野義製薬の子会社)
・主な成分
成分名 | パイロンPL 1日量(15歳以上の) | パイロンPL Pro 1日量(15歳以上の) | はたらき |
---|---|---|---|
サリチルアミド | 648mg | 1,080mg | 熱をさげ、痛みを和らげる |
アセトアミノフェン | 360mg | 600mg | 熱をさげ、痛みを和らげる |
無水カフェイン | 144mg | 240mg | 頭痛・頭重感を和らげる |
プロメタジン メチレンジサリチル酸塩 | 32.4mg | 54mg | 鼻水、くしゃみを抑える |
・包装
パイロンPL
- 錠剤:24錠、48錠(PTP包装)
- 顆粒:12包、24包
パイロンPL Pro
- 錠剤:24錠、36錠(PTP包装)
- 顆粒:12包、18包
各成分の効果・注意点
『パイロンPL』と『パイロンPL Pro』の4種の主要成分について、それぞれの効果と注意点を簡単にまとめています。
- サリチルアミド
- NSAIDsの一種。痛みや熱、炎症を抑えます。
- 胃に負担がかかることがあります。アスピリン喘息にも注意を。
- サリチルアミドが入っている市販薬は、おそらく『パイロンPL』シリーズだけです。
- アセトアミノフェン
- 痛みや熱を中枢において抑えますが、抗炎症作用はほぼありません。
- いわゆる「NSAIDs」には含まれません。胃への負担も少なめです。
- 安全性は高いですが、肝障害のリスクがあります。特にアルコール多飲者は併用に注意を。
- 無水カフェイン
- 血管拡張性の頭痛や片頭痛の症状をやわらげます。
- 覚醒作用があるので眠気防止にも。
- 副作用として、不眠や振戦(手の震え)、動悸、めまいなどがあります。
- プロメタジンメチレンジサリチル酸塩
- 鼻水やくしゃみ、痒みを抑えますが、鼻づまりにはあまり効きません。
- 鎮静作用が強めです。特に眠気には注意してください。
- 抗コリン作用により、眼圧上昇や排尿困難などの副作用が出る可能性があります。
- プロメタジンが入っている市販薬は、おそらく『パイロンPL』シリーズだけです。
使い方(用法・用量)
成人(15歳以上)は、以下の用法・用量になります。
製品 | 剤形 | 1回の服用量 | 1日の服用回数 |
---|---|---|---|
パイロンPL | 錠 | 2錠 | 3回 |
顆粒 | 1包 | 3回 | |
パイロンPL Pro | 錠 | 2錠 | 4回 |
顆粒 | 1包 | 4回 |
「食後なるべく30分以内に」となっています。
サリチルアミドで胃に負担がかかる場合もあるので一応注意してください。でもあまり心配は要らないです。
15歳未満は服用しないでくださいとのことです。
プロメタジンが入っているからのようです(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)。
ただ、医療用の「PL配合顆粒」には「幼児用PL配合顆粒」というのもあって、こちらは2歳から使えます。
成分構成も同じ。量が違うだけですね。
『パイロンPL Pro』は医療用の「PL配合顆粒」と同じ成分量になっています。
あえて用法も同じにしているようですが、別に4回飲まないとダメという事ではありません。
医療用の「PL配合顆粒」も1日3回で処方されることが多いですね。
症状や副作用に応じて調節してみてください。
ただなんていうか、設計がおかしいというか、『PL』よりも『PL Pro』の方が1錠(1包)あたりの成分量が多いのに飲む回数が多いんですよね。「そういう製品だ」と言われるとそれまでですけど。
製品全体としての注意点
注意してほしいこと
いくつか注意点を書いておきます。
- 眠気に注意:プロメタジンで眠気が出る可能性があるので注意してください。鎮静作用は強めです。
- 「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」となっています。ただ、全然眠くならない方もいるのでそういう方は問題ないですね。
- 抗コリン作用:口の渇きや目のかすみ、眼圧上昇、排尿困難、便秘などの症状が出る可能性があります。
- 『パイロンPL Pro』は排尿困難がある方、緑内障の方は禁忌となっています。
- 『パイロンPL』の方は禁忌にはなっていませんが注意してください。
- プロメタジンは抗ヒスタミン薬の中でも抗コリン作用が強めです。気になる方は、他の抗ヒスタミン薬が入っていて抗コリン薬(ベラドンナ総アルカロイドなど)の入っていない製品を選ぶと良いでしょう。
- 喘息:サリチルアミドによって喘息発作が誘発される事があります。
- 他の風邪薬や解熱鎮痛剤で喘息の症状が出た事がある人は禁忌となっています。
- そういう方は解熱鎮痛剤としてはアセトアミノフェンだけが入ってる風邪薬を選ぶと良いかと思います。
- 服用期間:「長期連用しないでください」となっています。
- 風邪薬は症状を緩和するもので、風邪自体を治すわけではありません。3~4日服用しても症状が良くならない場合は、医師の診察を受けた方が良いかと思います。
妊娠中の方
『パイロンPL』『パイロンPL Pro』ともに、
「服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください」
という書き方になっています。
医療用の「PL配合顆粒」の添付文書には、
「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」
との記載があります。
(大体の薬にはこの記載がありますが)
気になるのはサリチルアミドでしょうか。添付文書では、
「サリチル酸製剤(アスピリン等)では動物試験(ラット)で催奇形作用が、ヒトで妊娠後期にアスピリンを投与された患者及びその新生児に出血異常があらわれたとの報告がある」
とのこと。
サリチルアミドとアスピリン(アセチルサリチル酸)は似たようなものです。
また、サリチルアミドに関わらず、NSAIDs全般的に胎児の動脈管の収縮が起こる可能性があります。
とはいえ、この市販薬に入っている程度の低用量であれば問題になる事はまず無いと思います。
心配な方は、解熱鎮痛剤としてはアセトアミノフェンだけが入っている薬を選んだ方が良いでしょう。
ただ、服用するにしても短期間の使用にとどめておいた方が無難だとは思います。
あと、やっぱり妊娠してる方は市販薬は使わず受診して医師に薬を処方してもらった方が良いと思います。
(というか、必ず受診してください)
授乳中の方
『パイロンPL Pro』の方は
「服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください」
という書き方になっています。
『パイロンPL』の方は何も書いてませんね。
こちらに関してはそれほど気にしなくて良いでしょう。
Mothers’ Milk基準では、この製品に入ってる成分で一番リスクの高いもので「L3(概ね適合)」となっています。
(プロメタジンがL3)
ただ、『パイロンPL Pro』は他の市販薬と比べるとカフェインの量が多いですね。
(1日240mg配合。他の市販薬は大体100mg以下)
カフェインは簡単に母乳中に移行するので、赤ちゃんにも影響が出る場合があります。
といっても、寝つきが悪くなったり落ち着かなくなるくらいでしょうか。
「多くの薬は母親が飲んだ量の1%未満しか母乳中に移行しない」という事を考えるとあまり心配はいらないかと思います。
心配であれば授乳後に薬を服用すると良いでしょう。次の授乳までに薬はかなり分解されてます。
この場合、食後とかは気にしないでOKです。4~5時間程度時間を空けて、服用できるタイミングで服用してください。
あと、薬を服用中は粉ミルクを使うという手もあります。
製品の特徴や利点、個人的な感想
いわゆる「総合感冒薬」ではあります。
発熱、頭痛、のどの痛み、鼻水などの症状に効果があるかと思います。
特徴としては、CMで謳っている通り「医療用と同成分・同量配合」という事にはなりますが、別にそれが良いってわけではないですね。
いまどき抗ヒスタミン薬としてプロメタジンは使いません。抗コリン作用が強すぎます。鎮静作用も強いです。
解熱鎮痛剤の量は中途半端だし、カフェインの量は無駄に多いです。
なんていうか、古い感じ?実際古いのですが。
(「PL配合顆粒」の販売開始は1962年)
メリットとしては…
咳止めの成分は入ってないんですよね。逆に言えば、咳のない方でも使いやすいです。
必要のない薬は飲まない方が良いですから。
風邪薬(総合感冒薬)として販売されている市販薬で、咳止めが含まれていない製品はほとんどありません。
また、医療用として昔から多くの患者さんに使われてきた、という実績があるのは大きいですね。今でもかなり使われています。
他の市販の風邪薬と比べると情報量が豊富でしょう。我々薬剤師にとっても身近なものですね。
医療用のは、患者さんからは「鼻水によく効く」と言われることが多いです。
これはプロメタジンの副作用である抗コリン作用によるものが大きいかもしれないですね。
通常、抗ヒスタミン薬における抗コリン作用は副作用の扱いなのですが、鼻汁の分泌を抑制する作用もあるので、市販薬ではあえて抗コリン薬を入れているものも多いです。
『パイロンPL Pro』でも同様の効果が期待できるため、鼻水が主な症状の一つである場合にはおすすめできるかな?
眠気に関しては個人差が大きいと思いますが、最初の服用後は注意してください。眠気が強ければ違う薬にした方が良いでしょう。
『パイロンPL』はちょっと弱いかな?自分なら使いません。
使用した方の口コミ・レビュー、値段など
「ものログ」というサイトの口コミです。
良い評価としては、
といった具合。
否定的な意見としては、
といった感じ。
のどの痛み、鼻水に効果あったという声が多いですね。
でもやっぱり眠気は出ると。
あとは「錠剤が飲みやすい」とか「病院で出されてるから安心」と言った声も多かったです。
やっぱり昔から使われてる実績があるので、そこは安心なのでしょうか。
個人的には正直「いろいろ市販の風邪薬がある中で、あえてこれを選ぶかな?」といった感じです。
上でも書いてますが、咳が出てないなら良いかな?
公式ホームページでは、承認時のデータとして「83.7%がやや改善以上」となっています。
筋肉痛、発熱、悪寒、くしゃみの順に改善率が高いようです。
外来では「鼻水によく効く」という声が多いのですが…
値段について
メーカーの希望小売価格(税込)を見ると、
パイロンPL | 錠 | 24錠:1,485円 48錠:2,343円 |
顆粒 | 12包:1,485円 24包:2,343円 | |
パイロンPL Pro | 錠 | 24錠:1,958円 36錠:2,508円 |
顆粒 | 12包:1,958円 18包:2,508円 |
ということでした。
Yahooショッピング(送料含まず)で一番大きい包装のを見ると、
製品 | 剤形 | 値段 | 1日分に換算 |
パイロンPL | 錠剤 (48錠) | 1,400~2,000円 | 175~250円 |
顆粒 (24包) | 1,300~1,900円 | 162.5~237.5円 | |
パイロンPL Pro | 錠剤 (24錠) | 1,400~1,800円 | 467~600円 |
顆粒 (18包) | 1,700~2,400円 | 378~533円 |
※1日分のは、『PL』は錠剤・顆粒:8日分、『PL Pro』は錠剤:3日分、顆粒:4.5日分で計算
※2025年1月時点です。
こんな感じでした。
入っている成分量で単純に比較すると『パイロンPL Pro』は割高ですね。
例えばアセトアミノフェンだと、『PL』の48錠中には2880mg、『PL Pro』の24錠中には1800mg入ってます。
『PL』の方が1.6倍多め。(他の成分も比率は同じです)
仮に『パイロンPL錠』48錠と『パイロンPL錠 Pro』24錠が同じ値段だとすると、『PL Pro』は各成分あたりの値段は1.6倍高いということですね。
というか、『PL』もこの成分構成でこの値段は高いです。『PL Pro』は異常に高いと言って良いでしょうね。
自分ならまず買いません。
まとめ
この記事では『パイロンPL』『パイロンPL Pro』について、各成分の効果と注意点、個人的な感想、使用者のレビューなどをご紹介しました。
この製品は長年使われてきた医療用の「PL配合顆粒」と同じ配合というのが特徴であり、最大の売りですね。
他の市販薬とは積み上げてきた実績に違いがあります。
とはいえ、いまさらこんなの使うかな?というような成分構成だし、なにより値段が高いです。
他にもいろいろと選択肢があるので、あえてこれを選ぶ理由もないでしょうね。
ただ、風邪薬(総合感冒薬)として販売されている製品で咳止めが入っていないのはほとんどありません。
「咳止めなんて絶対に飲みたくない!」という人にはいいかも?
(というか、そういう人は各成分が単独で売られている製品を買いましょう。解熱鎮痛剤だけ、抗ヒスタミン薬だけ、という製品もあります)
風邪の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。
ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。
効果を感じられない場合や、症状が改善しない場合は、適切な医療機関を訪れることをお勧めします。
この記事を読んで、それでも「買おうかな?」と興味を持たれた方へ
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下2つが普通の『パイロンPL』で…
この下2つが『パイロンPL Pro』になります。
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