「ジヒドロコデイン」の解説 
作用・使用上の注意・製品一覧

「ジヒドロコデイン」についての簡単な解説です。

目次

ジヒドロコデインを含む市販薬の製品一覧

解説記事を書いたことのある製品を載せています。

※ここでご紹介している製品がすべてではありません。
あと、すでに製造中止になっている製品もあるかもしれません。
そのへんはご了承くださいますようお願い申し上げます。

風邪薬(総合感冒薬)

総合感冒薬(かぜ薬)の一覧表もあるので見てみてください。
製品ごとの主要成分も載せています。

分類・作用機序

ジヒドロコデインリン酸塩の化学構造式

「ジヒドロコデインリン酸塩「タケダ」」の添付文書より

分類

いわゆる「咳止め」ですが、
その中の「中枢性麻薬性鎮咳薬」となります。

「麻薬性」となっていますが、麻薬です。
「麻薬じゃないよ」という医師もいるかもしれませんが麻薬です。
濃度の低いものは法律上では麻薬に分類されないだけですね。

似たような薬で「コデインリン酸塩」がありますが、「ジヒドロ~」の方がより強く咳を抑えます。

作用機序

脳にある咳中枢を抑制することで咳を抑えます。

咳は本来、肺や気管などの呼吸器を守るために、外から入ってきた異物(ほこりやウイルスなど)を外に追い出す生体防御反応です。

気道粘膜上のセンサーが異物を感じ取ると、脳の咳中枢に信号が送られて咳が出ますが、この信号を抑えることで咳を鎮めるんですね。

広く言えば「オピオイド受容体作動薬」の一つですが、市販薬では痛みに使うことはないので、その説明は割愛します。

効果や使用方法

効果

・咳を抑える
・痛みを抑える
・下痢を止める
などの効果があります。

市販薬では咳止めとしてしか使われてないと思います。

風邪のほとんどは上気道のウイルス感染で、そのウイルスを追い出すために咳が出るわけです。
なのでその咳を止めてしまうと逆に悪化して、気管支炎や肺炎になる可能性もあります。

風邪をひいた時でも軽めの咳であれば、咳止めは使わないで様子を見た方が良いかと思います。
ただの風邪であれば数日~1週間程度で良くなるはずですし。

ただ、激しい咳の場合は体力の消耗が激しいし、咳のし過ぎで肋骨を折る人もいるし、このご時世だと周りの目も気になるでしょう。
この辺は人それぞれのさじ加減になりますが、薬を使う意義もあるかもしれませんね。

というか、激しい咳が出るなら病院に行ってください。ただの風邪ではない可能性もあります。

医療用の使用例

基本的には強い咳に対して使います。
痰の絡んでいない咳に使いますね。

痰が絡んだ咳にこの薬を単独で使うとよけいに痰が出しにくくなるので基本的には使いませんが、使う場合には去痰薬を併用します(医師によるけど)。

あと、消化管の動きを抑制するので下痢止めとしても使いますね。
(でも使われるのは「コデインリン酸塩」の方かも)

ただ、どちらの使い方でもあまり長期間は使いません。
頓服という感じで症状が強い時だけ使います。

あまり風邪の咳には使用してほしくない薬ではあるのですが、普通に処方されてますね。
この辺は医師によっても考えが異なると思いますが。

用法・用量

市販薬だとほとんどの製品は
1回8mg1日3回
となっていますね。

医療用では通常は
1回10mg1日3回
となっています。

市販の風邪薬でも医療用とほぼ同じ量を使えますね。
それが良いとは言えませんけど。
(市販の咳止めでは医療用と同じ量が含まれているものがあります)

使用上の注意点

禁忌

医療用の添付文書に載っているものを全て書いておきます。

  • 重篤な呼吸抑制のある人
  • 12歳未満の小児
  • 扁桃摘除術後又はアデノイド切除術後の鎮痛目的で使用する18歳未満の患者
  • 気管支喘息発作中の人
  • 重篤な肝機能障害のある人
  • 慢性肺疾患に続発する心疾患のある人
  • 痙攣状態(てんかん重積症、破傷風、ストリキニーネ中毒)にある人
  • 急性アルコール中毒の人
  • アヘンアルカロイドに対し過敏症の人
  • 出血性大腸炎の人

痙攣状態の人や急性アルコール中毒を起こしてる人が「そうだ、風邪薬を飲もう」なんて考えないと思うので、その辺は気にしなくて良いと思います。

以前は小児にも使えたのですが、2019年から12歳未満は使用できなくなりました。
海外において、死亡を含む重篤な呼吸抑制のリスクが高いとの報告があるそうです。

あと、「咳止め」なのに気管支喘息には禁忌となっています(発作中でなくても)。
コデインは気道の分泌を抑制することで痰の粘調度が増したり(痰が固くなる)気管支を収縮させる作用もあるので喘息には使いません。

あと一番下に「出血性大腸炎」と書いてますが、これに限らず細菌性の下痢には基本的に下痢止めは使いません
止めるよりも出してしまった方が良いので。
(あまりにも辛かったら一時的に使うかも)

副作用

「何がどのくらい」という詳細なデータはないのですが、この系統の薬において注意しておいていただきたい事を書いておきます。

呼吸抑制

重大な副作用として、呼吸抑制があります。

12歳未満に使用できなくなったのもこれのせいですね。

海外ではコデイン類含有製剤での死亡例があるとのことです。
日本人は遺伝学的に欧米人よりは起きにくいそうですが、安全性を考えてという事でしょう。
日本ではコデインでもジヒドロコデインでも呼吸抑制による死亡例はないそうです。

故意に大量に飲んだりしなければそれほど問題になる事はありませんが、子供の誤飲には注意を!

息切れしたり、なんか呼吸が浅くなって息苦しいなどあれば、すぐに中止してください。

依存性

麻薬なので、長期で使用してると依存が形成される事があります。

連用中に急にやめると、あくび、くしゃみ、流涙、発汗、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、散瞳、頭痛、不眠、不安、せん妄、振戦、全身の筋肉・関節痛、呼吸促迫等の退薬症候があらわれることがあります。

依存が形成されてしまった場合は急に止めずに徐々に減らしていく事になりますが、まずは受診して医師に相談してください。

こういう事があるので、これは基本的には短期間、または頓服で使用するべきものだと思います。

便秘

この系統で起こりやすい副作用の一つ目が便秘です。
そもそも下痢止めとしても使いますしね。

ひどい場合は麻痺性イレウスになる可能性もあるので、普段から便秘傾向の方は注意してください。

病院だと酸化マグネシウムなどの緩下剤と一緒に処方されることも多いですね。

便秘の予防のためにもこまめに水分は摂るようにしましょう。
この薬を飲んでなくても、風邪の時には発熱や発汗によって脱水傾向になりやすいので水分摂取は大事です。

ちなみに、連用していれば慣れてきますが連用はダメです。

吐き気

この系統で起こりやすい副作用の二つ目が吐き気です。

ただ、一般的な風邪薬に入っている量で吐き気が出ることはあまり無いかと思います。

でも薬を飲んで「気持ち悪い…」となったら止めた方が良いでしょう。

ちなみに、これも連用していれば慣れてきますが連用はダメです。

眠気

この系統で起こりやすい副作用の三つ目が眠気です。

医療用の薬の添付文書には、

眠気、めまいが起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

と記載があります。

この薬単発でも眠くなる可能性がありますが、市販の風邪薬の場合は他にも眠くなる成分(抗ヒスタミン薬等)が入っているので、人によってはかなり眠くなる事があります。

これも慣れてはくるはずですが…生活に支障が出る場合は飲む回数を減らしたり減量した方が良いでしょうね。

相互作用

併用禁忌のものはありませんが、いくつか併用注意のものがあります。

医療用の「ジヒドロコデインリン酸塩散1%「第一三共」」の添付文書に書いてあるものをそのまま載せておきます。

スクロールできます
薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
中枢神経抑制剤
 フェノチアジン系薬剤、
 バルビツール酸系薬剤等
吸入麻酔剤
モノアミン酸化酵素阻害剤
三環系抗うつ剤
β-遮断剤
アルコール
呼吸抑制、低血圧及び顕著な鎮静又は昏睡が起こることがある。相加的に中枢神経抑制作用が増強される。
ワルファリンワルファリンの作用が増強されることがある。機序は不明である。
抗コリン作動性薬剤麻痺性イレウスに至る重篤な便秘又は尿貯留が起こるおそれがある。相加的に抗コリン作用が増強される。
ナルメフェン塩酸塩水和物本剤の効果が減弱するおそれがある。μオピオイド受容体拮抗作用により、本剤の作用が競合的に阻害される。

薬物乱用について

近年、市販薬による薬物乱用が増えていますが、その筆頭がこのジヒドロコデインのようです。
(73.5%がジヒドロコデイン含有製品というデータも)

市販薬は医療用医薬品と違い、店頭やネットで簡単に買えますしね。

一時的に多幸感があったり気分が落ち着いたり疲労感がなくなったりしますが、同じ量を服用していても効き目が薄くなっていき、服用量が増えていきます。

大量に飲めば麻薬と同じです。
オーバードーズ(過剰摂取)」というやつですね。
死亡例もあります

圧倒的に使われている製品は鎮咳去痰薬として売られているもののようです(エスエス製薬の『ブロン錠』など)。
風邪薬よりも1日に使える成分量が多くなっています(1回10mg・1日30mg)。

ジヒドコロコデイン単体でも薬物依存が形成されますが、風邪薬の場合は他にも
・抗ヒスタミン薬
・プソイドエフェドリンのようなエフェドリン類
・カフェイン
などが入っていて、依存形成を助長します。

同じような効果で依存が形成されにくい薬もあるのに、なぜわざわざこういう成分を風邪薬に入れているのか?
製薬会社としては「(乱用されようが)売れればいい」というところもあるでしょう。
ジヒドロコデインが入っている製品数の多さを見ると、その理由について考えさせられますね。

ただ、通常用量で問題になる事はまずないと思います。
「用法用量を守って」というのは副作用発現以外にも理由があります。

このブログ内でたまに書いている
必要な成分を必要な分だけ使う
という鉄則は、患者さん本人の身を守るためのものです。

自分の身は自分で守るようにしてください。

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