「ジプロフィリン」の解説 
作用・使用上の注意・製品一覧

「ジプロフィリン」についての簡単な解説です。

目次

ジプロフィリンを含む市販薬の製品一覧

解説記事を書いたことのある製品を載せています。

※ここでご紹介している製品がすべてではありません。
あと、すでに製造中止になっている製品もあるかもしれません。
そのへんはご了承くださいますようお願い申し上げます。

鎮咳去痰薬

クリック・タップで開きます。

製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。

製品名1日あたりの成分量
アストフィリンS225mg
コンコン咳止め液120mg
新コンタックせき止め
ダブル持続性
200mg

市販の鎮咳去痰薬に配合できる最大量は1日300mgになります。
(「鎮咳去痰薬の製造販売承認基準」より)

分類・作用機序

ジプロフィリンの化学構造式

「カフコデN配合錠」の添付文書より

分類

気管支拡張薬」です。

医療用の「ジプロフィリン注300mg「エーザイ」」という薬の添付文書では
強心・喘息治療剤
となっていますね。

「キサンチン誘導体」というものの一つです。カフェインの仲間ですね。

作用機序

いろいろな作用がありますが、ここでは気管支拡張作用について書かせていただきます。

作用機序は、

  • ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害による細胞内cAMPの増加
  • アデノシン受容体拮抗

となっています。

気管支の収縮は、

  1. Ca²⁺が細胞内に流入
  2. ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)を活性化
  3. ミオシン軽鎖がリン酸化
  4. 気管支の平滑筋が収縮

という流れになっています。

きつね作です。

次にジプロフィリンの働きですが、
ジプロフィリンはPDEを阻害してcAMPの分解を抑えることでcAMPを増やします。

  1. cAMPの増加
  2. プロテインキナーゼA(PKA)が活性化
  3. MLCKがリン酸化することでMLCKの働きが抑えられる
  4. Ca²⁺があってもミオシン軽鎖がリン酸化できない
  5. 気管支平滑筋が収縮できない
  6. 結果として弛緩する

こんな感じです。

きつね作です。

cAMPはCa²⁺の流入を増やすのですが、それ以上に「Ca²⁺を使って収縮する仕組み」が止められるので、結果として気管支は弛緩し拡張するんですね。

また、ジプロフィリンにはもう一つの作用として、アデノシン受容体を阻害する働きもあります。
カフェインと同じですね。

アデノシンを吸入すると、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんでは気管支が収縮しますが、健常者ではほとんど反応がないそうです。
これはアデノシンに対する感受性や炎症性細胞の違いによるものだそうです。

ジプロフィリンは、このアデノシンの働きを抑えることで間接的に気管支拡張作用を示すわけですね。

効果や使用方法

効果

気管支を拡張することによって、呼吸を楽にします。

また、強心作用や利尿作用もあるので、うっ血性心不全にも適応がありますね。

同じ系統で「テオフィリン」という薬があります。

ジプロフィリンはテオフィリンより安全性が高いとされています。
市販薬の咳止めでも多少使われてますね。きつねが確認したところ5製品ありました(テオフィリンは1製品のみ)。

市販薬で気管支拡張薬といえば「メチルエフェドリン」がよく使われていますが、メチルエフェドリンは強くはないですが中枢性の鎮咳作用もあります。
ジプロフィリンには中枢性の鎮咳作用はなく、純粋な気管支拡張薬ですね。

医療用の使用例

ジプロフィリン単独の注射もありますが、咳止めとして「カフコデN配合錠」、酔い止め・めまいに使う「トラベルミン」などがあります。

一番有名なのは「トラベルミン」でしょうか。市販薬でもありますね。
ただ、医療用の「トラベルミン配合錠」のインタビューフォームを見ると、
「ジプロフィリンの配合は、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩の作用を補うと共に、副作用を軽減する意義があるものと考えられた」
ということで、補助的みたいです。たぶんカフェインでも同じような効果が期待できたかもしれませんね。

用法・用量

市販薬の場合は製品によってバラつきがあります。
1日100~225mg
といったところ。
回数も、1日2回の製品や1日6回まで、といったものがあります。

医療用の場合、「カフコデN配合錠」だと
1回40mg・1日3回(120mg)
となっています。

「トラベルミン配合錠」は
1回26mg・1日3~4回(1日78~104mg)
ですね。

使用上の注意点

「ジプロフィリン注300mg「エーザイ」」の添付文書やインタビューフォームを参考に書かせていただきます。

禁忌

この系統の薬剤に対して重篤な副作用の既往歴のある人

には禁忌となっています。

この系統は他に、カフェインやテオフィリン、アミノフィリンなどがあります。
製品名だと「テオドール」「テオロング」「ユニフィル」「ネオフィリン」など。

「カフコデ」や「トラベルミン」で具合が悪くなったことがある場合ですが、これらは複数の成分が入っているので何が原因かは分かりません。
でも一応避けたほうが良いかもしれませんね。

服用注意な人

  • 急性心筋梗塞、重篤な心筋障害
  • てんかん
  • 甲状腺機能亢進症

このような疾患のある方は、それぞれの症状が悪化する可能性があるので一応注意してください。

通常用量を短期間使う程度で問題になることはないと思いますが、心配な方は薬局で訊いてみると良いでしょう。

副作用

出やすい副作用としては、

  • 悪心(吐き気)
  • 頻脈・心悸亢進
  • 頭痛
  • 不眠

などがあります。

カフェインと同じ系統なので覚醒作用があります。
眠れなくなるようなら違う薬を使った方が良いかもしれませんね。

相互作用

併用禁忌はありません。併用注意だけ。
「ジプロフィリン注300mg「エーザイ」」のをそのまま載せておきます。

併用注意

スクロールできます
薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
他のキサンチン系薬剤
 テオフィリン
 アミノフィリン水和物
 カフェイン等
中枢神経興奮薬
 エフェドリン塩酸塩
 マオウ等
過度の中枢神経刺激作用があらわれることがある。
異常が認められた場合は減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
併用により中枢神経刺激作用が増強される。

テオフィリンやエフェドリンは気管支喘息などに、アミノフィリンはどちらかというと心臓の方に使います。
マオウ(麻黄)はエフェドリンを含む生薬ですが、いくつかの漢方薬に配合されています。咳には使わない漢方薬にも配合されているので、漢方薬を服用中の方は注意してください。

※マオウ(麻黄)を含む漢方薬・15種類(折り畳みにしておきます)

クリック・タップで開きます。

五十音順です。

  • 越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)
  • 葛根湯(カッコントウ)
  • 葛根湯加朮附湯(カッコントウカジュツブトウ)
  • 葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)
  • 桂芍知母湯(ケイシャクチモトウ)
  • 桂麻各半湯(ケイマカクハントウ)
  • 五虎湯(ゴコトウ)
  • 五積散(ゴシャクサン)
  • 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
  • 防風通聖散(ボウフウツウショウサン)
  • 麻黄湯(マオウトウ)
  • 麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)
  • 麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)
  • 麻杏薏甘湯(マキョウヨクカントウ)
  • 薏苡仁湯(ヨクイニントウ)

※『今日の治療薬』を参考にしています。

カフェインはいろいろな飲み物にも入っているのでちょっと注意ですね。

他の成分についてはこちらから。
成分の一覧表

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