「トラネキサム酸」についての簡単な解説です。
トラネキサム酸を含む市販薬の製品一覧
解説記事を書いたことのある製品を載せています。
風邪薬(総合感冒薬)
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製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。
製品名 | 1日あたりの成分量 |
---|---|
新ルルAゴールドDXα | 420mg |
ストナアイビージェルEX | 750mg |
ベンザブロックL プレミアム | 750mg |
ベンザブロックS | 420mg |
ベンザブロックS プレミアム | 420mg |
ベンザブロック YASUMO | 420mg |
ルルアタックEX | 750mg |
ルルアタックEX プレミアム | 750mg |
ルルアタックNX プレミアム | 420mg |
市販の風邪薬では1日最大750mgとなっています。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)
ただ、15歳未満も使える製品については1日最大420mgまでとなっています。
分類・作用機序
トラネキサム酸の化学構造式
分類
「抗プラスミン薬」というものになります。
「抗線溶薬」とも呼ばれます。
作用機序
傷などができた時、フィブリンという物質が血小板とともに血を固めて止血します。
しかし、病的な状況ではフィブリンが過剰に生成されることで血栓が形成され、血流を阻害することがあります。
フィブリンやその前駆体であるフィブリノゲンを分解するのがプラスミンという酵素です。
プラスミンはフィブリンを分解することで血栓を溶かす働きをします。
ただし、この働きが強すぎると止血が不十分になり、出血が続くことがあります。
トラネキサム酸は、プラスミンとフィブリンの結合を阻害することでプラスミンの働きを抑えて止血します。
また、プラスミンは体の防御反応として炎症やアレルギーを引き起こすキニンという物質を増やす役割がありますが、プラスミンの働きを抑えることでキニンによる炎症やアレルギー反応を和らげることができます。
効果や使用方法
効果
プラスミンの働きを抑えることで、
・出血全般に対する止血効果
・湿疹や蕁麻疹などの腫れや痒みを抑える効果
・扁桃炎や咽喉頭炎、口内炎などの腫れや痛みを抑える効果
などがあります。
市販薬では主に3番目の喉の炎症に対して使います。
美白効果があるという事で美容領域でも使われていますね。
医療用の使用例
止血剤としてはもちろんですが、風邪をひいた時などの喉の痛みにもよく使われています。
市販薬と同じですね。
作用を考えると全身の炎症に使えるはずではあるのですが、基本的には喉の炎症くらいにしか使われません。
炎症を抑えることで痛みも抑えるのですが、鎮痛の効果はそれほどでもないですね。
痛みが強い時はアセトアミノフェンやロキソプロフェンなども一緒に使います。
以前は喉の痛みには違う薬も使われていたのですが、それらは「利益より不利益の方が高い」とか「有用性が低下した」という事で販売中止になってしまいました。
このトラネキサム酸はちゃんと効果があるって事で良いのかな。
抗アレルギー作用を期待して処方されることはあまりないかと思います。
たまに女性に大量に処方されている事があるのですが…
これはたぶん美容目的でしょうね。
用法・用量
市販薬では、風邪薬だと
1回140mgまたは250mg・1日3回(1日420mgまたは750mg)
となっていますね。
(15歳未満も使える製品は1日420mgが限度となっています)
風邪薬ではない他の分類の市販薬だとまた違うかもしれません。
医療用では、
1日750~2,000mgを3~4回に分割
となっています。
基本的には1回250mgまたは500mgを1日3回使われますね。
あと下の副作用のところにも書いてますが、
腎機能が低下している方は飲む量を減らす必要があります。
使用上の注意点
医療用の「トランサミン」の添付文書やインタビューフォームの内容を書いておきます。
禁忌
・トロンビンを投与中の人
トロンビンも止血剤です。
外来で処方されることもあるようですね。
副作用
副作用についてはあまり聞いた事がありません。安全な薬だとは思います。
「食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、胸やけなどが0.1~1%未満」となっていますが、これらはどんな薬でも起こりえます。
注意点として、この成分は肝臓ではほとんど分解されず、大体は腎臓からそのまま排泄されます。
(92%の成分がそのまま尿中に出ていきます)
そのため、腎機能が低下している方だと体に薬が残りやすくなるので、飲む量を減らす必要があります。
特に透析を受けている方では痙攣があらわれることが報告されています。
また、透析をしている方は不整脈(心房細動)が起こりやすく、それによって血栓ができることもあります。
血栓が原因で脳梗塞を起こす危険もあるので、風邪薬であろうと必ず医師に相談して処方してもらった方が良いでしょうね。
また、女性の方も注意が必要です。
トラネキサム酸はあくまでも「できた血栓が溶けるのを防ぐ」作用がありますが、「新たに血栓を作る直接的な作用はない」とされています。
ただし、この点については議論されている段階です。
体内では血栓の形成と溶解が常にバランスを保っています。
トラネキサム酸を常用すると、線溶を抑えることで結果的に「できた血栓が残りやすくなる」可能性があり、血栓リスクが高まることがあります。
この点は意識しておいた方が良いでしょうね。
血栓症のリスクがある方や過去に血栓を発症したことがある方は、使用前に医師や薬剤師に相談した方が良いかと思います。
と言っても、風邪の時に使うくらいであればあまり気にする必要はないかと思います。
相互作用
併用禁忌
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
トロンビン | 血栓形成傾向があらわれるおそれがある。 | 血栓形成を促進する作用があり、併用により血栓形成傾向が増大する。 |
これは上の禁忌のところにも書いてますね。
併用注意
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
ヘモコアグラーゼ | 大量併用により血栓形成傾向があらわれるおそれがある。 | ヘモコアグラーゼによって形成されたフィブリン塊は、本剤の抗プラスミン作用によって比較的長く残存し閉塞状態を持続させるおそれがあると考えられている。 |
バトロキソビン | 血栓・塞栓症を起こすおそれがある。 | バトロキソビンによって生成するdesAフィブリンポリマーの分解を阻害する。 |
凝固因子製剤 エプタコグアルファ等 | 口腔等、線溶系活性が強い部位では凝固系がより亢進するおそれがある。 | 凝固因子製剤は凝固系を活性化させることにより止血作用を発現する。一方、本剤は線溶系を阻害することにより止血作用を発現する。 |
・ヘモコアグラーゼは止血剤
・バトロキソビンは抗血栓による末梢循環改善剤
・凝固因子製剤は血液凝固因子が欠乏している患者さんの出血抑制の薬
となっています。
とにかく血液凝固に関わる薬を使っている方は注意となっていますね。
ここに書いてあることはあまり気にしなくて大丈夫ですが、上記の薬を服用中の方は「一応そういう可能性もあるんだな」と思っておいてください。
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