以前『アレグラFX』という製品について記事にしました。
その成分は「フェキソフェナジン」になりますが、この成分を含む市販の鼻炎薬を調べてみると他にもいろいろありましたね。
今回はフェキソフェナジンの解説と、この成分を含む製品についてまとめようと思います。
フェキソフェナジンの基本情報
フランスで作られた薬だそうで、日本では2000年から医療用医薬品の「アレグラ」が発売されています。
現在は各社から後発品が出ていますね。
ちなみに、「アレグラ(Allegra)」とはイタリア語で「嬉しい」「楽しい」の意味だそうです(Wikipediaより)。
以前は医療用でしか使えなかったのですが、2012年に「スイッチOTC」として市販の製品が出てますね。
(スイッチOTC:病院で医師が処方する医療用医薬品の成分を、薬局・薬店でも購入できる一般用医薬品として転用したもの)
分類
「ヒスタミンH1受容体拮抗薬」の第二世代になります。
一般的には「抗ヒスタミン薬」と呼ばれますね。
抗ヒスタミン薬には「第一世代」と「第二世代」があり、1983年以降に発売されたものは「第二世代」となるそうです。副作用の少ないものが多いですね。
フェキソフェナジンは第二世代抗ヒスタミン薬の中でも比較的多く使われているかと思います。医師にもよりますけど。
作用機序
気管支や血管の細胞、知覚神経にあるH1受容体というところにヒスタミンという物質がくっつくことで鼻水やくしゃみ、痒みが出るのですが、その受容体をブロックすることで症状を抑えます。
また、ヒスタミン受容体はヒスタミンがくっつかなくても活性化してしまうのですが、それも抑制します。
主な作用はこの「抗ヒスタミン作用」なのですが、ロイコトリエンなどアレルギーに関係する他の化学伝達物質の働きを抑える作用も持っています。
第一世代は鼻づまりにはあまり効果がないのですが、第二世代は鼻づまりにも多少効果があるとされています。
ちなみに、ヒスタミンの受容体にはH2受容体というのもあり、こちらは胃酸の分泌に関わっています。
なのでH2受容体をブロックするものは胃薬として使われています(「ガスター」とか)。
副作用や飲み併せなどの注意点
副作用
一番多いのが「傾眠(眠気・軽い意識障害)」で8.4%、
次に「頭痛」で2.17%となっています。
フェキソフェナジンは眠気が少ないのが売りですね。
抗ヒスタミン薬は基本的に「自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること」のような記載があるのですが、フェキソフェナジンにはありません。
自動車運転の注意記載がないものは医療用だとフェキソフェナジンの他に、
「ビラスチン(商品名:ビラノア)」
「ロラタジン(同:クラリチン)」
「デスロラタジン(同:デザレックス)」
があります。
他のアレルギーの薬で眠気がひどい方は、こういう薬を処方してもらうと良いかと思います。
あと第一世代よりも抗コリン作用はかなり少なめです。これもメリットですね。
相互作用
併用禁忌のものはありませんが併用注意のものがあります。
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
エリスロマイシン | フェキソフェナジンの血漿中濃度を上昇させるとの報告があります。 医療用のアレグラの添付文書には、最高血中濃度が約2倍に上昇したとのデータがあります。 眠気や頭痛などの副作用のリスクが高まる可能性があるので注意してください。 | P糖蛋白の阻害によるフェキソフェナジンのクリアランスの低下及び吸収率の増加に起因するものと推定される。 |
水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム含有製剤 | フェキソフェナジンの吸収が妨げられ、鼻炎やアレルギーの症状の緩和が期待できない可能性があります。 医療用のアレグラの添付文書には、最高血中濃度が約40%減少したとのデータがあります。 同時に服用することはせず、2時間程度空けると良いでしょう。 | 水 酸 化 ア ル ミ ニ ウム・水酸化マグネシウムが本剤を一時的に吸着することにより吸収量が減少することによるものと推定される。 |
・エリスロマイシンは抗生物質です。
そんなに頻繁に使われるものでもないと思うので、あまり気にしなくて良いかもしれません。
フェキソフェナジンの血中濃度が2倍になったところでそれほど問題ないですし。
・水酸化なんとかは胃薬(制酸剤)です。
できればフェキソフェナジンを飲んでから2時間程度空けてからこの水酸化なんとかを飲んだ方が良いかと思います。
相互作用は少なめですね。使いやすいと思います。
他の市販の第二世代抗ヒスタミン薬との比較
この系統の薬は人によって効き方が全然違います。
いろいろな成分が出ているので、一つ使ってみて「鼻水の薬なんて効かない!」と思わずに他のを試してみるのが良いですね。
一応傾向らしいものはありまして、
成分名(五十音順) | 効きめ | 眠気 | 1日の服用回数(成人) |
---|---|---|---|
アゼラスチン | 強め | あり | 2回 |
エピナスチン | 中間くらい | 少なめ | 1回 |
ケトチフェン | 強め | あり | 2回 |
セチリジン | やや強め | あり | 1回 |
フェキソフェナジン | 弱め? | 少なめ | 2回 |
ベポタスチン | 中間くらい | ややあり | 2回 |
メキタジン | 強め | あり | 2回 |
ロラタジン | 弱め? | 少なめ | 1回 |
こんな感じでしょうか。
フェキソフェナジンは効果が弱めですが、眠気も少なめです。
というか、やっぱり効果のあるものは眠気もある印象です。
効果の弱いものを効果が出るまで増やしたら眠気も出ますし。単純に使う量の問題もあるでしょうね。
ただ医療用のビラノア(ビラスチン)は効果が強めで眠気が少ない、となっていますね。
使用方法
用法・用量
医療用の場合、
・12歳以上:1回60mg・1日2回
・2~12歳未満:1回30mg・1日2回
・0.5~2歳未満:1回15mg・1日2回
となっています。
市販薬の場合は製品によります。
成人用の製品は、
・15歳以上:1回60mg・1日2回
・15歳未満:服用しないこと
小児用の製品は、
・7~11歳:1回30mg・1日2回
・12歳以上:1回60mg・1日2回
となっています。
市販薬は7歳未満は服用しないこととなっていますね。
7歳以上は医療用と同じ量を使えます。
食後服用の指定はありません。
というか、空腹時の方が吸収は良くなりますね。
また、市販薬の場合は「鼻炎薬」となっていて、鼻水・鼻づまり・くしゃみの事しか書いていませんが、蕁麻疹や湿疹などの痒みにも使えます。
ちなみにですが、皮膚科や耳鼻科では1つの薬で効果が弱い場合、複数の抗ヒスタミン薬を使うことが結構あります(最大で4種類使っているのを見た事があります)。
でも個人ではやめておいた方が良いですね。
服用期間
風邪をひいたときなどに使う場合は、症状が治まるまで服用すれば良いと思います。
痒みに対しても同じですが、飲むのをやめたら症状が出てくる場合は数週間は続けてみると良いでしょう。
夜中に痒くて眠れないというのであれば、フェキソフェナジンではなくあえて眠気の出る抗ヒスタミン薬を使うのも良いでしょうね。
花粉症を含む季節性アレルギーには、その季節が始まる直前から服用を開始して、その季節が終わるまで続けるのがセオリーです。
症状が出始める前から服用開始する、という事になるので、花粉の予測などをチェックしておくと良いでしょう。
フェキソフェナジンを含む市販薬
フェキソフェナジンを含む市販薬はいくつか出ていますが、大きくは2つに分けられます。
・成人用
・小児用
成人用も小児用も成分はフェキソフェナジン単体ですが、一つだけ他の成分も入っているものがあります。
フェキソフェナジン単体の製品・成人用
製品一覧
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製品名 | フェキソフェナジン 1回量 |
---|---|
FX鼻炎錠アルファ | 60mg |
アレキラFX鼻炎錠 | 60mg |
アレグラFX | 60mg |
アレジークHI | 60mg |
アレルビ | 60mg |
エメロットFXソフトカプセル | 60mg |
ケアビエン | 60mg |
ジキナ鼻炎錠<FX> | 60mg |
スカイブブロンHI | 60mg |
ノスポール鼻炎錠FX | 60mg |
ハリー鼻炎FX | 60mg |
フェキソフェナジン錠「ST」a | 60mg |
フェキソフェナジン錠α | 60mg |
フェキソフェナジン錠AG | 60mg |
フェキソフェナジン錠ALG | 60mg |
フェキソフェナジン錠RX | 60mg |
フェキソフェナジン錠「SX」 | 60mg |
すべての製品が、1回あたりフェキソフェナジン60mg・1日2回となっています。
製品ごとの差はないと思うので、単純に値段で選んでいいでしょうね。
信頼感で選ぶのであれば医療用の「アレグラ」と製造販売元が同じである『アレグラFX』ですが…
56錠入れで2,700円くらい(Amazon)。
1錠あたり48.6円。
ちょっと高いんですよね。
アレルギー性鼻炎で使う場合は長期間になると思うので少しでも安い方が良いですよね。
で、例えばこれなんかは…
56錠入れで1,000円くらいです。
1錠あたり17.8円。
こんなのも。
120錠×5個=600錠で8,980円
1錠あたり約15円。
600錠だと300日分になるので、そんなにまとめて買わなくても良いとは思いますけど。
他の製品もネットだと「〇錠×〇箱」という感じでまとめて安く売られていることが多いですね。
継続して使うことが多いからかな?
中身は同じだと思うので、安いので良いのではないかと思います。
フェキソフェナジン単体の製品・小児用
製品一覧
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製品名 | フェキソフェナジン・1回量 12~14歳 | フェキソフェナジン・1回量 7~11歳 |
---|---|---|
アレグラFXジュニア | 60mg | 30mg |
エメロット「FX」錠ジュニア | 60mg | 30mg |
フェキソフェナジン錠ALGジュニア | 60mg | 30mg |
フェキソフェナジン錠「RX」ジュニア | 60mg | 30mg |
『フェキソフェナジン「RX」ジュニア』がたぶん一番安いです。これ。
40錠入れで1,180円。
1錠あたり23.5円。
なのですが、これは1錠が30mgです。他の製品も同じく1錠30mgです。
ちなみに他の3製品は倍近くします。
小児用は割高ですね。
12歳以上は成人と同じく1回60mgになるので、12歳以上が使うのであれば成人用ので良いでしょう。
1回1錠で楽だし。
『アレグラFXプレミアム』
2024年1月22日に『アレグラFXプレミアム』という製品が発売されました。
これは1日量として
・フェキソフェナジン:120mg
・塩酸プソイドエフェドリン:240mg
配合されています。
医療用の『ディレグラ(プソフェキ)』と同じ構成ですね。
「プソイドエフェドリン」は血管収縮剤になります。
鼻粘膜の血管を収縮させることで充血を解消して鼻の通りを良くするものですね。
第二世代の抗ヒスタミン薬は一応鼻づまりにも多少効果があるとされていますが、やはり単独ではちょっと弱いと思います。
プソイドエフェドリンを配合することで、鼻水・鼻づまり両方に効果が期待できるかなと。
ただ、『アレグラFXプレミアム』は今のところ要指導医薬品となります。
医療用医薬品から市販薬に転用されたばかりの薬で、必ず薬剤師から対面での指導や情報提供を受ける決まりになっています。
なので現在はインターネットでの購入はできません。
ということで今のところは店頭で買うしかないのですが、いずれはネットでも買えるようになるでしょうね。
他の鼻炎薬でプソイドエフェドリンが配合されている製品はあるので、鼻づまりがひどい方はそういうのを使ってみると良いでしょう。
(例えばこういうの⇒『パブロン鼻炎カプセルSα』の成分と効果【薬剤師が解説】)
短期間であれば血管収縮剤の点鼻薬を使う手もありますが、これはクセになりやすいので注意してください。
(例えばこういうの⇒『パブロン点鼻』の成分と効果【薬剤師が解説】)
まとめ
この記事では「フェキソフェナジン」の効果や使い方、製品一覧についてまとめました。
フェキソフェナジンはスイッチOTCということで、実績は十分ですね。
安全性も高いということで市販されているわけなので安心でもあります。
ただ、医療用と同じ成分量であるため、医療用と同じ注意が必要という事は知っておいていただきたいです。
本来であれば医師の診察を受け、処方されて初めて使用できる薬です。
予期せぬ副作用が出ることもあります。服用して体調が悪化した場合は速やかに医師の診察を受けるようにしてください。
この薬はたぶん大丈夫でしょうけど。
鼻炎の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。
ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。
効果を感じられない場合や、症状が改善しない場合は、適切な医療機関を訪れることをお勧めします。
皆様の健康維持に役立つ情報をこれからも提供していきます。
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