以前『アレジオン20』という製品について記事にしましたが、その成分は「エピナスチン」になります。
フェキソフェナジンと同じく、この成分を含む市販の鼻炎薬を調べてみると他にもいくつかありました。
今回はエピナスチンの解説と、この成分を含む製品についてまとめようと思います。
エピナスチンの基本情報
ドイツで作られた薬だそうで、日本では1994年から医療用医薬品の「アレジオン」が発売されています。
現在は各社から後発品が出ています。
この前書いたフェキソフェナジンよりも前に発売されてるんですね。
以前は医療用でしか使えなかったのですが、2011年に「スイッチOTC」として市販の製品が出てます。
(スイッチOTC:病院で医師が処方する医療用医薬品の成分を、薬局・薬店でも購入できる一般用医薬品として転用したもの)
ちなみに、2011年の発売は1錠10mgのだけで、1錠20mgのが発売されたのは2015年のようです。
現在市販されているのは1錠20mgのが主流ですね。
分類
「ヒスタミンH1受容体拮抗薬」の第二世代になります。
一般的には「抗ヒスタミン薬」と呼ばれますね。
抗ヒスタミン薬には「第一世代」と「第二世代」があり、1983年以降に発売されたものは「第二世代」となるそうです。副作用の少ないものが多いですね。
エピナスチンは第二世代抗ヒスタミン薬の中でもそれなりに使われている方かと思います。医師にもよりますけど。
作用機序
アレジオンの添付文書にはこう記載されています。
「選択的ヒスタミンH1受容体拮抗作用を主作用とし、ロイコトリエンC4(LTC4)、血小板活性化因子(PAF)等に対する抗メディエーター作用やヒスタミン及びSRS-Aのメディエーター遊離抑制作用を示す。」
気管支や血管の細胞、知覚神経にあるH1受容体というところにヒスタミンという物質がくっつくことで鼻水やくしゃみ、痒みが出るのですが、その受容体をブロックすることで症状を抑えます。
また、ヒスタミン受容体はヒスタミンがくっつかなくても活性化してしまうのですが、それも抑制します。
主な作用はこの「抗ヒスタミン作用」なのですが、ロイコトリエンなどアレルギーに関係する他の化学伝達物質の働きを抑える作用も持っています。
血小板活性化因子(PAF)は血小板の凝集だけではなくて、鼻の粘膜に作用すると鼻づまりを起こします。
このPAFの作用も抑えるため、第二世代は鼻づまりにも多少効果があるとされていますね。
(第一世代は鼻づまりにはあまり効果がありません)
ちなみに、ヒスタミンの受容体にはH2受容体というのもあり、こちらは胃酸の分泌に関わっています。
なのでH2受容体をブロックするものは胃薬として使われています(「ガスター」とか)。
副作用や飲み併せなどの注意点
副作用
一番多いのが「眠気」で1.21%、
次に「口渇」で0.3%となっています。
この系統の中では眠気は少なめですね。
服用が1日1回で、寝る前に使うことも多いのでなおさら感じにくいかもしれません。
前回書いたフェキソフェナジンでも眠気は8.4%だったのでそれよりも少ないのですが、
エピナスチンには「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に注意させること」の記載があります。
(フェキソフェナジンには自動車運転の注意記載がありません)
自動車運転の注意記載がないものは医療用だと
「フェキソフェナジン(商品名:アレグラ)」
「ビラスチン(同:ビラノア)」
「ロラタジン(同:クラリチン)」
「デスロラタジン(同:デザレックス)」
があります。
他のアレルギーの薬で眠気がひどい方は、こういう薬を処方してもらうと良いかと思います。
あと第一世代よりも抗コリン作用はかなり少なめです。これもメリットですね。
相互作用
併用禁忌も併用注意もありません。
他にも薬を服用してる方でも使いやすいですね。
他の市販の第二世代抗ヒスタミン薬との比較
この系統の薬は人によって効き方が全然違います。
いろいろな成分が出ているので、一つ使ってみて「鼻水の薬なんて効かない!」と思わずに他のを試してみるのが良いですね。
一応傾向らしいものはありまして、
成分名(五十音順) | 効きめ | 眠気 | 1日の服用回数(成人) |
---|---|---|---|
アゼラスチン | 強め | あり | 2回 |
エピナスチン | 中間くらい | 少なめ | 1回 |
ケトチフェン | 強め | あり | 2回 |
セチリジン | やや強め | あり | 1回 |
フェキソフェナジン | 弱め? | 少なめ | 2回 |
ベポタスチン | 中間くらい | ややあり | 2回 |
メキタジン | 強め | あり | 2回 |
ロラタジン | 弱め? | 少なめ | 1回 |
こんな感じでしょうか。
エピナスチンは服用回数が1回で効果もそれなり、眠気も少なめと使いやすいかと思います。
個人的な印象ですが、効果のあるものは眠気もある気がします。
効果の弱いものを効果が出るまで増やしたら眠気も出ますし。単純に使う量の問題もあるでしょうね。
ただ医療用のビラノア(ビラスチン)は効果が強めで眠気が少ない、となっていますね。
使用方法
用法・用量
医療用の場合、
アレルギー性鼻炎には
・15歳以上:1回10~20mg・1日1回
気管支喘息、じん麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、痒疹、そう痒を伴う尋常性乾癬だと
・15歳以上:1回20mg・1日1回
となっています。
小児用ドライシロップもあるのですが、「発がん性が不明の既知の変異原性物質」に分類される可能性のある分解物が許容限度値を超えて確認されたため自主回収となり、そのまま販売中止となりました。
小児用ドライシロップの場合、
・3歳(14kg)以上だと1回10mg
・7歳(24kg)以上だと1回20mg
使えてましたね。
これは成分自体に問題があるわけではないので、小児にも錠剤を使って良いと思いますけどね。
市販薬の場合は製品によりますが、基本的には
鼻水・鼻づまり・くしゃみに対して
・15歳以上:1回20mg・1日1回寝る前
・15歳未満:服用しないこと
となっています。
痒みに対しては何も書いていません。別に使っても良いですけどね。
15歳未満は服用しないこととなっていますね。
あと、市販薬の方は一応「寝る前」の指定があります。
医療用「アレジオン」のインタビューフォームには、次のような記載があります。
「食後投与でのCmaxは空腹時投与の約67%に低下し、AUCは約62%に減少した」
つまり、食後に服用すると吸収されにくくなります。
胃が空っぽの寝る前(夕食から2時間以上後)に服用した方が良さそうですね。
また、市販薬の場合は「鼻炎薬」ということで、鼻水・鼻づまり・くしゃみの事しか書いていませんが、蕁麻疹や湿疹などの痒みにも使えます。
ちなみにですが、皮膚科や耳鼻科では1つの薬で効果が弱い場合、複数の抗ヒスタミン薬を使うことが結構あります(最大で4種類使っているのを見た事があります)。
でも個人ではやめておいた方が良いですね。
服用期間
風邪をひいたときなどに使う場合は、症状が治まるまで服用すれば良いと思います。
(でもエピナスチンを風邪のときに使ってるのはあんまり見た事ありません)
痒みに対しても同じですが、飲むのをやめたら症状が出てくる場合は数週間は続けてみると良いでしょう。
花粉症を含む季節性アレルギーには、その季節が始まる直前から服用を開始して、その季節が終わるまで続けるのがセオリーです。
症状が出始める前から服用開始する、という事になるので、花粉の予測などをチェックしておくと良いでしょうね。
エピナスチンを含む市販薬
エピナスチンを含む市販薬はいくつか出ていますが、その全てがエピナスチン単独です。
他の成分が入っていないので分かりやすいですね。
製品一覧
製品名 | フェキソフェナジン 1回量 |
---|---|
アレジオン20 | 20mg |
エピナスチン20RX | 20mg |
エピナスチン錠20「AL」 | 20mg |
エピナスチン錠20「EX」 | 20mg |
トキワ アレブロック | 10mg |
ナブルシオン20 | 20mg |
ポジナールEP錠 | 20mg |
このうち、『エピナスチン20RX』『エピナスチン錠20「AL」』『ナブルシオン20』の3つは製造販売元が同じですね(「シオノケミカル」という会社)。
基本は1回20mgなのですが、『トキワ アレブロック』だけが1回10mgになっています。
ここは一応注意ですね。
あと、フェキソフェナジンと違いエピナスチンには小児用の市販薬はありません。
製品ごとの差はないと思うので、単純に値段で選んでいいでしょうね。
信頼感で選ぶのであれば医療用の『アレジオン』と名前が同じである『アレジオン20』ですが…
一番多い48錠入れで3,500円くらい(Amazon)。
1錠あたり約73円。
ちょっと高めですね。
アレルギー性鼻炎で使う場合は長期間になると思うので少しでも安い方が良いですよね。
ちなみに、医療用『アレジオン』はベーリンガーインゲルハイムが製造販売元ですが、市販の『アレジオン20』はエスエス製薬が製造販売元になっています。ライセンス提供してるのかな?
あと、これなんかは…
40錠入れで2,200円のがありました。
1錠あたり55円。
値段に関しては『アレジオン20』以外は似たり寄ったりでしょうか。
でも『トキワ アレブロック』は1錠10mgしか入ってないのにちょっと高いです。
フェキソフェナジンと同じく、「〇錠×〇箱」という感じでまとめて安く売られていることが多いですね。
長く使う人はそういうのを買う方が割安で良いでしょうね。
まとめ
この記事では「エピナスチン」の効果や使い方、製品一覧についてまとめました。
エピナスチンはスイッチOTCということで、実績は十分ですね。
安全性も高いということで市販されているわけなので安心でもあります。
市販の抗ヒスタミン薬はいくつか販売されていますが、効果については人それぞれですね。
自分に合ったものを探すのが良いかと思います。
ただ、医療用と同じ成分量であるため、医療用と同じ注意が必要という事は知っておいていただきたいです。
本来であれば医師の診察を受け、処方されて初めて使用できる薬です。
予期せぬ副作用が出ることもあります。服用して体調が悪化した場合は速やかに医師の診察を受けるようにしてください。
この薬はたぶん大丈夫でしょうけど。
鼻炎の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。
ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。
効果を感じられない場合や、症状が改善しない場合は、適切な医療機関を訪れることをお勧めします。
皆様の健康維持に役立つ情報をこれからも提供していきます。
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