「プソイドエフェドリン」の解説 
作用・使用上の注意・製品一覧

「プソイドエフェドリン」についての簡単な解説です。

プソイドエフェドリンを含む市販薬の製品一覧

解説記事を書いたことのある製品を載せています。

※ここでご紹介している製品がすべてではありません。
あと、すでに製造中止になっている製品もあるかもしれません。
そのへんはご了承くださいますようお願い申し上げます。

風邪薬(総合感冒薬)

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製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。

製品名1日あたりの成分量
パブロンエースPro-X135mg
パブロンセレクトN135mg
ベンザブロックL135mg
ベンザブロックL
プレミアム
135mg

市販の風邪薬には1日最大何mg入れられるのかが分かりませんでした。
いつもの「かぜ薬の製造販売承認基準について」に載ってないんですよね。

でもたぶん1日135mgが最大かな?全部そうだし。

総合感冒薬(かぜ薬)の一覧表もあるので見てみてください。
製品ごとの主要成分も載せています。

鼻炎薬(飲み薬)

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製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。

製品名1日あたりの成分量
アネトン アルメディ鼻炎錠180mg
オールP鼻炎ソフトカプセルA120mg
オムニン鼻炎カプセルS120mg
新コンタック600プラス
(製造終了)
120mg
新コンタック600プラスs105mg
セピー鼻炎ソフトN120mg
パブロン鼻炎カプセルSα120mg
鼻炎薬A「クニヒロ」150mg
ビエンリックK錠180mg
(新)ビスティー鼻炎カプセルL120mg
ヒストミン鼻炎錠150mg
平坂の鼻炎薬D180mg
ベンザ鼻炎薬α120mg

鼻炎用内服薬に配合できる最大用量は1日180mgとなっています。
(「鼻炎用内服薬の製造販売承認基準について」より)

鼻炎薬の一覧表もあるので見てみてください。
製品ごとの主要成分も載せています。

分類・作用機序

プソイドエフェドリン塩酸塩の化学構造式

「ディレグラ」の添付文書より

※「塩酸プソイドエフェドリン」と記載されているものも多いですが同じものです。

ちなみに、「プソイドエフェドリン」は 「シュードエフェドリン」 とも表記されることがあります。
「Pseudo」は英語では 「P」を発音しない ことが多いため、そう読まれることもあります。
ただし、日本の医薬品では「プソイドエフェドリン」という表記が一般的です。

分類

血管収縮剤」です。

作用としては交感神経刺激薬ですが、
その中でも「α(アルファ)₁刺激薬」となります。

自律神経には交感神経と副交感神経と2つあって、そのうちの交感神経に働くものですね。

交感神経には大きく分けて「α受容体」と「β受容体」という2種類の受容体があり、プソイドエフェドリンはその両方に作用するのですが、α受容体の方により強く作用を発揮する「α刺激薬」として使われます。

α受容体にはさらに「α₁」と「α₂」の2つがあり、このうちのα₁受容体に作用します。

(蛇足:α₂受容体について)

クリック・タップで開きます。
きつね作です。

交感神経終末から放出されたノルエピネフリンは、標的細胞のα₁受容体やβ受容体に結合することで交感神経刺激作用(血管収縮や心拍数上昇など)を引き起こします。

一方で、α₂受容体は交感神経終末側に存在し、ノルエピネフリンの過剰な放出を抑制する役割を持ちます。
これは負の(ネガティブ)フィードバックと呼ばれる仕組みです。

ノルエピネフリン自体もα₂受容体に結合します。
もともと体には交感神経が過剰に働くのを防ぐ仕組みがあるんですね。

ちなみに、プソイドエフェドリンは「濫用等のおそれのある医薬品」に含まれます。
覚せい剤の原料になるんですね。

Wikipediaによると「アメリカ国内での覚醒剤合成にはプソイドエフェドリンを原料とするものがほとんどである」だそうです。

日本でも市販薬からプソイドエフェドリンを抽出して覚せい剤を密造しようとした疑いで逮捕された事案がありましたね。

作用機序

鼻粘膜の血管平滑筋にあるα₁受容体を刺激することで、鼻粘膜の血管が収縮します。

そうすることで血流を減少させ、鼻粘膜の充血や腫れを軽減します。

ただ、交感神経はもちろん鼻だけにあるわけではないので、全身への作用(血圧上昇など)もあります。

効果や使用方法

効果

鼻粘膜の充血や腫れを抑えることで、鼻づまりを解消します。

これ以外の使われ方は特にないようですね。

血管収縮剤には他に「ナファゾリン」や「フェニレフリン」などがありますが、血管収縮の強さとしては
ナファゾリン > フェニレフリン > プソイドエフェドリン
のようです。
効果時間はこの逆になるようですね。

α₁刺激薬なので、作用的には

  • 血管収縮(血圧上昇)
  • 瞳孔散大
  • 消化管の平滑筋収縮
  • 膀胱括約筋の収縮
  • 唾液腺の分泌抑制

このようなものがあります。

医療用の使用例

日本にはこの成分単独の医療用医薬品はないのですが、「抗ヒスタミン薬」と一緒になっている薬があります。
(「ディレグラプソフェキ)」)

抗ヒスタミン薬は鼻水やくしゃみは抑えますが、鼻づまりを解消する効果はあまりありません

このプソイドエフェドリンを一緒に配合することで、鼻水・鼻づまりの両方に効果を発揮するんですね。

鼻づまりがひどいアレルギー性鼻炎には効果的です。

また、この成分ではないのですが、他の「α刺激薬」では点鼻薬という形で直接鼻に噴霧して使うものがあります。
速効性で全身性の副作用もあまりなく使いやすいのですが、結構クセになる(点鼻薬性鼻炎)ので注意が必要ですね。

内服でも点鼻でも、短期間の使用にとどめておいた方が良いと思います。

用法・用量

市販の風邪薬だと基本的には
1回45mg1日3回(1日135mg)
となっていますね。
最大用量は分かりませんが、たぶん1日135mgなのでしょう。

鼻炎用内服薬だと1日180mgが最大用量
となっています。

医療用の「ディレグラ(プソフェキ)」では
1回120mg1日2回(1日240mg)
となっています。

1回60mgと1回120mgを比較したデータがあります。

それによると、もちろん1回120mgの方が鼻づまりには優れた効果を発揮しているのですが、1回60mg(1日120mg)でも効果は認められています。

市販の風邪薬は1日135mgということで、効果は期待できるのではないでしょうか。
全身への作用を考えると、あまり多くても心配ですしね。

使用上の注意点

医療用医薬品の「ディレグラ」を参考に書かせていただきます。
(「ディレグラ」はプソイドエフェドリンとフェキソフェナジンの合剤です)

禁忌

  • 重症の高血圧
  • 重症の冠動脈疾患
  • 閉塞隅角緑内障
  • 尿閉がある
  • 交感神経刺激薬による不眠、めまい、脱力、振戦、不整脈等の既往歴

これらの疾患・状態にある方は禁忌となっています。

服用注意な人

  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 虚血性心疾患
  • 眼圧上昇
  • 甲状腺機能亢進症
  • 前立腺肥大

このような疾患のある方は、それそれの症状が悪化する可能性があるので一応注意してください。
(甲状腺機能亢進症に関しては、交感神経刺激作用が強まる可能性)

通常用量を短期間使う程度で問題になることはないと思います。

また、腎機能が低下してる方も注意してください。
この成分はあまり肝臓で分解されないので、腎機能が悪いと成分がそのままの形で体に残りやすくなり、結果として副作用が起きやすくなります。

副作用

交感神経に働くものなので、全身にいろいろ出てくる可能性があります。

「ディレグラ」のインタビューフォームを見ると、

  • 頭痛:1.1%
  • 全身性皮疹:0.6%
  • 疲労:0.6%
  • 口渇:0.6%

となっています。
ただ、フェキソフェナジンとの合剤であることと、被験者数が少ないのであまり当てにならないかも。

過剰症としては、交感神経刺激薬全般的な話になりますが、

交感神経刺激薬を大量に投与すると、めまい感、頭痛、悪心、嘔吐、発汗、口渇、頻脈、前胸部
痛、動悸、高血圧、排尿困難、筋力低下及び筋緊張、不安、落ち着きのなさ、不眠症、妄想や幻覚
を伴う中毒性精神病、不整脈、循環虚脱、痙攣、昏睡、呼吸不全がみられることもある。

ということです。

相互作用

医療用の「ディレグラ」の添付文書に書いてあるものの中から、プソイドエフェドリンに関係のあるものを載せておきます。

併用注意

スクロールできます
薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
交感神経系に対し抑制的に作用する降圧剤
 メチルドパ
降圧作用が減弱することがある。塩酸プソイドエフェドリンの交感神経刺激作用により、交感神経抑制作用を減弱する。
交感神経刺激薬塩酸プソイドエフェドリンの心血管に対する作用が増強されることがある。共に交感神経刺激作用を有するため。
選択的MAO-B阻害剤
 セレギリン
血圧上昇等が起こるおそれがある。セレギリンのMAO-B選択性が低下した場合、交感神経刺激作用が増強されると考えられる。

併用注意についての簡単な説明

クリック・タップで開きます。

・メチルドパは「分類」の項目に書いてあるα₂受容体に作用する薬です。
α₂受容体を刺激することでノルエピネフリンの放出を阻害し、血管収縮を抑制することで血圧を下げる薬です。
あまり使われることはないのですが、妊娠高血圧に用います。

・交感神経刺激薬はプソイドエフェドリンと同じ分類になるので、相互に作用が強まります。

・モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬はパーキンソン病に使われています。
MAOにはAとBがあり、Aがノルエピネフリンとセロトニン、Bがドパミンを分解します。
MAO-Bを阻害することでドパミンの分解を阻害してパーキンソンの症状を抑えるのに使うのですが、その選択性が低下した場合、つまりMAO-Aも阻害してしまうとノルエピネフリンが増えて、交感神経刺激作用が強くなります。

ここに書いてあることはあまり気にしなくて大丈夫ですが、上記の薬を服用中の方は「一応そういう可能性もあるんだな」と思っておいてください。

他の成分についてはこちらから。
成分の一覧表

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