今回は「鼻の症状に」特化した『パブロンセレクトN』について書きます。
「ルルアタック」の時もそうでしたが、何かに特化していると言っても結局のところ「総合感冒薬」になってしまうので、全体的に見ると一般的な風邪薬とそう変わらないんですよね。
そんなわけで、前回の「喉の痛み・発熱に」の『パブロンセレクトT』はちょっと中途半端な感じがしました。
これはどうでしょうか?
『パブロンセレクトN』の基本情報
・製造会社:大正製薬
・主な成分
成分名 | 1日量(15歳以上の) | はたらき |
塩酸プソイドエフェドリン | 135mg | 鼻づまりを和らげる |
ヨウ化イソプロパミド | 6mg | 鼻水を抑える |
d-クロルフェニラミンマレイン酸塩 | 3.5mg | 鼻水、くしゃみを抑える |
グリチルリチン酸二カリウム | 40mg | のどや鼻の粘膜の炎症を鎮める |
イブプロフェン | 450mg | 熱をさげ、痛みを和らげる |
カルボシステイン | 750mg | 気道の粘液や粘膜を正常な状態に近づける |
ジヒドロコデインリン酸塩 | 24mg | 咳を抑える |
・包装
・錠剤:18錠
(PTP包装)
※このリンクはアフィリエイトリンクです。
それぞれの成分の解説
この製品には主な成分が7種類入ってます。
それぞれ解説していきますが、少し長くなるので折り畳みにしておきます。
興味のある方は読んでみてください。
※それぞれの成分の解説は、基本的には他の記事のと同じです。
製品内含量のところに少し固有のコメントをつけてるだけです。
塩酸プソイドエフェドリン
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・分類:「交感神経刺激薬」になります。
自律神経には交感神経と副交感神経と2つあって、そのうちの交感神経の方に働くものですね。
交感神経には大きく分けて「α受容体」と「β受容体」という2種類の受容体があって、プソイドエフェドリンはその両方に作用するのですが、α受容体の方により強く作用を発揮する「α刺激薬」として使われます。
・効果:鼻の粘膜の血管にあるα受容体を刺激することで、血管が収縮して鼻粘膜の充血や腫脹を軽減します。
そうすることで鼻づまりを改善します。
ただ、交感神経の受容体は全身のあちこちにあるので、思わぬ副作用が出ることがあります。
・臨床での使用例:日本にはこの成分単独の医療用医薬品はないのですが、「抗ヒスタミン薬」と一緒になっている薬があります(「ディレグラ」「プソフェキ」)。
抗ヒスタミン薬は鼻水やくしゃみは抑えますが、鼻づまりを解消する効果はあまりありません。
このプソイドエフェドリンを一緒に配合することで、鼻水・鼻づまりの両方に効果を発揮するんですね。
鼻づまりがひどいアレルギー性鼻炎には効果的ですね。
あと、この成分ではないのですが、他の「α刺激薬」では点鼻薬という形で直接鼻に噴霧して使うものがあります。
全身性の副作用もあまりなく使いやすいのですが、結構クセになるので注意が必要ですね(私もクセになった事があって、抜け出すのにかなり時間がかかりました…)。
内服でも点鼻でも、短期間の使用にとどめておいた方が良いですね。
・副作用と注意点:副作用はあまりないですが、血圧上昇や頻脈、血圧上昇による反射性の徐脈が起こる場合があります。心疾患を持ってる方は注意してください。
特に、重症の高血圧や冠動脈疾患の方は禁忌になります。
あと、甲状腺機能亢進症の方は交感神経刺激作用が強く表れることがあります。
腎機能が低下してる方も注意してください。この成分はあまり肝臓で分解されないので、腎機能が悪いと成分がそのままの形で体に残りやすくなります。結果として副作用が起きやすくなります。
・薬物相互作用:いくつか併用注意があります。
・交感神経系に対し抑制的に作用する降圧剤 メチルドパ レセルピン | 塩酸プソイドエフェドリンの交感神経刺激作用により、降圧作用が減弱することがあります。 |
・交感神経刺激薬 | 同じ系統なので、塩酸プソイドエフェドリンの心血管に対する作用が増強されることがあります。 |
・選択的MAO-B阻害剤 セレギリン | 血圧上昇等が起こるおそれがあります。 |
・製品内含量(成人):この製品の1回分には45mg入っています。1日135mg。
さきほど書いた「ディレグラ」では、通常1回120mg、1日240mg使います。
1回60mgと1回120mgを比較したデータがあります。それによると、もちろん1回120mgの方が鼻づまりには優れた効果を発揮しているのですが、1回60mg(1日120mg)でも効果は認められています。
1日135mgでも効果は期待できるんじゃないかと思います。
ヨウ化イソプロパミド
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・分類:「抗コリン薬」の分類になります。その中でも「四級アンモニウム化合物」というものになります。
「抗コリン薬」は「抗コリン作用」を持つ薬のことですが、「抗コリン作用」とは、薬が体内の特定の受容体に作用して副交感神経の働きを抑え、口の乾燥や目の焦点調節の問題、便秘などの副作用を引き起こすことです。
ただ、この副作用を逆手にとって、薬としてもよく使われます。
薬とはすなわち毒ですね。使い方次第でどちらにもなり得ます。
・効果:抗コリン作用、つまり副交感神経の働きを抑えることで、いろいろな効果を示します。
唾液の分泌や鼻水を抑えたり、胃や腸の動きを抑えたり、心拍数を上げたり、膀胱を緩めたりなど。
・臨床での使用例:このヨウ化イソプロパミドは医療用医薬品としては存在しません。
「四級アンモニウム」の医療用医薬品はあるのですが、これは基本的には胃腸の過剰な動きを抑えたり胃酸を抑えたりと、胃腸に使う事が多いですね。
市販の風邪薬には鼻水を抑える目的で配合してることが多いみたいです。
・副作用と注意点:やっぱり問題になるのは「抗コリン作用」です。作用であり、副作用でもあります。
作用と副作用は相反するものでもなくて、作用が強く表れると副作用となる事もあります。
まず、閉塞隅角緑内障、前立腺肥大、重篤な心疾患、麻痺性イレウスがある方には禁忌となのですが、この製品では「医師・薬剤師又は登録販売者に相談」となってますね。
出やすい副作用としては、口の渇き、便秘などでしょうか。
・薬物相互作用:このヨウ化イソプロパミドの情報はないのですが、一般的に抗コリン薬は下のような薬とは併用注意になるので参考として載せておきます。
・三環系抗うつ剤 アミトリプチリン イミプラミン 等 ・フェノチアジン系薬剤 プロクロルペラジン クロルプロマジン 等 ・MAO阻害剤 ・抗ヒスタミン剤 クロルフェニラミン ジフェンヒドラミン 等 | 本剤の作用が増強されることがあるので、併用する場合は減量するなどしてください。 |
・製品内含量(成人):この製品の1回分には2mg入っています。1日6mg。
この成分は医療用医薬品としては存在しません。
ただ、日本製薬団体連合会(日薬連)というところの資料では、1回3mg、1日2~3回となっています。
d-クロルフェニラミンマレイン酸塩
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・分類:「抗ヒスタミン薬」と呼ばれるものです。
その中でも第一世代と呼ばれるものですね。
第一世代と第二世代は似たようなものですが、多少効果や副作用が変わってきます。
あと、クロルフェニラミンマレイン酸塩には「d(ディー)体」と「l(エル)体」というのがあります。
一般的な風邪薬ではd体とl体の両方が入ってるものが多いのですが、この製品にはd体だけを入れてるみたいですね。
l体の方は抗ヒスタミン作用があんまりなくて眠気の副作用があります。特にメリットはありません。
・効果:アレルギー反応を引き起こすヒスタミンという物質の働きをブロックします。
これにより、鼻水やくしゃみ、痒みなどのアレルギー症状を緩和します(抗ヒスタミン作用)。
ただ、鼻水を抑える効果はありますが、鼻づまりの方にはあまり効きません。
この成分には抗ヒスタミン作用の他に、抗嘔吐作用や抗コリン作用というものがあります。
あと、第二世代と比べると効果の発現が早めですね。
・臨床での使用例:アレルギー性疾患全般に使っています。
アレルギー性鼻炎、上気道炎の鼻水・くしゃみ、蕁麻疹、湿疹など。
とにかく鼻水とくしゃみ、痒みがあればこの系統を使います。
病院ではあまりファーストチョイスにはならないかな?第二世代が効かない場合に使うといった感じです。
でもこのd体だけのは今でも結構使われてますね。眠気などは出やすいですが効果も強い印象です。
・副作用と注意点:この成分は注意点が多いです。
抗コリン作用により眼圧が上昇したり、排尿困難や尿閉などが現れることがあるので、
閉塞隅角緑内障、前立腺肥大など下部尿路閉塞疾患がある方には禁忌となります。
(と言っても、この2つの疾患を持ってる方は大体治療されているので大丈夫な場合が多いです。主治医に訊いてみてください)
出やすい副作用としては眠気や口渇があります。
ただ、すごく個人差が大きいので何ともない人は本当に何ともありません。それでも最初に飲んだ後は注意してください。
口渇については特に問題にはならないですが、結構カラッカラになって不快です。私はですが。
・薬物相互作用:併用注意のものがあるので載せておきます。
バルビツール酸系薬剤等 アルコール | 相互に作用を増強することがあるので、併用する場合には減量するなどしてください。 |
モノアミン酸化酵素阻害剤 | 相互に作用を増強することがあるので、併用する場合には減量するなどしてください。 |
抗コリン作動性薬剤ブチルスコポラミン臭化物 アトロピン硫酸塩水和物等 | 相互に作用を増強することがあるので、併用する場合には減量するなどしてください。 |
ドロキシドパ ノルアドレナリン | 血圧の異常上昇を来すおそれがあります。 |
併用禁忌というわけではないので、なんか眠いな~、ふらふらするな~と感じたら風邪薬の量を減らして様子をみてください。
・製品内含量(成人):この製品の1回分には約1.17mg入っています。1日3.5mg。
医療用では1回2mgので1日1~4回、または1回6mgので1日2回使います。1日8~12mgですね。
3.5mgはちょっと少ない気もしますが、他の市販薬でも全部3.5mgになってますね。
グリチルリチン酸二カリウム
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・分類:いろいろと作用があるのですが…あえて分類すると「肝機能改善薬」でしょうか。
もちろん風邪薬に入っている以上、風邪に効く作用もありますけど。
甘草(カンゾウ)という生薬に含まれる成分です。
・効果:抗アレルギー、抗炎症、免疫調節、肝細胞増殖作用などいろいろな効果がありますね。
・臨床での使用例:医療用では「グリチルリチン酸」単独の薬はないと思います。
グリチルリチン酸配合の飲み薬や注射薬があるのですが、飲み薬では「グリチロン」という薬がよく使われます。と言っても今はあまり使われないですけど。
(ちなみに、医療用で使われている「グリチルリチン酸」はほぼ「グリチルリチン酸一アンモニウム」になります)
適応としては、慢性肝疾患における肝機能改善、湿疹・皮膚炎、円形脱毛症、口内炎、小児ストロフルスとなっています。
風邪の時に処方されたことは見た事がないです。主に肝機能の改善を目的に使用するものですね。
あと皮膚科でも使われるかな?
・副作用と注意点:カリウムを下げる作用があるので、低カリウム血症の方は注意した方が良いでしょう。
通常使う分にはほとんど副作用はありません。
ただ、多めの量を長期間飲んでると「偽アルドステロン症」といって血圧が上がったり浮腫みが出たりします。
・薬物相互作用:カリウム関係で併用注意があります。
ループ・サイアザイド系の 利尿剤 | 利尿剤とグリチルリチン酸の両方にカリウムを下げる作用があるので、 低カリウム血症(脱力感、筋力低下等)があらわれるおそれがあります。 |
モキシフロキサシン (アベロックス) | グリチルリチン酸によってカリウムが低下した場合、心室性頻拍、QT延長などの不整脈を起こすおそれがあります。 |
あと、先にも書きましたがグリチルリチン酸は甘草(カンゾウ)という生薬に含まれている成分です。
この甘草は、かなり多くの漢方薬に配合されています。
漢方薬を常用している方は、ご自身の服用している漢方に甘草が入っていないか確認した方が良いでしょう。
(と言っても、この製品に入ってる量はかなり少ないです)
・製品内含量(成人):この製品の1回分には約13.3mg入っています。1日40mg。
医療用では1回50~75mg、1日3回なので1日150~225mg。
小児でも1回25mg、1日3回は使いますが…
ん~、補助的な感じでしょうか?
イブプロフェン
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・分類:いわゆる「解熱鎮痛剤」です。
50年ほど前から使われていて実績は十分ですね。
・効果:体内で痛みや炎症の原因となる特定の物質の作用を抑えることによって、頭痛や筋肉痛などの痛みを和らげる効果があります。
また、熱を下げるのを助ける作用もあります。
一般的な解熱鎮痛剤は小児に使えない事が多いのですが、これは小児にも適応があり使いやすいですね。
よく小児の頭痛などに処方されます。
国際的にも小児の解熱にはこのイブプロフェンかアセトアミノフェンが推奨されています。
(日本では小児の解熱には適応がありません。痛み止めとしてだけです。)
・臨床での使用例:いろいろな痛みや発熱に使えます。他の解熱鎮痛剤と同じですね。
ただ、あまり成人の方に処方されてるのは見ないかな?医師の好みもあると思いますが。
やっぱりどちらかと言うと小児に使う事の方が多いと思います。
・副作用と注意点:一番は胃に負担がかかる、という事でしょうか。胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍には禁忌となってます。
風邪のように短期間の使用であれば問題になることはないと思いますが、空腹時には飲まないようにした方が良いと思います。
あと、喘息をもってる方も注意してください。「アスピリン喘息」を誘発する可能性があります。
普段から痛み止めを飲んでいる方は、これを一緒に飲むと飲みすぎになる可能性があります。薬局で相談してみるといいでしょう。
長期間の服用は腎臓に負担がかかりますが、風邪のときに使うように短期間であれば問題ありません。
妊娠後期(28週以降)の方には禁忌となっています。胎児の動脈管(心臓と大動脈をつなぐ血管)が収縮した、という報告があります。
妊娠後期の方はアセトアミノフェンという解熱鎮痛剤が入ったものした方が良いかと思います。
・薬物相互作用:作用機序は不明ですが、ジドブジンというHIV感染症に使う薬とは併用禁忌になっています。血友病患者さんで出血しやすくなったとか。
イブプロフェンは、他の薬と一緒に使うときに注意が必要な成分があります。
特に、血をサラサラにする薬、一部の心臓病や高血圧の治療薬、そして特定の感染症や痛み・炎症を治療する薬との併用は、副作用のリスクを高めることがあります。
これらの薬をすでに使用している方は、イブプロフェンを含む製品を使う前に、医師や薬剤師に相談することをお勧めします。
イブプロフェンの併用注意の一覧です。少し多いので折り畳み。
(クリック・タップで開きます)
ワルファリン | ワルファリンの作用を増強するおそれがあります。 |
アスピリン | アスピリンの血小板凝集抑制作用を減弱するとの報告があります。 |
・抗凝血剤 ワルファリン等 ・抗血小板剤 クロピドグレル等 ・選択的セロトニン 再取り込み阻害剤(SSRI) フルボキサミン、 パロキセチン等 | 消化管出血が増強されるおそれがあります。 |
炭酸リチウム | リチウムの血中濃度が上昇し、リチウム中毒を呈したとの報告があります。 |
・チアジド系利尿薬 ヒドロクロロチアジド ・ループ利尿薬 フロセミド | これら利尿薬の作用を減弱するとの報告があります。 |
・ACE阻害剤 エナラプリル等 ・β遮断剤 プロプラノロール等 | 降圧作用が減弱するおそれがあります。 |
タクロリムス水和物 | 急性腎障害があらわれたとの報告があります。 |
・ニューキノロン系抗菌剤 エノキサシン水和物等 | 他の非ステロイド性消炎鎮痛剤で併用により痙攣があらわれたとの報告があります。 |
メトトレキサート | メトトレキサートの作用を増強するおそれがあります。 |
コレスチラミン | 本剤の血中濃度が低下するおそれがあります。 |
スルホニル尿素系血糖降下剤 クロルプロパミド、 グリベンクラミド等 | 血糖降下作用を増強(低血糖)することがあります。 |
CYP2C9阻害作用を有する薬剤 ボリコナゾール、フルコナゾール | イブプロフェンの血中濃度が上昇するおそれがあります。 |
・製品内含量(成人):この製品の1回分には150mg入っています。1日450mg。
医療用では成人だと1回200mg、1日600mg使うのが一般的ですね。ちょっと少ないかな?
カルボシステイン
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・分類:「去痰薬」の中の「気道粘液修復薬」になります。
・効果:痰そのものをサラサラにしたり、粘膜を正常化して線毛の運動を改善することで痰を出しやすくします。
・臨床での使用例:痰が絡む咳とか、慢性の気管支炎、気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)によく使われます。
あと副鼻腔炎にもよく使われますね。小児だと滲出性中耳炎の排膿にも使われます。
排痰・排膿だと真っ先に使われる薬ですね。
・副作用と注意点:カルボシステインは一般的に非常に安全性が高いと考えられています。
ただし、ごく稀に薬疹が出る方もいますので、使用に際しては一応注意してください。
・薬物相互作用:特にありません。
・製品内含量(成人):この製品の1回分には250mg入っています。1日750mg。
医療用では1回250~500mg使います。1日750~1,500mg。
ただ、大人には通常1日1,500mg使うのでちょっと少ないかもですね。
ジヒドロコデインリン酸塩
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・分類:「鎮咳薬」。いわゆる「咳止め」ですが、その中でも「中枢性麻薬性鎮咳薬」に分類されます。
・効果:咳中枢を抑制することで咳が出るのを抑えます。
もともと咳というのは、肺や気管などの呼吸器を守るために、外から入ってきた異物(ほこりとかウイルスとか)を外に追い出す生体防御反応です。
ほこりとかウイルスなどを気道の粘膜上にあるセンサーが感じ取ると脳にある咳中枢に信号が送られて咳が出るのですが、それを抑えるという事ですね。
あとは消化管の動きを抑制する効果もあります。
・臨床での使用例:基本的には強い咳に対して使います。できれば痰の絡んでない乾いた咳の時がいいです。
あと消化管の動きを抑制するので下痢止めとしても使いますね。
ただ、どちらの使い方でもあまり長期間は使いません。頓服という感じで症状が強い時だけ使います。
・副作用と注意点:この成分は効果的ではあると思うのですが、いくつか注意点があります。
まず、痰が絡んだ咳に対しては使いにくいです。
痰を硬くするので余計に痰が出しにくくなる可能性があります。
副作用としては、便秘、麻痺性イレウス(腸閉塞)、悪心・嘔吐、排尿障害、依存性、眠気、呼吸抑制、気管支痙攣などがあります。この中でも便秘(下痢止めとしても使うので)、眠気、悪心・嘔吐は出やすいです。
あと、以前から問題になっている「オーバードーズ(過剰摂取)」の大半はこのコデインのようです。
市販で買えるとは言え麻薬の一種には変わりありません。
長期間の使用や高用量の使用は依存性を引き起こす恐れがあるため、指示された用量を厳守し、症状の改善が見られない場合は専門家に相談してください。
・薬物相互作用:他の薬と一緒に飲むことで副作用が出やすくなる事があるので、普段飲んでる薬がある方は薬局で相談してみてください。
下に相互作用の表を載せておきます。
モノアミン酸化酵素阻害剤 三環系抗うつ剤 β-遮断剤 アルコール | フェノチアジン系薬剤、バルビツール酸系薬剤等呼吸抑制、低血圧及び顕著な鎮静又は昏睡が起こることがあります。 |
ワルファリン | ワルファリンの作用が増強されて出血しやすくなることがあります。 |
抗コリン作動性薬剤 | 麻痺性イレウスに至る重篤な便秘又は尿貯留が起こるおそれがあります。 |
・製品内含量(成人):この製品の1回分には8mg入っています。1日24mg。
医療用では1回10mg、1日3回まで使います。
他の一般的な市販の風邪薬と同じ量ですね。
『パブロンセレクトN』の主要成分の効果と注意点のまとめ
7つの成分について解説してきましたが、まとめると以下のようになります。
- 塩酸プソイドエフェドリン
- 鼻の粘膜の血管を収縮させて、鼻づまりを改善します。
- 血圧上昇や頻脈などが現れることがあります。心疾患のある方は注意が必要です。
- ヨウ化イソプロパミド
- 抗コリン作用により鼻水を抑えます。
- 閉塞隅角緑内障や前立腺肥大など特定の疾患を持つ方は使用に注意が必要です。
- d-クロルフェニラミンマレイン酸塩
- 鼻水やくしゃみ、痒みを抑えますが、鼻づまりにはあまり効きません。
- 抗コリン作用により眼圧上昇や排尿困難などの副作用があり、特に眠気に注意が必要です。
- グリチルリチン酸二カリウム
- 抗アレルギー・抗炎症作用があり、のどや鼻の粘膜の炎症をしずめます。
- 低カリウム血症に注意。だるさや痺れ、こむら返りや麻痺などがあったら中止して受診してください。
- 甘草が入っている漢方薬を飲んでいる方は注意を。
- イブプロフェン
- 解熱鎮痛剤。痛みや炎症を抑え、風邪の不快感を軽減します。
- 副作用として胃に負担がかかることがあり、アスピリン喘息の誘発などのリスクにも注意が必要です。
- カルボシステイン
- 去痰薬の気道粘液修復薬で、痰をサラサラにして粘膜を正常化し、痰を出しやすくします。
- 痰が絡む咳や慢性気管支炎などに使用され、副作用は非常に少ないですが、稀に薬疹が出ることがあります。
- ジヒドロコデインリン酸塩
- 中枢性麻薬性鎮咳薬で、咳中枢を抑制して咳を抑えます。
- 乾いた咳や下痢に対して使用されますが、痰を硬くする可能性や依存性、眠気などの副作用に注意が必要です。
用法・用量と注意点
『パブロンセレクトN』の用法・用量
・成人(15歳以上):1回2錠・1日3回
となっています。
15歳未満の方は服用しないでくださいということになっています。
イブプロフェンの入ってるものは15歳未満は飲まないで、となっています。
ライ症候群を警戒して、という事だと思いますが…
イブプロフェンはサリチル酸系ではなくて、プロピオン酸系と呼ばれるものになります。
国際的に小児の解熱にはアセトアミノフェンかイブプロフェンが推奨されているのに、市販薬だとイブプロフェンが使えないのは少しもったいないですね。
仕方ないので15歳未満の方は大人しくアセトアミノフェンが入ってるものにしましょう。
注意してほしいこと
いくつか注意点を書いておきます。
・食後の服用: 「食後なるべく30分以内に」となっています。
イブプロフェンで胃痛が起こる方もいるので一応注意してください。
でもあまり心配は要らないです。
・眠気に注意:クロルフェニラミンやジヒドロコデインで眠気が出やすい方もいるので注意してください。
「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」となっています。
ただ、全然眠くならない方もいるのでそういう方は問題ないですね。
ちなみに、この製品にはカフェインは入っていません。
・喘息:イブプロフェンによって喘息発作が誘発される事があります。
他の風邪薬や解熱鎮痛剤で喘息の症状が出た事がある人は、イブプロフェンではなくてアセトアミノフェンが入ってる風邪薬を選ぶと良いかと思います。
・ジドブジン(商品名:レトロビル、コンビビル)服用中の方は禁忌となっています。(イブプロフェン)
・漢方薬服用中の方:グリチルリチン酸は甘草(カンゾウ)という生薬に含まれる成分ですが、過剰摂取で偽アルドステロン症の副作用が出る場合があります。
漢方薬を飲んでる方は注意してください。カンゾウが入っていないものであれば問題ありません。
・高血圧・心疾患のある方:塩酸プソイドエフェドリンによって血圧上昇や頻脈等が出る可能性があります。
一時的に使用する分には問題ないと思いますが、この製品の添付文書では禁忌になっているので注意してください。
・服用期間: 風邪薬は症状を緩和するもので、風邪自体を治すわけではありません。
3~4日服用しても症状が良くならない場合は、医師の診断を受けた方が良いかと思います。
ジヒドロコデインのオーバードーズ(過剰摂取)の問題もありますしね。
この製品の添付文書でも「5日間を超えて服用しないでください」と書いてあります。
妊娠中の方
妊娠後期(28週以降)の方は禁忌です。
(この製品の添付文書には「出産予定日12週以内の妊婦は飲まないで」という書き方になっています)
イブプロフェンによって胎児の動脈管(心臓と大動脈をつなぐ血管)が収縮した、という報告があります。
妊娠後期の方はアセトアミノフェンという解熱鎮痛剤が入ったものにした方が良いかと思います。
(アセトアミノフェンは短期間であれば問題ないとされています)
あとジヒドロコデインは妊娠28週以降は推奨されません。
豪州ADECというオーストラリアの危険度分類ではジヒドロコデインの分類はAとなり、
「多くの妊婦と妊娠可能年齢の女性によって服用されており、それによって先天奇形の発症率の上昇や、間接・直接の胎児に対する有害作用が確認されていない」ということで、
今までの使用経験上では大丈夫だったよ、ということになります。
ただ、違う基準(Briggs基準)によるとリスク4の「妊娠28週以降は胎児への危険性が示唆される」という分類になっています。
プソイドエフェドリンはBriggs基準によるとリスク5となっていて「原則として妊娠中の投与は避けることが望ましい」となっています。
ただ、この成分が入っている医療用医薬品の「ディレグラ」では、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」という記載になっています。
総合的に見ると、妊娠してる(可能性のある)方はこの薬は避けた方が無難かと思います。
他に使える風邪薬はありますしね。
あと、やっぱり妊娠してる方は市販薬は使わず受診して医師に薬を処方してもらった方が良いと思います。
授乳中の方
この薬の添付文書には「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けて下さい」と書いてあります。
ただ、こちらについてはそれほど問題ないと考えます。
Mothers’ Milk基準では、この風邪薬に入ってる成分の中で一番リスクの高いものでも「L3(概ね適合)」となっています。(ジヒドロコデインとクロルフェニラミン、プソイドエフェドリンがL3)
ジヒドロコデインは基本的には「授乳を避けること」となっています。母乳に移行して乳児にモルヒネ中毒(傾眠、哺乳困難、呼吸困難等)が生じたとの報告があります。
母親に便秘や眠気などの副作用が出ている場合は授乳をやめた方が良いでしょうね。
似たようなものでデキストロメトルファンというのがあり、こちらは安全に使用可能となっています。
「多くの薬は母親が飲んだ量の1%未満しか母乳中に移行しない」という事を考えると心配はいらないかと思います。
心配であれば授乳後に薬を服用すると良いでしょう。次の授乳までに薬はかなり分解されてます。
この場合、食後とかは気にしないでOKです。4~5時間程度は時間を空けて、服用できるタイミングで服用してください。
あと、薬を服用してる間だけ粉ミルクを使うという手もあります。
『パブロンセレクトN』の特徴と利点と個人的な感想
この製品は「鼻水・鼻づまり」に重点を置いた製品ということで、そこに作用する成分は
・鼻づまりを解消するプソイドエフェドリン
・鼻水の分泌を抑えるヨウ化イソプロパミド
・アレルギー症状を抑えるクロルフェニラミン
・膿を出しやすくするカルボシステイン
の4つが入っています。
(メーカーとしては「グリチルリチン酸も…」という感じでしょうが、これは除外しています)
それ以外の成分は少なめです。必要最小限という感じですね。
「総合感冒薬」として売ってるから一応入れてますよ、くらいな感じです。
個人的な評価としては「悪くはない」と思います。
ちゃんと「鼻水・鼻づまり」に特化してますね。
前に書いた『ルルアタックNXプレミアム』と比べてみます。
こちらも一応「鼻水・鼻づまりに」と謳っている製品ですね。
(この記事) | 『パブロンセレクトN』ルルアタックNXプレミアム』 | 『|
解熱鎮痛剤 | イブプロフェン:450mg | イブプロフェン:450mg |
咳止め | ジヒドロコデイン:24mg | ジヒドロコデイン:24mg メチルエフェドリン:60mg |
鼻水の薬 | d-クロルフェニラミン:3.5mg ヨウ化イソプロパミド:6mg | d-クロルフェニラミン:3.5mg ヨウ化イソプロパミド:6mg |
鼻づまりの薬 | プソイドエフェドリン:135mg | なし |
喉の薬 | なし | トラネキサム酸:420mg |
痰の薬 | カルボシステイン:750mg | なし |
ビタミン剤 | なし | ビタミンB2:12mg ビタミンP:90mg |
カフェイン | なし | 75mg |
その他 | グリチルリチン酸:40mg | なし |
鼻水を抑える薬は同じ内容ですね。
「ルル」の方は鼻に使う成分はその2つしか入っていません。
そして他の成分が多くて、ただの総合感冒薬になってしまってます。
「パブロン」の方はちゃんと「鼻づまり」にも効く成分が入っているのが良いですね。長期では使わない方が良いですが。
珍しく「ちゃんとした製品」かなと思います。
使用した方の口コミ・レビューなど
前回の『パブロンセレクトT』もそうでしたが、この製品も口コミがありませんでした。
あまり売れてないのかな?
『パブロンセレクトN』は、『パブロンメディカルN』にヨウ化イソプロパミドを足した製品になっています。
という事で、ちょっと違うのですが『パブロンメディカルN』の口コミを見てみます。
(『パブロンメディカルN』は製造終了しています)
『ものログ』というサイトの口コミです。
まず良い評価の方は、
といった具合。
否定的な意見としては、
といった感じ。
効果に対する評価はまあまあでしょうか。
『パブロンセレクトN』に入っているヨウ化イソプロパミドが『パブロンメディカルN』には入っていません。
抗ヒスタミンは人によって効果がまちまちですが、抗コリン剤を入れたことで多少効きが良くなっているかと思います。
「鼻づまりに効いた」と書いてる方がチラホラ。
プソイドエフェドリンが入っているので抗ヒスタミン薬単独の薬よりは効果はあるでしょうね。
値段に関しては、
Yahooショッピング(送料込み)で見ると、18錠ので850~1,300円くらいでした(この製品は18錠のしかありません)。
1日6錠だから18錠だと3日分。1日283~433円くらい。
ん~、成分構成は悪くないのですが…値段は微妙なところですね。
1日300円前後(18錠で900円くらい)なら買っても良いかな?と思いますけど。
まとめ
この記事では『パブロンセレクトN』の主要成分、それぞれの効果、用法・用量、そして実際の使用者の声をご紹介しました。
「のど・発熱に」の『パブロンセレクトT』の方は中途半端な感じだったのであまり期待してなかったのですが、こちらは悪くはないですね。
少なくとも『ルルアタックNXプレミアム』よりは「ちゃんとした製品」だと思います。
あっちは1日あたり750円くらいするし。お店によるでしょうけど。
このところ「買う価値ないな…」と思う製品が多かったのですが、これは久々「買う価値あり」とさせていただきます。値段次第ですけどね。
なんで口コミがないのかな?それがちょっと不思議。
風邪の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。
ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。
効果を感じられない場合や、症状が改善しない場合は、適切な医療機関を訪れることをお勧めします。
詳細な情報やご購入を検討される方は、公式ホームページを参照してください。
皆様の健康維持に役立つ情報をこれからも提供していきます。
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