「サリチルアミド」の解説 
作用・使用上の注意・製品一覧

「サリチルアミド」についての簡単な解説です。

目次

サリチルアミドを含む市販薬の製品一覧

解説記事を書いたことのある製品を載せています。

※ここでご紹介している製品がすべてではありません。
あと、すでに製造中止になっている製品もあるかもしれません。
そのへんはご了承くださいますようお願い申し上げます。

風邪薬(総合感冒薬)

クリック・タップで開きます。

製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。

製品名1日あたりの成分量その他の解熱鎮痛剤
パイロンPL648mgアセトアミノフェン:360mg
パイロンPL Pro1080mgアセトアミノフェン:600mg

※「パイロンPL」と「パイロンPL Pro」は一つの記事にまとめています。

市販の風邪薬に配合できる最大用量は1日3000mgになります。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)

他に解熱鎮痛剤が入っている場合は、その量に応じて入れられる量が変わります。

総合感冒薬(かぜ薬)の一覧表もあるので見てみてください。
製品ごとの主要成分も載せています。

分類・作用機序

サリチルアミドの化学構造式

「PL配合顆粒」」の添付文書より

分類

解熱鎮痛剤」です。

いわゆる「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」の一種です。
その中でもサリチル酸系というのに含まれます。

エテンザミドが体内で代謝されてサリチルアミドとなって効果を発揮するんですね。

アスピリンと同じような薬です(アスピリンについては下の記事を見てみてください)。

作用機序

※詳しくは上のアスピリンの記事に書いているので、ここでは簡単に。

シクロオキシゲナーゼ(COX)の働きを阻害する事でプロスタグランジン(以下、PG)の合成を抑えます

PGは腫れや熱感などの炎症反応に関わっているのと、ブラジキニンなどの発痛物質の働きを強める作用があります。

また、風邪などによって発熱の情報を持つPGが作られると、それが脳の視床下部の体温調節中枢というところを刺激して体温が上昇します。

NSAIDsはPGの働きを抑えることで炎症やブラジキニンによる疼痛を抑え、発熱を抑える作用を持ちます。

効果や使用方法

効果

解熱やいろいろな痛みに使います。他の解熱鎮痛剤と特別違いはないですね。

ただ、解熱鎮痛剤として販売されているものにはサリチルアミドが入っているものは見当たりませんでした。見落としている可能性もありますが…

風邪薬の方でも今まで記事にした製品では「パイロンPL(とPro)」のみ。
この製品に関しても、医療用の「PL配合顆粒」と同じ組成にするためあえてサリチルアミドを入れているのだと思いますが。

サリチルアミドはエテンザミドの活性代謝物です。つまり、エテンザミドは肝臓でサリチルアミドに代謝され、その後作用を発揮します。
市販薬では代謝前の物質であるエテンザミドを使う事が多いですね。

その理由についての考察ですが、意外と長くなったので折り畳みにしておきます。

クリック・タップで開きます。

その理由を調べたのですが、いまいち分からず…ChatGPTに訊いてみました。
その回答が以下になります。

  1. エテンザミドの薬物特性
    • エテンザミドのほうが安定性や製剤適性が高いと考えられています。そのため、サリチルアミドを直接配合するよりもエテンザミドを使用するほうが合理的です。
  2. エテンザミドの作用時間
    • エテンザミドは代謝を経て効果を発揮するため、体内で持続的に作用します。この特性が市販薬での使用に適している点です。

とのこと。

エテンザミドの方が製剤安定性が高いようですね。つまり、光や湿度の影響を受けにくく、長期保存に向いてるようです。たぶん。

2の作用時間ですが、こんな感じです。

サリチルアミドエテンザミド
tmax1時間くらい不明
半減期1時間くらい2~5時間

エテンザミドのtmax(最高血中濃度到達時間)は分かりませんでした。すみません。

ただ、半減期だけを見てもエテンザミドは長めですね。
サリチルアミドの形で服用するとすぐに不活性代謝物になってしまうため、エテンザミドの形で服用した方が長く効くのは当たり前ではありますね。

また、「PL配合顆粒」の添付文書にはこう書いてあります。
「サリチルアミドは通常用量を経口投与後、吸収過程でほとんど完全に不活性代謝物に代謝され、肝臓で初回通過効果を受ける」
(初回通過効果とは、経口投与された薬物が腸から吸収されて門脈を通り、肝臓で代謝される過程のことです)

となると、サリチルアミドの形で服用するとバイオアベイラビリティ(生体利用率)が極端に低く、あまり効果がない可能性がありますね。
「PL配合顆粒」の解熱鎮痛作用はアセトアミノフェンによるものが大きいという事になります。
道理で解熱鎮痛作用が弱いわけですね。PLやその類似薬はほとんど鼻水にしか使われない印象です。

で、サリチルアミドよりエテンザミドが使われる理由を整理してみると、

  • 製剤設計の柔軟性
    • エテンザミドはサリチルアミドよりも安定しており、保存性や他成分との配合がしやすい。
  • 初回通過効果の回避
    • サリチルアミドは初回通過効果で大部分が不活性代謝物に変わるため、経口投与でのバイオアベイラビリティが低い。
    • 一方、エテンザミドは吸収後に肝臓で代謝されサリチルアミドになるため、効果を持続的に発揮できる。

といったところでしょうか。

あくまで個人的な考察です。間違えていたらすみません。

医療用の使用例

サリチルアミド単独の医療用医薬品はありません。

総合感冒薬として

  • PL配合顆粒
  • サラザック配合顆粒
  • セラピナ配合顆粒
  • トーワチーム配合顆粒
  • ピーエイ配合錠(これだけ錠剤)
  • マリキナ配合顆粒
  • ペレックス配合顆粒

に含まれています。

ペレックス配合顆粒以外はすべて同じ組成となっていますね。
(ペレックスだけカフェインの量と抗ヒスタミン薬が違う)

もちろん風邪の時に処方されるのですが、かといってそれほど使われるものでもありません。

基本的には

  • 熱があれば解熱鎮痛剤
  • 咳が出るなら咳止めや去痰薬
  • 鼻水が出るなら抗ヒスタミン薬
  • のどが痛いならトラネキサム酸

が、症状に合わせてそれぞれ処方されます。

必要のない薬は飲まない方が良いですからね。鼻水が出てないのに抗ヒスタミン薬を飲んでも眠気が出るだけでメリットはありません。

用法・用量

市販薬の場合は
風邪薬では1日最大3,000mgとなっています。

単独では使われず、他に配合されている解熱鎮痛剤の量に応じてサリチルアミドの量も変わってきます。

ただ、今まで解説記事を書いた事のある製品では「パイロンPL」にしか入っていませんでした。
「パイロンPL Pro」が、上に書いてある「PL配合顆粒」などと全く同じ組成になっています。

医療用としては、上の「医療用の使用例」のとこに書いてある薬に配合されていますが、
サリチルアミドは
1回270mg・1日4回1日1,080mg
となっていて、一緒にアセトアミノフェンが1回150mg(1日600mg)含まれています。

ただ、1日3回で使う事が多いでしょうか。たまに真面目に1日4回で処方する医師もいますが。

使用上の注意点

医療用の「PL配合顆粒」の添付文書から、サリチルアミドに関する事だけ載せておきます。

禁忌

  • 消化性潰瘍
  • アスピリン喘息、またはその既往歴
  • 重篤な肝障害(どちらかというとアセトアミノフェン?)

以上のような疾患、または状態にある方は禁忌となっています。

また、成人に使うには問題ないのですが、原則15歳未満の水痘やインフルエンザの解熱には使用しません。
ライ症候群の可能性がゼロではない、ということです。

ライ症候群
極めてまれですが、小児がインフルエンザや水痘・帯状疱疹にかかってる間にアスピリンなどのサリチル酸系の解熱鎮痛剤を飲むと発症する事があります。
症状は、脳浮腫や頭蓋内圧の上昇によって激しい吐き気・嘔吐、けいれん、意識障害、高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血糖などが短期間に発現して、死に至ることもあります。
特別は治療法はなく、急性期を乗り越えても後遺症が生じることが少なくありません。

サリチルアミドはアスピリンと同じくサリチル酸系となります。
他の解熱鎮痛剤よりも可能性は高いと思っておいた方が良いでしょう。

副作用

何がどのくらい、というデータはありません。

NSAIDs全般的に「嘔気・悪心」「食欲不振」「胃痛」「胃部不快感」などの消化器症状は起きやすいので、この辺の症状があったら減量してみてください。
アスピリンよりは胃に負担がかかりにくいとされていますが、全くないというわけではありません。
アセトアミノフェンのみの薬に変更しても良いと思います。

また、サリチルアミドはサリチル酸系であり、これはアスピリンと同じです。
アスピリンには抗血小板作用があり、抗血栓薬として使用します。

サリチルアミドの抗血小板作用はどの程度のものかデータがありませんが、出血傾向がある人は避けた方が良いかもしれません。
一応「PL配合顆粒」の添付文書にも「サリチルアミドにより血小板機能異常を起こすおそれがある」との記載があります。

発疹や浮腫(むくみ)が出た場合は中止してください。

相互作用

併用禁忌はありません。併用注意がいくつかあります。

併用注意

スクロールできます
薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
クマリン系抗凝血剤
 ワルファリンカリウム
クマリン系抗凝血剤の作用を増強することがあるので、減量するなど慎重に投与すること。サリチル酸製剤(アスピリン等)は血小板凝集抑制作用、消化管刺激による出血作用を有する。また、血漿蛋白に結合したクマリン系抗凝血剤と置換し、これらの薬剤を遊離させる。
糖尿病用剤
 インスリン製剤等
糖尿病用剤の作用を増強することがあるので、減量するなど慎重に投与すること。サリチル酸製剤(アスピリン等)は血漿蛋白に結合した糖尿病用剤と置換し、これらの薬剤を遊離させる。

エテンザミドの方にはあった「リチウム製剤」や「チアジド系利尿剤」については何も書いてないですね。
ほぼ同じなのに?

併用注意についての簡単な説明

クリック・タップで開きます。

・ワルファリンは脳梗塞や心筋梗塞に使われる薬です。
(医療用では「ワーファリン」「ワルファリン」など)
出血傾向が見られたら、サリチルアミドを減量または中止した方が良いでしょう。

・糖尿病薬はいろいろありますが、インスリン製剤は全て該当します。GLP-1作動薬は問題ありません。
内服でも、メトホルミン、SU剤、速攻型インスリン分泌薬、DPP-4阻害薬の一部が該当するので、ご自身の薬がどうなのか確認しておくと良いでしょう。

ここに書いてあることはあまり気にしなくて大丈夫ですが、上記の薬を服用中の方は「一応そういう可能性もあるんだな」と思っておいてください。

他の成分についてはこちらから。
成分の一覧表

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