「グリチルリチン酸」についての簡単な解説です。
グリチルリチン酸を含む市販薬の製品一覧
解説記事を書いたことのある製品を載せています。
風邪薬(総合感冒薬)
クリック・タップで開きます。
製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。
製品名 | 1日あたりの成分量 |
---|---|
パブロンセレクトN | 40mg |
パブロンセレクトT | 40mg |
ベンザブロックIP プレミアム | 39mg |
ルルアタックCX | 39mg |
ルルアタックCX プレミアム | 39mg |
ルルアタックFxa | 39mg |
市販の風邪薬では1日最大39mgとなっています(グリチルリチン酸として)。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)
1日40mgとなってるのは「グリチルリチン酸二カリウム」です。
40mgだと、グリチルリチン酸としては36~37mgくらいになりますね。
分類・作用
グリチルリチン酸の化学構造式
分類など
グリチルリチン酸が入っている医療用医薬品の薬効分類名は
「肝臓疾患用剤・アレルギー用薬」となっていますね。
甘草(カンゾウ)という生薬に含まれる成分でもあります。
(甘草が入っている漢方薬は一番下に列挙しています)
作用
いろいろあるので「グリチロン」の添付文書に書いてあることを載せておきます。
- 抗炎症作用
- 免疫調節作用
- 肝細胞障害抑制作用
- 肝細胞増殖促進作用
- ウイルス増殖抑制・不活化作用
実際に使われるのは肝機能改善目的だと思われます。
で、これらはグリチルリチン酸として添付文書に載っている作用なのですが、先に書いた通り、グリチルリチン酸は生薬の甘草(カンゾウ)に含まれている成分です。
甘草単独の漢方薬(甘草湯)もあり、これは咳やのどの痛みに使われます。
効果や使用方法
効果
市販の風邪薬にはのどの炎症を抑える目的で配合されていますね。
(なので、このブログでは一応「のどの薬」に分類してます)
他にも抗アレルギーや咳止めの効果もあるので、そちらも期待できるかもしれません。
医療用の使用例
医療用では「グリチルリチン酸」単独の薬はないと思います。
グリチルリチン酸配合の飲み薬や注射薬があるのですが、飲み薬では「グリチロン」という薬がよく使われます。
と言っても今はあまり使われないですけど。
適応としては、
- 慢性肝疾患における肝機能改善
- 湿疹・皮膚炎
- 円形脱毛症
- 口内炎
- 小児ストロフルス
となっています。
主に肝機能の改善を目的に使用するものですね。
あと皮膚科でも使われるかな?
甘草が含まれている漢方薬はかなり多く、効能も様々ですね。
用法・用量
市販薬ではグリチルリチン酸としては
風邪薬:1回13mg・1日3回(1日39mg)
の製品が多いですね。
1日40mgと記載がある製品がありますが、これは「グリチルリチン酸二カリウム」として配合されており、グリチルリチン酸としては36~37mgになります。大体同じ量ですね。
医療用だと、例えば「グリチロン配合錠」は
1回50~75mg・1日3回(1日150~225mg)
となっています。
小児でも1回25mg・1日3回は使うので、1日39mgは少ないような気もしますが…
グリチルリチン酸が含まれる薬の長期大量使用により、偽アルドステロン症が発現した症例が報告されているそうで、1日40mg以上含まれている製品には添付文書に記載しないといけない事が増えるようです。
風邪薬のように短期間使うものであればそれほど気にしなくても良いでしょうね。
使用上の注意点
医療用医薬品の「グリチロン配合錠」の添付文書から、グリチルリチン酸に関するものを参考にしています。
禁忌
- アルドステロン症
- ミオパシー(ミオパチー)
- 低カリウム血症
こういった状態にある方は禁忌となっています。
低カリウム血症、高血圧症などを悪化させるおそれがあります。
ただ、市販薬では基本的には禁忌とはなっていません。
成分量が少ないため副作用のリスクは低いのでしょうね。
副作用
重大な副作用としては、
- 偽アルドステロン症(頻度不明)
- 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、尿量減少、体重増加などの症状があらわれることがあります。
- 横紋筋融解症(頻度不明)
- 脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢痙攣・麻痺等の横紋筋融解症の症状があらわれることがあります。
がありますが、極めて稀なのでそれほど気にしなくて良いでしょう。
漢方薬やグリチルリチン酸を長期間摂取しなければ問題ありません。
ただ、カリウムを下げる作用があるので低カリウム血症の方は注意した方が良いでしょうね。
通常使う量ではほとんど副作用はありません。
たまに頭痛や腹痛などありますが、これはいつでも起こり得ますね。
相互作用
いくつか併用注意のものがあるので載せておきます。
併用注意
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
ループ利尿剤 エタクリン酸 フロセミド等 チアジド系及び その類似降圧利尿剤 トリクロルメチアジド クロルタリドン等 | 低カリウム血症(脱力感、筋力低下等)があらわれるおそれがあるので、観察(血清カリウム値の測定等)を行うなど十分に注意すること。 | これらの利尿作用が本剤に含まれるグリチルリチン酸のカリウム排泄作用を増強し、血清カリウム値の低下があらわれやすくなる。 |
モキシフロキサシン塩酸塩 | 心室性頻拍(Torsade de pointesを含む)、QT延長を起こすおそれがある。 | 本剤が有するカリウム排泄作用により血清カリウム濃度が低下すると、モキシフロキサシン塩酸塩による心室性頻拍(Torsade de pointesを含む)、QT延長が発現するおそれがある。 |
併用注意についての簡単な説明
・ループ利尿剤、チアジド系利尿剤はともにカリウムを下げます。
グリチルリチン酸もカリウムを下げる作用があるので、低カリウム血症になりやすくなります。
カリウム保持性の利尿剤もありますが、そちらとの併用は問題ないですね。
・モキシフロキサシンは抗菌剤です。商品名は「アベロックス」。
呼吸器感染症によく使われてましたね。最近はあまり見ないけど。
漢方薬を飲んでる方は注意を
何度か書いていますが、グリチルリチン酸は甘草(カンゾウ)という生薬に含まれる成分です。
なので、甘草が入っている漢方薬と一緒に摂ると過剰摂取になる場合があり、偽アルドステロン症があらわれやすくなるので注意してください。
血液検査でカリウムが低く出ている方は、漢方薬が原因である場合も少なくありません。
漢方薬を常用している方は、ご自身の服用している漢方に甘草が入っていないか確認した方が良いでしょう。
甘草が入っている漢方薬は以下のものになります。
(かなり多いので折り畳みにしておきます)
クリック・タップで開きます。
五十音順です。
- 安中散(アンチュウサン)
- 胃苓湯(イレイトウ)
- 温経湯(ウンケイトウ)
- 越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)
- 黄耆建中湯(オウギケンチュウトウ)
- 黄芩湯(オウゴントウ)
- 黄連湯(オウレントウ)
- 乙字湯(オツジトウ)
- 葛根湯(カッコントウ)
- 葛根加朮附湯(カッコンカジュツブトウ)
- 葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)
- 加味帰脾湯(カミキヒトウ)
- 加味逍遙散(カミショウヨウサン)
- 甘草湯(カンゾウトウ)
- 甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)
- 桔梗湯(キキョウトウ)
- 帰脾湯(キヒトウ)
- 芎帰膠艾湯(キュウキキョウガイトウ)
- 芎帰調血飲(キュウキチョウケツイン)
- 九味檳榔湯(クミビンロウトウ)
- 荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)
- 桂枝加黄耆湯(ケイシカオウギトウ)
- 桂枝加葛根湯(ケイシカカッコントウ)
- 桂枝加厚朴杏仁湯(ケイシカコウボクキョウニントウ)
- 桂枝加芍薬大黄湯(ケイシカシャクヤクダイオウトウ)
- 桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)
- 桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)
- 桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)
- 桂枝加苓朮附湯(ケイシカリョウジュツブトウ)
- 桂枝湯(ケイシトウ)
- 桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)
- 桂芍知母湯(ケイシャクチモトウ)
- 啓脾湯(ケイヒトウ)
- 桂麻各半湯(ケイマカクハントウ)
- 香蘇散(コウソサン)
- 五虎湯(ゴコトウ)
- 五積散(ゴシャクサン)
- 五淋散(ゴリンサン)
- 柴陥湯(サイカントウ)
- 柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)
- 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
- 柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)
- 柴朴湯(サイボクトウ)
- 柴苓湯(サイレイトウ)
- 酸棗仁湯(サンソウニントウ)
- 滋陰降火湯(ジインコウカトウ)
- 滋陰至宝湯(ジインシホウトウ)
- 四逆散(シギャクサン)
- 四君子湯(シクンシトウ)
- 梔子柏皮湯(シシハクヒトウ)
- 炙甘草湯(シャカンゾウトウ)
- 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
- 芍薬甘草附子湯(シャクヤクカンゾウブシトウ)
- 十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
- 十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)
- 潤腸湯(ジュンチョウトウ)
- 小建中湯(ショウケンチュウトウ)
- 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
- 小柴胡湯加桔梗石膏(ショウサイコトウカキキョウセッコウ)
- 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
- 消風散(ショウフウサン)
- 升麻葛根湯(ショウマカッコントウ)
- 参蘇飲(ジンソイン)
- 神秘湯(シンピトウ)
- 清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)
- 清暑益気湯(セイショエッキトウ)
- 清心蓮子飲(セイシンレンシイン)
- 清肺湯(セイハイトウ)
- 川芎茶調散(センキュウチャチョウサン)
- 疎経活血湯(ソケイカッケツトウ)
- 大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)
- 大防風湯(ダイボウフウトウ)
- 竹筎温胆湯(チクジョウンタントウ)
- 治打撲一方(ヂダボクイッポウ)
- 治頭瘡一方(ヂヅソウイッポウ)
- 調胃承気湯(チョウイジョウキトウ)
- 釣藤散(チョウトウサン)
- 通導散(ツウドウサン)
- 桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
- 当帰飲子(トウキインシ)
- 当帰建中湯(トウキケンチュウトウ)
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)
- 当帰湯(トウキトウ)
- 二朮湯(ニジュツトウ)
- 二陳湯(ニチントウ)
- 女神散(ニョシンサン)
- 人参湯(ニンジントウ)
- 人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)
- 排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)
- 麦門冬湯(バクモンドウトウ)
- 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
- 白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)
- 附子理中湯(ブシリチュウトウ)
- 平胃散(ヘイイサン)
- 防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)
- 防風通聖散(ボウフウツウショウサン)
- 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
- 麻黄湯(マオウトウ)
- 麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)
- 麻杏薏甘湯(マキョウヨクカントウ)
- 薏苡仁湯(ヨクイニントウ)
- 抑肝散(ヨクカンサン)
- 抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)
- 六君子湯(リックンシトウ)
- 立効散(リッコウサン)
- 竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)
- 苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)
- 苓姜朮甘湯(リョウキョウジュツカントウ)
- 苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)
※『今日の治療薬』を参考にしています。
きつねが調べたところ、以上のものになります。全部で109種。
抜けや誤字があったらすみません。
※メーカーによって組成が多少異なります。
甘草がないと漢方薬が成り立たなくなりますね。
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