「ダツラエキス」の解説 
作用・使用上の注意・製品一覧

「ダツラエキス」についての簡単な解説です。

目次

ダツラエキスを含む市販薬の製品一覧

解説記事を書いたことのある製品を載せています。

※ここでご紹介している製品がすべてではありません。
あと、すでに製造中止になっている製品もあるかもしれません。
そのへんはご了承くださいますようお願い申し上げます。

鼻炎薬(飲み薬)

クリック・タップで開きます。

製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。

製品名1日あたりの成分量
ストナリニS24mg

鼻炎用内服薬に配合できる最大用量は、
総アルカロイドとして1日0.6mgとなっています。
(「鼻炎用内服薬の製造販売承認基準について」より)

これは「用法・用量」のところで説明しますが、ダツラエキスとして大体48~50mgくらいになります。

分類・作用機序

ヒヨスチアミンの化学構造式

Wikipediaより

ダツラエキスの主成分はこの「ヒヨスチアミン」となります。

分類など

抗コリン薬」です。
「副交感神経遮断薬」とか「ムスカリン受容体拮抗薬」とも言います。

ダツラ(マンダラ葉、曼陀羅葉)はヨウシュチョウセンアサガオ、シロバナヨウシュチョウセンアサガオの花期に葉を乾燥したもの、だそうです。

おそらくですが、日本の市販薬では『ストナリニS』にしか入っていません。

作用機序

きつね作です。

副交感神経の節後線維終末というところから放出されたアセチルコリンがムスカリン受容体にくっつくことで副交感神経刺激作用が起きます。

抗コリン薬は競合的にこれをブロックします。

交感神経と副交感神経の働きはシーソーのような関係にあります。
一方が優位になるともう一方の働きは相対的に弱まります。

副交感神経が遮断されると交感神経の働きが相対的に優位になるため、副交感神経遮断薬(抗コリン薬)は交感神経刺激薬と似たような作用を示す場合があります。

効果や使用方法

効果

抗コリン薬の効果としては、副交感神経の働きを抑えることでいろいろな効果を示します。

・散瞳(瞳孔を広げる)
・胃や腸の動きを抑える
・胆道の収縮を抑える
・気管支の収縮を抑える
・心拍数を上げる
・膀胱の緊張を緩める
・分泌を抑える
などの効果があります。

他にもパーキンソンに使ったりもしますね。

副交感神経の働きを抑える作用を「抗コリン作用」と言いますが、これは副作用として問題になる場合があります。
これについては後述します。

医療用の使用例

ダツラエキスは医療用医薬品としては存在しません。

抗コリン薬がよく使われるのは、
・過活動膀胱
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・胆石による痛み
・パーキンソン
・散瞳目的
あたりでしょうか。

個人的にはお腹が痛い時によく使います。

消化性潰瘍や胃酸過多にも適応はあるのですが、今は他に適した薬があるので抗コリン薬はあまり使われないですね。

市販薬では、風邪薬・鼻炎薬に鼻水や涙を抑える効果を期待して配合されていますね。
基本的に医療用ではそういう使い方はしませんが、効果はあります。

現在主流で使われている第二世代抗ヒスタミン薬の売りは、第一世代抗ヒスタミン薬で問題になる抗コリン作用を少なくした事でもあるので…あえて抗コリン薬を追加するのも変な話ですね。

鼻アレルギー診療ガイドラインでは、治療に使われるのは主に「第二世代抗ヒスタミン薬」「ロイコトリエン拮抗薬」「鼻噴霧用ステロイド」となります。
(「メディエーター遊離抑制薬」や「トロンボキサンA2拮抗薬」などもありますが、あまり使っているのを見た事がありません)
オプションとして「血管収縮剤の点鼻薬」ですね。これは頓用となります。

あとは『ストッパ』のような下痢止めでしょうか。
これは自分の常備薬でもあります。口がすごく渇くけど。

用法・用量

きつね調べによると、市販薬では『ストナリニS』にしか入っていません。他にもあったらすみません。

1回12mg・1日1~2回
となっていますね。1日2回で24mg。

「鼻炎用内服薬の製造販売承認基準について」という資料には、ダツラエキスの最大用量は「総アルカロイドとして0.6mg」という記載があります。
ダツラエキス中の主成分はヒヨスチアミンとなり、これが総アルカロイドになります。

ヒヨスチアミンはダツラエキス中に0.95~1.15%ほど含まれているようなので、
ダツラエキス24mg=総アルカロイド0.228~0.276mg
となります。たぶん。

他の市販薬によく配合されている抗コリン薬で「ベラドンナ総アルカロイド」がありますが、これは市販薬の風邪薬では大体0.3mg/日使われます。鼻炎薬では0.6mgまで使えますね。

そしてこのベラドンナ総アルカロイドの市販薬の最大用量は0.6mgで、ダツラエキスの最大用量「総アルカロイドとして0.6mg」と同量になります。これはおそらく効果に関しても同等になるのかと思われます。

となると、長くなりましたが、
ダツラエキス24mgに総アルカロイドとして最大0.276mg含まれるとなると、ベラドンナ総アルカロイド0.3mgとほぼ同じ量になり、結論としては他の市販の風邪薬と同等の抗コリン薬を含む、という事でいいのかと思います。

ちなみに、Wikipediaによると

同程度の投与量では、
ヒヨスチアミンはアトロピンの98%の抗コリン活性を持つ。

とのことです。
アトロピンと同程度と思って良いでしょう。

ダツラエキスに関しては情報が少なすぎて、これが調べられる限界でした。すみません。

使用上の注意点

抗コリン薬全般的に関わることを書いておきます。
主に医療用の「アトロピン硫酸塩水和物」を参考にしています。

いわゆる「抗コリン作用」が問題となります。
抗コリン薬なので抗コリン作用があるのは当たり前ですけど。

禁忌

医療用の「アトロピン硫酸塩水和物」では、

  • 閉塞隅角緑内障
  • 前立腺肥大による排尿障害
  • 麻痺性イレウス

など疾患・状態にある方は禁忌となっています。

「ブスコパン」という他の抗コリン薬では上記の他に、

  • 重篤な心疾患

に禁忌となっています。

緑内障や前立腺肥大、心疾患などがある人はすでに治療中だと思われるので、主治医に聞いてみるといいでしょう。
麻痺性イレウスの状態にある人が市販薬を使う事はないと思います(たぶん入院してる)。

『ストナリニS』では「医師・薬剤師に相談」となっていて禁忌にはなっていません。
実際、排尿障害くらいであれば使用する事はよくありますね。

副作用

出やすい副作用は口渇便秘でしょうか。

医療用の「ブスコパン」のインタビューフォームによると、

  • 口渇:9.4%
  • 便秘:4.4%
  • 眼の調節障害(散瞳):1.7%
  • 心悸亢進(動悸):1.4%
  • 鼓腸:0.65%

とのことです。

「アトロピン硫酸塩」の方には割合は載ってなかったのですが似たようなものでしょう。

抗コリン薬全般的に、上から4つの副作用には注意してください。
口渇くらいなら我慢しても良いでしょうけど。

相互作用

いくつかの医療用医薬品のものを載せておきます。

併用注意

スクロールできます
薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
(アトロピン、ブスコパン、アーテン)
抗コリン作用を有する製剤
三環系抗うつ剤
 アミトリプチリン
 イミプラミン等
フェノチアジン系薬剤
 クロルプロマジン
 フルフェナジン等
イソニアジド
抗ヒスタミン剤等
相加的に抗コリン作用が増強するおそれがあるので、減量するなど慎重に投与すること。ともに抗コリン作用を有するため。
(アトロピン、アーテン)
MAO阻害剤
 セレギリン塩酸塩
 ラサギリンメシル酸塩等
抗コリン作用が増強するおそれがある。MAO阻害剤には肝薬物代謝酵素を阻害する作用がある。
(アトロピン)
強心配糖体製剤
 ジゴキシン等
強心配糖体製剤の毒性を増強するおそれがあるので、併用する場合には慎重に投与すること。本剤の腸管運動抑制作用により、強心配糖体製剤の消化管通過が遅延し、吸収が促進されると考えられる。
(ブスコパン)
ドパミン拮抗剤
 メトクロプラミド等
相互に消化管における作用を減弱するおそれがある。本剤は消化管運動を抑制するため、ドパミン拮抗剤の消化管運動亢進作用と拮抗する。

併用注意についての簡単な説明

クリック・タップで開きます。

・三環系抗うつ剤はそのまま抗うつ剤ですね。
フェノチアジン系薬剤は統合失調症に使われる薬ですが、鎮静目的でも使われます。
イソニアジドは抗結核薬です。
抗ヒスタミン剤はアレルギーの薬です。
この中での使用頻度は抗ヒスタミン薬が圧倒的に多いと思いますが、市販薬では一緒に配合されている事もよくあります。
便秘や口渇等あれば減量して様子をみても良いでしょう。

・MAO阻害薬はパーキンソン病に使われています。
上の表には「肝薬物代謝酵素を阻害する作用」と書いていますが、それ以外にもMAO阻害薬は交感神経の働きを強めるので、抗コリン薬と併用すると両方の作用が増強される可能性があります。
パーキンソンの薬の調節は結構シビアなので、抗コリン薬の入った市販薬はあまり飲まない方が良いでしょうね。

・強心配糖体は主に心不全に使われる薬です。
でも今はそれほど使われてないかな?心房細動がある人の脈のコントロールに使うくらいかと思います。

・ドパミン拮抗剤は精神系と消化器系に使うものがありますが、ここでは消化器に使うものを指します。
主に吐き気止めですね。
ドパミン拮抗薬と抗コリン薬は逆の作用をするため、両方の作用が弱まってしまいます。
吐き気と下痢、両方ある場合は感染性胃腸炎の可能性もあるし、下痢止めとして抗コリン薬は使わない方が良いでしょうね。

ここに書いてあることはあまり気にしなくて大丈夫ですが、上記の薬を服用中の方は「一応そういう可能性もあるんだな」と思っておいてください。

他の成分についてはこちらから。
成分の一覧表

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