「ベラドンナ総アルカロイド」についての簡単な解説です。
ベラドンナ総アルカロイドを含む市販薬の製品一覧
解説記事を書いたことのある製品を載せています。
風邪薬(総合感冒薬)
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製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。
製品名 | 1日あたりの成分量 |
---|---|
新ルルAゴールドDXα | 0.3mg |
新ルルAゴールドs | 0.3mg |
ストナジェルサイナスEX | 0.6mg |
ルルアタックNX | 0.3mg |
「かぜ薬の製造販売承認基準について」によると、市販の風邪薬では1日最大0.3mgとなっています。
でも『ストナジェルサイナスEX』は0.6mg入ってますね。なんでかは分かりません。
鼻炎薬は0.6mgまで入れられるので、そっちに合わせてるのかな?
鼻炎薬(飲み薬)
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製品名 | 1日あたりの成分量 |
---|---|
コルゲンコーワ鼻炎 ジェルカプセルα | 0.6mg |
新コンタック600プラス | 0.4mg |
ストナリニ・サット | 0.6mg |
パブロン鼻炎カプセルSα | 0.4mg |
市販の鼻炎薬では1日最大0.6mgとなっています。
(「鼻炎用内服薬の製造販売承認基準について」より)
分類・作用機序
ベラドンナ総アルカロイドに含まれる主な成分の化学構造式
(3つともWikipediaより)
分類など
「抗コリン薬」です。
「副交感神経遮断薬」とか「ムスカリン受容体拮抗薬」とも言います。
自律神経には交感神経と副交感神経と2つあって、そのうちの副交感神経に働くものですね。
ベラドンナという植物の根から抽出されたいろいろな有機化合物(アルカロイド)をまとめて「ベラドンナ総アルカロイド」と呼びます。
上に載ってる「アトロピン」「ヒヨスチアミン」「スコポラミン」などを含みます。
「ベラドンナ」とはイタリア語で「美しい女性(bella donna)」という意味だそうですね。
作用機序
副交感神経の節後線維終末というところから放出されたアセチルコリンがムスカリン受容体にくっつくことで副交感神経刺激作用が起きます。
抗コリン薬は競合的にこれをブロックします。
交感神経と副交感神経の働きはシーソーのような関係にあります。
一方が優位になるともう一方の働きは相対的に弱まります。
副交感神経が遮断されると交感神経の働きが相対的に優位になるため、副交感神経遮断薬(抗コリン薬)は交感神経刺激薬と似たような作用を示す場合があります。
効果や使用方法
効果
副交感神経の働きを抑えることでいろいろな効果を示します。
・散瞳(瞳孔を広げる)
・胃や腸の動きを抑える
・胆道の収縮を抑える
・気管支の収縮を抑える
・心拍数を上げる
・膀胱の緊張を緩める
・分泌を抑える
などの効果があります。
他にもパーキンソンに使ったりもしますね。
副交感神経の働きを抑える作用を「抗コリン作用」と言いますが、これは副作用として問題になる場合があります。
これについては後述します。
医療用の使用例
抗コリン薬がよく使われるのは、
・過活動膀胱
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・胆石による痛み
・パーキンソン
・散瞳目的
あたりでしょうか。
個人的にはお腹が痛い時によく使います。
消化性潰瘍や胃酸過多にも適応はあるのですが、今は他に適した薬があるので抗コリン薬はあまり使われないですね。
市販薬では、風邪薬・鼻炎薬に鼻水や涙を抑える効果を期待して配合されていますね。
でも医療用ではそういう使い方はしません。
現在主流で使われている第二世代抗ヒスタミン薬の売りは、第一世代抗ヒスタミン薬で問題になる抗コリン作用を少なくした事でもあるので…あえて抗コリン薬を追加するのも変な話ですね。
鼻アレルギー診療ガイドラインでは、治療に使われるのは主に「第二世代抗ヒスタミン薬」「ロイコトリエン拮抗薬」「鼻噴霧用ステロイド」となります。
(「メディエーター遊離抑制薬」や「トロンボキサンA2拮抗薬」などもありますが、あまり使っているのを見た事がありません)
オプションとして「血管収縮剤の点鼻薬」ですね。これは頓用となります。
あとは『ストッパ』のような下痢止めでしょうか(「ベラドンナ総アルカロイド」ではないですが)。
これは自分の常備薬でもあります。口がすごく渇くけど。
用法・用量
市販薬では、
風邪薬:1回0.1mg・1日3回(1日0.3mg)
鼻炎薬:1回0.2mg・1日3回(1日0.6mg)
あたりが一般的でしょうか。
鼻炎薬の方が多めに入れられるみたいです。
『ストナジェルサイナスEX』は風邪薬の分類なのに1日0.6mg入っていますけど。
医療用では「ベラドンナ総アルカロイド」そのものは存在しません。
アトロピン硫酸塩やブチルスコポラミンのように、単体の成分だけですね。
なので単純に量の比較をすることはできませんが、Wikipediaによると、
同程度の投与量では、
ヒヨスチアミンはアトロピンの98%の抗コリン活性を持つ。
スコポラミンはアトロピンの92%の抗コリン活性を持つ。
とのことです。
ベラドンナ総アルカロイドの主な成分は「アトロピン」「ヒヨスチアミン」「スコポラミン」である事を考えると、アトロピンと比較をすると分かりやすいかな?
例えば「アトロピン硫酸塩水和物原末」は1回0.5mg・1日3回まで使います。
ちなみに、この薬は毒薬の指定です。
使用上の注意点
抗コリン薬全般的に関わることを書いておきます。
いわゆる「抗コリン作用」が問題となります。
抗コリン薬なので抗コリン作用があるのは当たり前ですけど。
禁忌
医療用の「アトロピン硫酸塩水和物」では、
- 閉塞隅角緑内障
- 前立腺肥大による排尿障害
- 麻痺性イレウス
など疾患・状態にある方は禁忌となっています。
「ブスコパン」では上記の他に、
- 重篤な心疾患
に禁忌となっています。
緑内障や前立腺肥大、心疾患などがある人はすでに治療中だと思われるので、主治医に聞いてみるといいでしょう。
麻痺性イレウスの状態にある人が市販薬を使う事はないと思います(たぶん入院してる)。
大体の市販薬は「医師・薬剤師に相談」となっていて禁忌にはなっていません。
実際、排尿障害くらいであれば使用する事はよくあります。
副作用
出やすい副作用は口渇と便秘でしょうか。
医療用の「ブスコパン」のインタビューフォームによると、
- 口渇:9.4%
- 便秘:4.4%
- 眼の調節障害(散瞳):1.7%
- 心悸亢進(動悸):1.4%
- 鼓腸:0.65%)
とのことです。
「アトロピン硫酸塩」の方には割合は載ってなかったのですが似たようなものでしょう。
抗コリン薬全般的に、上から4つの副作用には注意してください。
口渇くらいなら我慢しても良いでしょうけど。
相互作用
いくつかの医療用医薬品のものを載せておきます。
併用注意
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
(アトロピン、ブスコパン、アーテン) 抗コリン作用を有する製剤 三環系抗うつ剤 アミトリプチリン イミプラミン等 フェノチアジン系薬剤 クロルプロマジン フルフェナジン等 イソニアジド 抗ヒスタミン剤等 | 相加的に抗コリン作用が増強するおそれがあるので、減量するなど慎重に投与すること。 | ともに抗コリン作用を有するため。 |
(アトロピン、アーテン) MAO阻害剤 セレギリン塩酸塩 ラサギリンメシル酸塩等 | 抗コリン作用が増強するおそれがある。 | MAO阻害剤には肝薬物代謝酵素を阻害する作用がある。 |
(アトロピン) 強心配糖体製剤 ジゴキシン等 | 強心配糖体製剤の毒性を増強するおそれがあるので、併用する場合には慎重に投与すること。 | 本剤の腸管運動抑制作用により、強心配糖体製剤の消化管通過が遅延し、吸収が促進されると考えられる。 |
(ブスコパン) ドパミン拮抗剤 メトクロプラミド等 | 相互に消化管における作用を減弱するおそれがある。 | 本剤は消化管運動を抑制するため、ドパミン拮抗剤の消化管運動亢進作用と拮抗する。 |
併用注意についての簡単な説明
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・三環系抗うつ剤はそのまま抗うつ剤ですね。
フェノチアジン系薬剤は統合失調症に使われる薬ですが、鎮静目的でも使われます。
イソニアジドは抗結核薬です。
抗ヒスタミン剤はアレルギーの薬です。
この中での使用頻度は抗ヒスタミン薬が圧倒的に多いと思いますが、市販薬では一緒に配合されている事もよくあります。
便秘や口渇等あれば減量して様子をみても良いでしょう。
・MAO阻害薬はパーキンソン病に使われています。
上の表には「肝薬物代謝酵素を阻害する作用」と書いていますが、それ以外にもMAO阻害薬は交感神経の働きを強めるので、抗コリン薬と併用すると両方の作用が増強される可能性があります。
パーキンソンの薬の調節は結構シビアなので、抗コリン薬の入った市販薬はあまり飲まない方が良いでしょうね。
・強心配糖体は主に心不全に使われる薬です。
でも今はそれほど使われてないかな?心房細動がある人の脈のコントロールに使うくらいかと思います。
・ドパミン拮抗剤は精神系と消化器系に使うものがありますが、ここでは消化器に使うものを指します。
主に吐き気止めですね。
ドパミン拮抗薬と抗コリン薬は逆の作用をするため、両方の作用が弱まってしまいます。
吐き気と下痢、両方ある場合は感染性胃腸炎の可能性もあるし、下痢止めとして抗コリン薬は使わない方が良いでしょうね。
ここに書いてあることはあまり気にしなくて大丈夫ですが、上記の薬を服用中の方は「一応そういう可能性もあるんだな」と思っておいてください。
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