『ベンザブロック®IP』の特徴・効果・注意点【薬剤師が解説】

この製品の特徴はありません。特徴がないのが特徴でしょうか。
もっとも基本的な総合感冒薬とも言えるかもしれません。

「熱からのかぜに、青のベンザ」とのことですが、解熱鎮痛剤の量が他と比べて多いわけではありませんし、どんな風邪薬にも入っているような最低限の成分しか入っていません。
その分、使いやすくはあります。

これで値段が安ければ「家庭の常備薬に」と言えるのですが、まあまあ高いですね。

とてもあっさりした製品で個人的には嫌いではないのですが、価値と価格が見合っているのか、記事を読んで判断していただけたらと思います。

他の風邪薬については一覧を作ってあるのでこちらを見てみてください。まだ数は少ないですが。
風邪薬(総合感冒薬)一覧

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基本情報

製造販売元:アリナミン製薬

・主な成分

成分名1日量(15歳以上の)はたらき
イブプロフェン450mg熱をさげ、痛みを和らげる
クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5mg鼻水、くしゃみを抑える
dl-メチルエフェドリン塩酸塩60mg気管支をひろげ、咳を鎮める
ジヒドロコデインリン酸塩24mg咳を抑える
無水カフェイン75mg頭痛・頭重感を和らげる
ヘスペリジン90mgビタミン補給?
スクロールできます
成分名1日量
(15歳以上の)
はたらき
イブプロフェン450mg熱をさげ、痛みを和らげる
クロルフェニラミン
マレイン酸塩
7.5mg鼻水、くしゃみを抑える
dl-メチルエフェドリン
塩酸塩
60mg気管支をひろげ、咳を鎮める
ジヒドロコデイン
リン酸塩
24mg咳を抑える
無水カフェイン75mg頭痛・頭重感を和らげる
ヘスペリジン90mgビタミン補給?

・包装

  • 『ベンザブロックIP錠』(錠剤):30錠、45錠(瓶包装)
  • 『ベンザブロックIP』(カプレット):18錠、30錠(PTP包装)
    (※カプレットとは、カプセルみたいな形の錠剤です)

各成分の効果・注意点

『ベンザブロックIP』の主要成分について、それぞれの効果と注意点を簡単にまとめています。

各成分名をタップ・クリックするとそれぞれの成分の簡単な解説記事にいきます。

  1. イブプロフェン
    • NSAIDsの一種。痛みや熱、炎症を抑えます。
    • 胃に負担がかかることがあります。アスピリン喘息にも注意を。
  2. クロルフェニラミンマレイン酸塩
    • 鼻水やくしゃみ、痒みを抑えますが、鼻づまりにはあまり効きません。
    • 特に眠気には注意してください。
    • 抗コリン作用により、眼圧上昇や排尿困難などの副作用が出る可能性があります。
  3. dl-メチルエフェドリン塩酸塩
    • 気管支拡張作用があり、咳を鎮めたり呼吸を楽にします。
    • 副作用には動悸や手の震えがあり、心疾患のある方は特に注意が必要です。
    • 濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
  4. ジヒドロコデインリン酸塩
    • 中枢性麻薬性鎮咳薬で、咳中枢を抑制することで咳を抑えます。
    • 痰を硬くする可能性があるので、主に痰のからまない咳に使います。
    • 便秘、眠気などの副作用に注意を。
    • 依存形成の可能性があり「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
    • 12歳未満は禁忌です(呼吸抑制のリスクが高い)。
  5. 無水カフェイン
    • 血管拡張性の頭痛や片頭痛の症状をやわらげます。
    • 覚醒作用があるので眠気防止にも。
    • 副作用として、不眠や振戦(手の震え)、動悸、めまいなどがあります。
  6. ヘスペリジン
    • ビタミンPというビタミン様物質(ビタミンではないです)。生薬の「陳皮」の主成分。
    • 抗炎症作用、抗アレルギー作用、抗酸化作用、免疫力アップなどの作用があるそう。
    • 血圧や狭心症の薬の中には、併用すると効き目が強くなったり弱くなったりする可能性がある薬があります。一応注意してください。

他の成分の薬を探してる方はこちらから。
成分の一覧表

使い方(用法・用量)

剤形年齢1回の服用量1日の服用回数
ベンザブロックIP錠
(錠剤)
15歳以上3錠3回
ベンザブロックIP
(カプレット)
15歳以上2錠3回
剤形年齢1回の
服用量
1日の
服用回数
ベンザブロックIP錠
(錠剤)
15歳以上3錠3回
ベンザブロックIP
(カプレット)
15歳以上2錠3回

「食後なるべく30分以内に」となっています。
イブプロフェンで胃痛が起こる方もいるので一応注意してください。
でもあまり心配は要らないです。

15歳未満の方は服用しないでくださいとのことです。

イブプロフェンが入っていると15歳未満には使えないことになっています。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)

医療用のイブプロフェンは小児の解熱に適応がないんですよね。
滅多にないですが、ライ症候群を警戒して、という事だと思います。

ライ症候群
極めてまれですが、小児がインフルエンザや水痘・帯状疱疹にかかってる間にアスピリンなどのサリチル酸系の解熱鎮痛剤を飲むと発症する事があります。
症状は、脳浮腫や頭蓋内圧の上昇によって激しい吐き気・嘔吐、けいれん、意識障害、高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血糖などが短期間に発現して、死に至ることもあります。

イブプロフェンはサリチル酸系ではなくて、プロピオン酸系と呼ばれるものになります。
ライ症候群と確定された症例はすべてアスピリン及びジクロフェナクとの併用例となります。他のNSAIDsに関しては禁忌にはなっていません。
インフルエンザ脳症についても問題になるのはジクロフェナクです。(メフェナム酸は微妙)

国際的に小児の解熱にはアセトアミノフェンかイブプロフェンが推奨されているのに、市販薬だとイブプロフェンが使えないのは少しもったいないですね。

15歳未満の方はアセトアミノフェンが入ってるものにしましょう。
大人の方でも解熱だけが目的の場合はアセトアミノフェンが良いと思います。

製品全体としての注意点

注意してほしいこと

いくつか注意点を書いておきます。

  • 眠気に注意:眠気が出る可能性があるので注意してください。
    • 服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」となっています。ただ、全然眠くならない方もいるのでそういう方は問題ないですね。
  • ジドブジン(商品名:レトロビル、コンビビル)服用中の方は注意してください。
    • イブプロフェンと併用すると出血傾向が強まる可能性があります。
    • この製品の添付文書には記載がないですが、医療用のイブプロフェンはジドブジンとの併用は禁忌となっています。
  • 喘息:イブプロフェンによって喘息発作が誘発される事があります。
    • 他の風邪薬や解熱鎮痛剤で喘息の症状が出た事がある人は、解熱鎮痛剤としてはアセトアミノフェンだけが入ってる風邪薬を選ぶと良いかと思います。
  • 喘息治療中の方
    • 気管支拡張薬のメチルエフェドリンが入っているので、喘息を治療中の方はすでに服用(吸入)してる可能性があります。過剰摂取にならないように注意してください。
    • ジヒドロコデインは気道分泌の抑制と気管支を収縮させる作用もあるので、基本的には喘息には使いません(喘息発作には禁忌)。
  • 抗コリン作用:口の渇きや目のかすみ、眼圧上昇、排尿困難、便秘などの症状が出る可能性があります。
    • 気になる場合は減量または中止してください。
  • 服用期間:「5日間を超えて服用しないでください」となっています。
    • 風邪薬は症状を緩和するもので、風邪自体を治すわけではありません。3~4日服用しても症状が良くならない場合は、医師の診察を受けた方が良いかと思います。
    • ジヒドロコデインのオーバードーズ(過剰摂取)の問題もあります。

妊娠・授乳中の使用について

大事な事ですが、対象者が限られるため折り畳みにしておきます。

クリック・タップで開きます。

妊娠中の方

妊娠後期(28週以降)の方は禁忌です。
(この製品の説明書では「出産予定日12週以内の妊婦は飲まないで」という書き方になっています)

イブプロフェンにより胎児の動脈管(心臓と大動脈をつなぐ血管)が収縮した、という報告があります。
妊娠後期の方は、解熱鎮痛剤としてはアセトアミノフェンだけが入ったものにした方が良いかと思います。
(アセトアミノフェンは短期間であれば問題ないとされています)

また、ジヒドロコデインは妊娠28週以降は推奨されません
豪州ADECという危険度分類ではジヒドロコデインの分類はAとなり、「今までの使用経験上では大丈夫だった」とのことです。
ただ、違う基準(Briggs基準)によるとリスク4の「妊娠28週以降は胎児への危険性が示唆される」という分類になっています。

メチルエフェドリンによって胎児が頻脈を起こす可能性もありますが、量が少なめなのであまり心配は要らないかと思います。

服用するにしても短期間の使用にとどめておいた方が無難だとは思います。
原則として、妊娠してる方は市販薬は使わず受診して医師に薬を処方してもらった方が良いと思います。
(というか、必ず受診してください)

授乳中の方

この製品の説明書には
授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること
と書いてあります。
ジヒドロコデインが入っているため、この記載があります。

とはいえ、そこまで心配する事もないかと思います。

Mothers’ Milk基準では、この製品に入ってる成分中一番リスクの高いもので、

  • ジヒドロコデイン
  • クロルフェニラミン

の2つが「L3(概ね適合)」となっています。

ジヒドロコデインは基本的には「授乳を避けること」となっています。母乳に移行して乳児にモルヒネ中毒(傾眠、哺乳困難、呼吸困難等)が生じたとの報告があります。
母親に便秘や眠気などの副作用が出ている場合は授乳をやめた方が良いでしょうね。
似たようなものでデキストロメトルファンというのがあり、こちらは一応安全に使用可能となっています(効くかどうかは別)。

心配な方はジヒドロコデインが入っていない薬を選ぶようにしましょう。

メチルエフェドリンに関してはデータがありません。
基本的には「避けてください」と言われる事が多いですが、生後3ヵ月から使える製品も存在します。

「多くの薬は母親が飲んだ量の1%未満しか母乳中に移行しない」という事を考えると過剰な心配はいらないかと思います。

心配であれば授乳後に薬を服用すると良いでしょう。次の授乳までに薬はかなり分解されてます。
この場合、食後とかは気にしないでOKです。4~5時間程度時間を空けて、服用できるタイミングで服用してください。

心配な方は、薬を服用中は粉ミルクを使うという手もあります。

妊娠・授乳中の薬物治療に関して不安を持つ方も多いかと思います。
そういう方の相談に乗ってくれる機関があるのでそこのサイトのリンクを貼っておきます。
妊娠と薬情報センター:https://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

製品の特徴や利点、個人的な感想

この製品の特徴はありません。特徴がないのが特徴でしょうか。
ヘスペリジンが入っているのは特徴と言えるかもしれませんが、ビタミンですらないし。

解熱鎮痛剤にはイブプロフェンが1日450mg入っていますが、人によってはアセトアミノフェンが1日900mg入っているものよりも弱く感じると思います。

一般的な風邪薬に最低限入っているものが入っている、という感じですね。

これ以上あっさりした総合感冒薬はなかなか無いと思います。
それが特徴と言えるかもしれませんね。

ただ、効果が他の風邪薬に劣るか?と言われると、それほど違いはないと思います。
イブプロフェンが1日450mgだろうが600mgだろうが、大して変わりません。

無駄に何かを入れるよりは、これくらいの方が良いのかもしれませんね。

もし症状が発熱だけであれば、総合感冒薬ではなくて解熱鎮痛剤として販売されているものを使うのも良いかと思います。
その場合、アセトアミノフェンのみが入った製品をお勧めします。
(原則として1回300mg・1日3回までですが、短期間であれば倍量(1回600mg・1日3回)でも良いと思います。立場上お勧めはできませんけど)

使用した方の口コミ・レビュー・値段など

「ものログ」というサイトの口コミです。

良い評価としては、

「風邪薬はコレが一番いい。どんな風邪でもコレですぐ治る。」
「熱風邪、頭痛に良く効く」
「飲みやすい」

といった具合。

否定的な意見としては、

「すごく効くけど、高い」
「薬高いなー」

といった感じ。

一応評価は高めですね。否定的な意見も探したのですが、この2つかありませんでした。

良い意見の方も「効いた」とかそんな感じです。あんまり詳しいレビューはありませんでしたね。

個人的な意見としては「これが効くならどんな風邪薬でも効くかな…」といったところです。
プラセボ効果ってバカにできないですね。

値段について

メーカーの希望小売価格(税込)を見ると、

ベンザブロックIP錠
(錠剤)
30錠:1,650円
45錠:2,178円
ベンザブロックIP
(カプレット)
18錠:1,815円
30錠:2,618円

ということでした。

Yahooショッピング(送料含まず)で見てみると、

剤形包装値段1日分に換算
ベンザブロックIP錠
(錠剤)
30錠1,000~1,700円300~510円
45錠1,200~2,000円240~400円
ベンザブロックIP
(カプレット)
18錠1,200~1,600円400~533円
30錠1,500~2,200円300~440円

※1日分のは、錠剤は1日9錠、カプレットは1日6錠で計算
※2025年2月時点です。

こんな感じでした。Amazonとか楽天だとまた違うと思いますけど。

1番安いのでも1日あたり240円。
この内容でこれはちょっと高いですね。

この記事を読んで、それでも「買おうかな?」と興味を持たれた方へ

まとめ

この記事では『ベンザブロックIP』について、各成分の効果と注意点、個人的な感想、使用者のレビューなどをご紹介しました。

ここまで特徴のない風邪薬は他にあまり見かけないですね。
必要最低限の成分構成・成分量という感じです。

「熱からのかぜに、青のベンザ」となっていますが、イブプロフェンが1日450mgしか入ってないので発熱にもそこまで効果的とも言えないですし。

もっとも基本的な総合感冒薬とも言えますが、値段が高いです。
この内容なら1日あたり150円以下でも良いと思いますけど。

他の風邪薬については一覧を作ってあるのでこちらを見てみてください。まだ数は少ないですが。
風邪薬(総合感冒薬)一覧

風邪の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。

ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。

効果を感じられない場合や、症状が改善しない場合は、適切な医療機関を訪れることをお勧めします

上の方でも紹介しましたが、再度リンクを貼っておきます

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