「プロメタジン」についての簡単な解説です。
プロメタジンを含む市販薬の製品一覧
解説記事を書いたことのある製品を載せています。
風邪薬(総合感冒薬)
クリック・タップで開きます。
製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。
製品名 | 1日あたりの成分量 |
---|---|
パイロンPL | 32.4mg |
パイロンPL Pro | 54mg |
※「パイロンPL」と「パイロンPL Pro」は一つの記事にまとめています。
市販の風邪薬に配合できる1日の最大用量は、一応40mgとなっています。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)
ただ、これはあくまで基準らしくて、それを超えるのもたまにありますね。
『パイロンPL Pro』は医療用医薬品と同じ組成になっていて実績があるからOKなのかな?
分類・作用機序
プロメタジン塩酸塩の化学構造式
※風邪薬に配合できるプロメタジンは「プロメタジンメチレンジサリチル酸塩」なのですが、化学構造式が複雑なので塩酸塩のを載せてます。
分類
「第一世代抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)」となります。
抗ヒスタミン薬には第一世代と第二世代がありますが、1983年以降に発売されたものが第二世代となります。
ヒスタミンの受容体はH1~H4が知られていますが、この系統の薬はH1受容体の働きを抑えます。
(H2受容体遮断は胃薬、H3受容体遮断は眩暈に使ったりします)
単に「抗ヒスタミン薬」といった場合は、通常はこの「H1受容体拮抗薬」の事をいいます。
ただ、この成分は一応抗ヒスタミン薬に分類されますが、医療用の場合はアレルギー疾患にはあまり使いません。
作用機序
花粉などのアレルゲンがマスト細胞などを刺激すると、そこからヒスタミンという物質が出てきます。
そのヒスタミンが気管支や血管の平滑筋、血管内皮細胞、知覚神経などにあるH1受容体にくっつくと、鼻水やくしゃみ、かゆみなどのアレルギー症状が出てきます。
抗ヒスタミン薬はこのH1受容体を競合的にブロックします。
図にするとこんな感じ。
H1受容体はヒスタミンがなくてもある程度活性化しているのですが、抗ヒスタミン薬は逆作動薬(インバース・アゴニスト)として、この働きも抑えます。
これが一般的な抗ヒスタミン薬の作用ではあるのですが、プロメタジンはこの抗ヒスタミン作用よりも、
- 鎮静作用
- 制吐作用
- 抗パーキンソン作用
などの方で利用される事が多いですね。
効果や使用方法
効果
鼻水やくしゃみ、かゆみなどのアレルギー症状を緩和します。
ただ、鼻づまりには効果はほぼありません。
第二世代の方は鼻づまりにも多少効果があるとされています(弱いと思いますけど)。
また、第一世代特有ですが、抗コリン作用、抗嘔吐作用、中枢神経作用、局所麻酔作用などがありますね。
※ただし、鼻水の分泌抑制を目的として、あえて抗コリン薬を配合している風邪薬や鼻炎薬もあります。
ただ、このプロメタジンは抗コリン作用を利用してパーキンソニズム(振戦(手の震えなど)とか)にも使います。
個人的には、鼻水にあえてこのプロメタジンを使う事もないでしょう、とは思います。
他にたくさん選択肢がありますし。
医療用の使用例
プロメタジン単体の医療用薬としては、
- ヒベルナ
- ピレチア
があります。
抗ヒスタミン薬の分類ではあるのですが、鎮静目的で使う事が多いと思います。
逆に鼻水や痒みで使っているのは見た事がありません(適応はある)。
総合感冒薬として
- PL配合顆粒
- サラザック配合顆粒
- セラピナ配合顆粒
- トーワチーム配合顆粒
- ピーエイ配合錠(これだけ錠剤)
- マリキナ配合顆粒
に含まれています。
こちらはちゃんと鼻水を抑える目的ですね。
というか、上記の薬には解熱鎮痛剤なども入っているのですが鼻水にしか効かない印象です。
鼻水に関しては「効果あるよ」という人が多いですね。
抗コリン作用も強いので、「鼻水を止める」という事だけを見ると意外と良いのかもしれないですね。
用法・用量
市販薬の風邪薬では、おそらくですが『パイロンPL』のシリーズにしか入っていません。
そして『パイロンPL Pro』は、医療用の「PL配合顆粒」と全く同じ内容になっています。用法・用量も同じです。
プロメタジンメチレンジサリチル酸塩として
1回13.5mg・1日4回(1日54mg)
となっています。
実際には1日3回で処方される事が多いですけどね。
使用上の注意点
医療用の「ヒベルナ糖衣錠」の添付文書等を基に書かせてもらいます。
これは「プロメタジン塩酸塩」になりますが、同じものと思っていただいて大丈夫です。
禁忌
- フェノチアジン系化合物又はその類似化合物に対し過敏症の既往歴
- 昏睡状態
- バルビツール酸誘導体・麻酔剤等の中枢神経抑制剤の強い影響下
- 閉塞隅角緑内障
- 前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患がある
- 2歳未満の乳幼児
上記のような疾患・状態にある方は禁忌となっています。
他の抗ヒスタミン薬よりも多めですね。
2の昏睡状態、3のバルビツール酸どうのこうの、6の乳幼児などについては市販薬を使用する事がないと思うので割愛します。
1のフェノチアジン系ですが、抗精神病薬ですね。
- クロルプロマジン(ウインタミン、コントミン)
- レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)
- ペルフェナジン(ピーゼットシー、トリラホン)
- フルフェナジン(フルメジン、フルデカシン)
- プロクロルペラジン(ノバミン)
- プロペリシアジン(ニューレプチル)
などがあります。()内が商品名です。
プロメタジンは構造式が似てるので、上記の薬で過敏症が出た事がある人は注意してください。
4と5は抗コリン作用が問題となります。
開放隅角緑内障では基本的には禁忌とはなりませんが、状態によっては抗コリン作用によって隅角閉塞が起こる可能性も否定できません。
他の風邪薬では排尿困難や緑内障は禁忌ではなく「医師等に相談」となっていますが、
『パイロンPL Pro』は排尿障害と緑内障には禁忌となっています。
(『パイロンPL』の方は禁忌ではなく医師等に相談)
副作用
重大な副作用として、非常に稀ですが
- 悪性症候群(頻度不明)
- 乳児突然死症候群、乳児睡眠時無呼吸発作(いずれも頻度不明)
があるとされています。
悪性症候群の初期症状は発熱、意識障害、強度の筋強剛、不随意運動、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗などがあり、最悪の場合は横紋筋融解症から急性腎不全を起こし死に至ります。
原因はまだハッキリとは分かりませんが、特に抗精神病薬(ドパミン受容体遮断)の服用・用量の変更時に起きやすいとされていますね。パーキンソン病薬(ドパミン)を急に中止した時も起きやすいとされているので、ドパミンが関係している可能性が高いようです。
乳幼児には与えない方が良いでしょうね。小児にも推奨されません。
他の副作用については「ヒベルナ糖衣錠」のインタビューフォームから、経口投与において1%以上のものを書きだしておきます。
- 眠気(13.2%)
- 口渇(2.6%)
- 頭痛(2.4%)
- 発汗(1.9%)
- めまい(1.8%)
- 倦怠感(1.4%)
となっています。
他にも、発疹、光線過敏、肝障害、白血球・顆粒球減少、視覚障害、痙攣、悪心・嘔吐、下痢・腹痛、血圧上昇、低血圧、頻脈などが出る可能性があります。
相互作用
併用禁忌のものはありませんが、いくつか併用注意のものがあります。
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
抗コリン作用を有する薬剤 フェノチアジン系化合物 三環系抗うつ剤等 | 腸管麻痺を来し麻痺性イレウスに移行することがあるので、腸管麻痺があらわれた場合には投与を中止すること。なお、この悪心・嘔吐は本剤及び他のフェノチアジン系化合物等の制吐作用により不顕性化することもあるので、注意すること。 | 併用により抗コリン作用が強くあらわれる。 |
中枢神経抑制剤 バルビツール酸誘導体・麻酔剤等 | 相互に中枢神経抑制作用を増強することがあるので、減量する等慎重に投与すること。 | ともに中枢神経抑制作用を有する。 |
アルコール | 相互に中枢神経抑制作用を増強することがある。 | ともに中枢神経抑制作用を有する。 |
降圧剤 カルシウム拮抗剤 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤等 | 相互に降圧作用を増強することがあるので、減量する等慎重に投与すること。 | ともに降圧作用を有する。 |
一番上のは抗精神病薬、抗うつ剤ですね。
鼻水を止めるのにプロメタジンを使うのは避けた方が良いかもしれません。
バルビツール酸系はてんかんに使いますね。眠気が強くなるかもしれません。
以前は睡眠薬としても使われていましたが、今はそっちではあまり使われていません。ベンゾジアゼピン系がどうしても効かない人とかかな?
血圧に関してはあまり気にした事がないのですが、変動があればプロメタジンは止めた方が良いでしょう。
コメント