「酸化マグネシウム」についての簡単な解説です。
酸化マグネシウムを含む市販薬の製品一覧
解説記事を書いたことのある製品を載せています。
風邪薬(総合感冒薬)
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製品名 | 1日あたりの成分量 |
---|---|
エスタックEXネオ | 300mg |
市販の風邪薬に配合できる1日の最大用量は500mgとなっています。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)
分類・作用機序
酸化マグネシウムの分子式は「MgO」です。Mgがマグネシウム、Oが酸素ですね。
分類
「制酸剤」であり「緩下剤」でもあります。
かぜ薬や解熱鎮痛剤などに配合されている場合は制酸剤としてですね。
作用機序
制酸剤としての作用
胃の中で胃酸を中和して胃の負担を和らげる作用があります。
胃酸と反応すると、水と「塩化マグネシウム」という成分ができます。
(式にすると、MgO+2HCl→MgCl2+H2O)
この反応ではガス(二酸化炭素)が発生しないため、胃を刺激しにくい制酸剤として使われています。
また、酸化マグネシウムは水に溶けにくいため、反応がゆっくり進みます。その分、効果も長続きしやすいのが特徴です。
下剤としての作用
腸で便をやわらかくして便通を促す作用があります。
腸の中では酸化マグネシウムが水に溶けにくい成分(Mg(HCO₃)₂やMgCO₃)に変わり、腸の壁から水分を引き寄せる働きをします。
その結果、腸の中の内容物が柔らかくなりスムーズに排便できるようになります。
また、便が水分を含むことで膨張し腸を刺激することで蠕動運動を亢進して排便を促します。
効果や使用方法
効果
胃酸を中和することで、胃の負担を軽減します。
市販薬では解熱鎮痛剤など胃に負担がかかりやすい薬に一緒に配合されていることが多いですね。
胃薬としても使われているとは思いますが、効果としては弱いかと思います。
似たもので「水酸化マグネシウム」というのがありますが、こちらは酸化マグネシウムよりも効果が早いので頓服で使う事がありますね。
ただ、一般的には下剤として使う事の方が圧倒的に多いかな、と思います。
習慣性もなく使いやすいですね。
便秘といったらまず最初にこれ、という感じです。
ただ、ちょっと量を増やすとすぐに水様便になったりして、調節がちょっと難しいところもあります。
また、飲み併せの良くないものが結構あります。下の「相互作用」のところに書いておきます。
また、『エスタックEXネオ』では解熱鎮痛剤であるイブプロフェンの溶出を早くする、という目的でも使っているようですね(イブプロフェンは酸性より中性の方が早く溶けるそう)。
医療用の使用例
酸化マグネシウム単体のものあれば、胃薬に配合されているのもあります。
単体の薬の適応は「胃炎」「胃・十二指腸潰瘍」「便秘症」「尿路シュウ酸カルシウム結石の発生予防」などがありますが、一番使われるのは「便秘症」、つまり下剤ですね。
便秘で受診した場合、まず最初に処方されると思います。
「マグミット」とか「酸化マグネシウム「〇〇」」とか見た事がある人も多いのではないでしょうか。
用法・用量
市販の風邪薬に配合できる最大用量は、1日500mg(0.5g)となっています。
(便秘薬については記事を書き次第ここに追記します)
医療用の場合は、
- 胃炎等:1日0.5~1g・数回分服
- 便秘症:1日2g・3回分服、または寝る前1回
となってはいますが、便秘に使う場合は人や症状によってかなり調節します。
初めて飲む場合は、1日1gくらいから始めてみると良いでしょう。
330mgの錠剤を一つ飲む飲まないで便の状態が結構変わります。体調や食事内容でも変わってくるので、ご自身で調節していただく感じですね。
これだけだと出が悪い場合は、腸の動きを良くする刺激性の下剤(例:センナ)を追加して使ったりします。
使用上の注意点
医療用の「マグミット」の添付文書を参考に書かせていただきます。
副作用
重大な副作用として高マグネシウム血症(頻度不明)が報告されています。
症状としては悪心・嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、皮膚潮紅、筋力低下、傾眠など。
重篤な場合は呼吸抑制、意識障害、不整脈を起こし心停止に至ることがあります。
酸化マグネシウム自体は非吸収性とされていますが、体内で遊離したマグネシウムイオンは一部吸収されます。
健常人であればそれほど問題になる事はないのですが、腎機能が低下している人はマグネシウムの排泄が十分になされず、高マグネシウム血症になる事があります。
腎機能が低下している方や、長期間の大量摂取を続けている場合には注意が必要です。
他の副作用としては下痢がありますが、これは量を減らせば良いですね。
相互作用
併用禁忌のものはありませんが、併用注意のものがあります。
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
テトラサイクリン系抗生物質 テトラサイクリン ミノサイクリン等 ニューキノロン系抗菌剤 シプロフロキサシン トスフロキサシン等 ビスホスホン酸塩系骨代謝改善剤 エチドロン酸二ナトリウム リセドロン酸ナトリウム等 抗ウイルス剤 ラルテグラビル エルビテグラビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミドフマル酸塩等 | これらの薬剤の吸収が低下し、効果が減弱するおそれがあるので、同時に服用させないなど注意すること。 | マグネシウムと難溶性のキレートを形成し、薬剤の吸収が阻害される。 |
セフジニル セフポドキシム プロキセチル ミコフェノール酸モフェチル ペニシラミン | これらの薬剤の吸収が低下し、効果が減弱するおそれがあるので、同時に服用させないなど注意すること。 | 機序不明 |
アジスロマイシン セレコキシブ ロスバスタチン ラベプラゾール ガバペンチン | これらの薬剤の血中濃度が低下するおそれがある。 | 機序不明 |
ジギタリス製剤 ジゴキシン ジギトキシン等 鉄剤 フェキソフェナジン | これらの薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがあるので、服用間隔をあけるなど注意すること。 | マグネシウムの吸着作用又は消化管内・体液のpH上昇によると考えられる。 |
ポリカルボフィルカルシウム | ポリカルボフィルカルシウムの作用が減弱するおそれがある。 | ポリカルボフィルカルシウムは酸性条件下でカルシウムが脱離して薬効を発揮するが、本剤の胃内pH上昇作用によりカルシウムの脱離が抑制される。 |
高カリウム血症改善イオン交換樹脂製剤 ポリスチレンスルホン酸カルシウム ポリスチレンスルホン酸ナトリウム | これらの薬剤の効果が減弱するおそれがある。また、併用によりアルカローシスがあらわれたとの報告がある。 | マグネシウムがこれらの薬剤の陽イオンと交換するためと考えられる。 |
活性型ビタミンD3製剤 アルファカルシドール カルシトリオール等 | 高マグネシウム血症を起こすおそれがある。 | マグネシウムの消化管吸収及び腎尿細管からの再吸収が促進するためと考えられる。 |
活性型ビタミンD3製剤 アルファカルシドール カルシトリオール等 大量の牛乳 カルシウム製剤 | milk-alkali syndrome(高カルシウム血症、高窒素血症、アルカローシス等)があらわれるおそれがあるので、観察を十分に行い、このような症状が現れた場合には投与を中止すること。 | 機序:代謝性アルカローシスが持続することにより、尿細管でのカルシウム再吸収が増大する。 危険因子:高カルシウム血症、代謝性アルカローシス、腎機能障害のある患者。 |
リオシグアト | 本剤との併用によりリオシグアトの血中濃度が低下するおそれがある。 本剤はリオシグアト投与後1時間以上経過してから服用させること。 | 消化管内pHの上昇によりリオシグアトのバイオアベイラビリティが低下する。 |
ロキサデュスタット バダデュスタット | これらの薬剤と併用した場合、これらの薬剤の作用が減弱するおそれがある。 | 機序不明 |
炭酸リチウム | 高マグネシウム血症を起こすおそれがある。 | 機序不明 |
H2受容体拮抗薬 ファモチジン ラニチジン ラフチジン等 プロトンポンプインヒビター オメプラゾール ランソプラゾール エソメプラゾール等 | 本剤の緩下作用が減弱するおそれがある。 | 胃内のpH上昇により本剤の溶解度が低下するためと考えられる。 |
ミソプロストール | 下痢が発現しやすくなる。 | ミソプロストールは小腸の蠕動運動を亢進させ、小腸からの水・Naの吸収を阻害し、下痢を生じさせる。本剤には緩下作用があるので、両者の併用で下痢が発現しやすくなる。 |
特に一部の抗生物質は、酸化マグネシウムなど金属を含む薬と一緒に服用すると吸収が下がってしまいます。
マグネシウム以外に、鉄、カルシウム、アルミニウムなどが問題になります。
これらを服用中の方が抗生物質を処方された場合は、薬局で相談してみてください。
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