「カンゾウ(甘草)」についての簡単な解説です。
が、生薬は苦手なのでほとんどが調べたものになります。
カンゾウ(甘草)を含む市販薬の製品一覧
解説記事を書いたことのある製品を載せています。
風邪薬(総合感冒薬)
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製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。
製品名 | 1日あたりの成分量 |
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エスタック総合感冒 | カンゾウエキス:187.5mg (原生薬として750mg) |
プレコール持続性カプセル | カンゾウエキス末:118mg (原生薬として983mg) |
以前は、市販の風邪薬では1日最大
粉末:1.5g(1,500mg)
エキス:原生薬換算で5g(5,000mg)
となっていました。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)
ただ、平成28年4月1日にこれは廃止されたようですね。
鼻炎薬(飲み薬)
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製品名 | 1日あたりの成分量 |
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アネトン アルメディ鼻炎錠 | カンゾウ末:300mg |
風邪薬と同じで以前は1日最大量が規定されてましたが、現在は特にないようです。
分類・作用
分類など
漢方に含まれる生薬です。
ウラルカンゾウまたはスペインカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの、だそうです。
漢方ではかなり多く使われている生薬ですね。
甘いので単に飲みやすくする目的で使われる場合もあると思いますけど。
甘草の主成分はグリチルリチン酸となります。
この成分については別に解説記事を書いてます。
作用・使用上の注意・製品一覧 「グリチルリチン酸」についての簡単な解説です。 グリチルリチン酸を含む市販薬の製品一覧 解説記事を書いたことのある製品を載せています。 ※ここでご紹介している製…
作用
漢方では緩和作用、止渇作用があるとされています。
緩和作用とは、体内の状態を穏やかに調整する作用を指します。
- 他の生薬の副作用を軽減する
複数の生薬を組み合わせる際に作用を調和し、副作用を和らげる。 - 痛みを和らげる
筋肉の痙攣を抑えたり、鎮痛・炎症抑制作用を持つ。
甘草は「調和薬」としてかなり多くの漢方に含まれていますね。
止渇作用とは、文字通り「渇きを止める」作用を指します。ただし、ここでいう「渇き」は単に喉が渇くという意味だけではありません。
- 体液バランスを整える
体の潤いを保持する力をサポートする。 - 炎症や熱を抑える
体に余分な熱がこもったり、炎症が起きることで生じる「渇き」や口の乾燥感を軽減する。
甘草単独の漢方(甘草湯)もあり、これは咳やのどの痛みに使われます。
一つの生薬だけを使う漢方は珍しいですね。
また、甘草には主要成分であるグリチルリチン酸のほか、イソリクイリチゲニンというフラボノイド成分も含まれています。
この成分は抗酸化作用や抗炎症作用を持つことで知られ、炎症の抑制や細胞の健康維持に役立つと考えられています。
甘草は文字通り甘いので、薬以外にも味噌や醤油、お菓子などの甘味料としても使われていますね。
効果や使用方法
効果
風邪薬に配合してる理由としては、
・咳止め
・のどの痛みをやわらげる
といったところだと思います。
鼻炎薬に配合してるのは抗アレルギー作用、つまり鼻水を抑える効果を期待してですね。
医療用の使用例
かなり多くの漢方に含まれています。きつねが調べたところ、全部で109種類。
一応リストを載せてますが、長いので折り畳みにしておきます。
1日量が特に多いもの(2.5g以上)は黄色線を引いておきます。
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五十音順です。
- 安中散(アンチュウサン)
- 胃苓湯(イレイトウ)
- 温経湯(ウンケイトウ)
- 越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)
- 黄耆建中湯(オウギケンチュウトウ)
- 黄芩湯(オウゴントウ)
- 黄連湯(オウレントウ)
- 乙字湯(オツジトウ)
- 葛根湯(カッコントウ)
- 葛根加朮附湯(カッコンカジュツブトウ)
- 葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)
- 加味帰脾湯(カミキヒトウ)
- 加味逍遙散(カミショウヨウサン)
- 甘草湯(カンゾウトウ)
- 甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)
- 桔梗湯(キキョウトウ)
- 帰脾湯(キヒトウ)
- 芎帰膠艾湯(キュウキキョウガイトウ)
- 芎帰調血飲(キュウキチョウケツイン)
- 九味檳榔湯(クミビンロウトウ)
- 荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)
- 桂枝加黄耆湯(ケイシカオウギトウ)
- 桂枝加葛根湯(ケイシカカッコントウ)
- 桂枝加厚朴杏仁湯(ケイシカコウボクキョウニントウ)
- 桂枝加芍薬大黄湯(ケイシカシャクヤクダイオウトウ)
- 桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)
- 桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)
- 桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)
- 桂枝加苓朮附湯(ケイシカリョウジュツブトウ)
- 桂枝湯(ケイシトウ)
- 桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)
- 桂芍知母湯(ケイシャクチモトウ)
- 啓脾湯(ケイヒトウ)
- 桂麻各半湯(ケイマカクハントウ)
- 香蘇散(コウソサン)
- 五虎湯(ゴコトウ)
- 五積散(ゴシャクサン)
- 五淋散(ゴリンサン)
- 柴陥湯(サイカントウ)
- 柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)
- 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
- 柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)
- 柴朴湯(サイボクトウ)
- 柴苓湯(サイレイトウ)
- 酸棗仁湯(サンソウニントウ)
- 滋陰降火湯(ジインコウカトウ)
- 滋陰至宝湯(ジインシホウトウ)
- 四逆散(シギャクサン)
- 四君子湯(シクンシトウ)
- 梔子柏皮湯(シシハクヒトウ)
- 炙甘草湯(シャカンゾウトウ)(炙甘草:甘草を炙ったもの)
- 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
- 芍薬甘草附子湯(シャクヤクカンゾウブシトウ)
- 十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
- 十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)
- 潤腸湯(ジュンチョウトウ)
- 小建中湯(ショウケンチュウトウ)
- 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
- 小柴胡湯加桔梗石膏(ショウサイコトウカキキョウセッコウ)
- 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
- 消風散(ショウフウサン)
- 升麻葛根湯(ショウマカッコントウ)
- 参蘇飲(ジンソイン)
- 神秘湯(シンピトウ)
- 清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)
- 清暑益気湯(セイショエッキトウ)
- 清心蓮子飲(セイシンレンシイン)
- 清肺湯(セイハイトウ)
- 川芎茶調散(センキュウチャチョウサン)
- 疎経活血湯(ソケイカッケツトウ)
- 大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)
- 大防風湯(ダイボウフウトウ)
- 竹筎温胆湯(チクジョウンタントウ)
- 治打撲一方(ヂダボクイッポウ)
- 治頭瘡一方(ヂヅソウイッポウ)
- 調胃承気湯(チョウイジョウキトウ)
- 釣藤散(チョウトウサン)
- 通導散(ツウドウサン)
- 桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
- 当帰飲子(トウキインシ)
- 当帰建中湯(トウキケンチュウトウ)
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)
- 当帰湯(トウキトウ)
- 二朮湯(ニジュツトウ)
- 二陳湯(ニチントウ)
- 女神散(ニョシンサン)
- 人参湯(ニンジントウ)
- 人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)
- 排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)
- 麦門冬湯(バクモンドウトウ)
- 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
- 白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)
- 附子理中湯(ブシリチュウトウ)
- 平胃散(ヘイイサン)
- 防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)
- 防風通聖散(ボウフウツウショウサン)
- 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
- 麻黄湯(マオウトウ)
- 麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)
- 麻杏薏甘湯(マキョウヨクカントウ)
- 薏苡仁湯(ヨクイニントウ)
- 抑肝散(ヨクカンサン)
- 抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)
- 六君子湯(リックンシトウ)
- 立効散(リッコウサン)
- 竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)
- 苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)
- 苓姜朮甘湯(リョウキョウジュツカントウ)
- 苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)
※『今日の治療薬』を参考にしています。
甘草がないと漢方が成り立たなくなるくらい、基本的な生薬ですね。
耳鼻科や消化器科、婦人科、呼吸器科、精神科、歯科など、あらゆる科から処方される可能性があります。
複数の漢方を服用している方は重複している可能性もあるので注意してください。
特に、別々の医療機関で処方してもらっている方は薬局で一度確認してもらっても良いでしょうね。
用法・用量
市販の風邪薬や鼻炎用内服薬に含まれる甘草について、これまでの基準と現在の状況を簡単に説明します。
〇昔の基準
昭和53年(1978年)の通知では、以下の基準が設定されていました。
- 粉末(カンゾウ末):1日最大5g
- エキス(カンゾウエキス、エキス末):原生薬換算で1日最大5g
しかしその後、粉末のみ1日1.5gまでに制限されたようです。この理由についてははっきり分かりませんが、粉末は加工が少ないため成分濃度のばらつきが影響した可能性があります。
〇現在の状況
平成28年に通知が廃止されたため、現在は一律の規定が存在しないようです。
ただし、副作用のリスクを考えて製薬メーカーが自主的に1日1g以下に抑えている可能性があります。
- なぜ1g以下なのか?
1日1g以上にすると、添付文書に副作用(偽アルドステロン症など)の注意喚起を記載する必要があるため、メーカーがリスクを回避している可能性があります。
医療用においては基本的に漢方として使いますが、甘草の量は様々ですね。
量が一番多いのは「甘草湯」で、1日にエキス粉末で1,900mg(原生薬換算で8g)含まれています。
他の漢方では1~2g程度が一般的ですね。
現在の基準が緩和されていても、薬の作用や副作用はが変わるわけではありません。
用法・用量を守って、長期使用には注意してください。
使用上の注意点
「クラシエ甘草湯エキス細粒」の添付文書を参考に書かせていただきます。
禁忌
- アルドステロン症
- ミオパシー(ミオパチー)
- 低カリウム血症
こういった状態にある方は禁忌となっています。
低カリウム血症、高血圧症などを悪化させるおそれがあります。
ただ、市販薬では1日量が1g以下(2.5g以下?)のものだと基本的には禁忌とはなっていません。
成分量が少ないため副作用のリスクは低いのでしょうね。
副作用
重大な副作用としては、
- 偽アルドステロン症(頻度不明)
- 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、尿量減少、体重増加などの症状があらわれることがあります。
- ミオパチー(頻度不明)
- 低カリウム血症の結果としてミオパチーがあらわれることがあります。
- 脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常があった場合は中止してください。
がありますが、稀なのでそれほど気にしなくて良いでしょう。
漢方薬やグリチルリチン酸を長期間摂取しなければ問題ありません。
ただ、カリウムを下げる作用があるので低カリウム血症の方は注意した方が良いでしょうね。
相互作用
いくつか併用注意のものがあるので載せておきます。
併用注意
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
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カンゾウ含有製剤 芍薬甘草湯 補中益気湯 抑肝散 等 グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤 グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・L-システイン グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・DL-メチオニン配合錠 等 ループ系利尿剤 アゾセミド トラセミド フロセミド 等 チアジド系利尿剤 トリクロルメチアジド ヒドロクロロチアジド 等 | 偽アルドステロン症があらわれやすくなる。また、低カリウム血症の結果として、ミオパチーがあらわれやすくなる。 | グリチルリチン酸及び利尿剤は尿細管でのカリウム排泄促進作用があるため、血清カリウム値の低下が促進されることが考えられる。 |
併用注意についての簡単な説明
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