「ジフェンヒドラミン」についての簡単な解説です。
ジフェンヒドラミンを含む市販薬の製品一覧
解説記事を書いたことのある製品を載せています。
風邪薬(総合感冒薬)
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製品名 | 1日あたりの成分量 |
---|---|
ベンザブロック YASUMO | 75mg |
市販の風邪薬に配合できる1日の最大用量は75mgとなっています。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)
分類・作用機序
ジフェンヒドラミン塩酸塩の化学構造式
分類
「第一世代抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)」となります。
抗ヒスタミン薬には第一世代と第二世代がありますが、1983年以降に発売されたものが第二世代となります。
ヒスタミンの受容体はH1~H4が知られていますが、この系統の薬はH1受容体の働きを抑えます。
(H2受容体遮断は胃薬、H3受容体遮断は眩暈に使ったりします)
単に「抗ヒスタミン薬」といった場合は、通常はこの「H1受容体拮抗薬」の事をいいます。
作用機序
花粉などのアレルゲンがマスト細胞などを刺激すると、そこからヒスタミンという物質が出てきます。
そのヒスタミンが気管支や血管の平滑筋、血管内皮細胞、知覚神経などにあるH1受容体にくっつくと、鼻水やくしゃみ、かゆみなどのアレルギー症状が出てきます。
抗ヒスタミン薬はこのH1受容体を競合的にブロックします。
図にするとこんな感じ。
H1受容体はヒスタミンがなくてもある程度活性化しているのですが、抗ヒスタミン薬は逆作動薬(インバース・アゴニスト)として、この働きも抑えます。
効果や使用方法
効果
鼻水やくしゃみ、かゆみなどのアレルギー症状を緩和します。
ただ、鼻づまりには効果はほぼありません。
第二世代の方は鼻づまりにも多少効果があるとされています(弱いと思いますけど)。
また、第一世代特有ですが、抗コリン作用、抗嘔吐作用、中枢神経作用、局所麻酔作用などがあります。
※ただし、鼻水の分泌抑制を目的として、あえて抗コリン薬を配合している風邪薬や鼻炎薬もあります。
また、この成分は鎮静作用が強く市販では睡眠改善薬としても販売されてますね(「ドリエル」など)。
ただ、鎮静作用の耐性形成は早く、4日目だとプラセボと変わらないとか(Wikipediaより)。
医療用の使用例
ジフェンヒドラミン単独だと
- 飲み薬の「レスタミンコーワ錠」
- 塗り薬の「レスタミンコーワクリーム」「ベナパスタ軟膏」
などがあります。他に注射もあるみたいですね。
痒み止めとしてクリームのはよく使われますね。ステロイドではないです。
他の成分と一緒になっているのは
- 総合感冒薬の「カフコデN錠」
- 口内炎に使う「デスパコーワ口腔用クリーム」
- 眩暈・乗り物酔いに使う「トラベルミン配合錠」
- ステロイドや抗菌薬と混合されてる「強力レスタミンコーチゾンコーワ軟膏」
などがあります。
こうして見ると、結構幅広く使われていますね。
用法・用量
市販薬の風邪薬では
1回25mg・1日3回(1日75mg)
となっています。
医療用の「レスタミンコーワ錠」は
1回30~50mg・1日2~3回
となっています。多くて1日150mg。
市販のは医療用の最大量の半分くらいですね。
使用上の注意点
医療用の「レスタミンコーワ錠」の添付文書等を基に書かせてもらいます。
禁忌
- 閉塞隅角緑内障
- 前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患がある
上記のような疾患・状態にある方は禁忌となっています。
2つとも抗コリン作用が問題ですね。
開放隅角緑内障では基本的には禁忌とはなりませんが、状態によっては抗コリン作用によって隅角閉塞が起こる可能性も否定できません。一応慎重に。
『ベンザブロックYASUMO』の添付文書を見ると、緑内障、前立腺肥大ともに禁忌にはなっていません。
「医師、薬剤師、登録販売者に相談」となっていますね。
副作用
「レスタミンコーワ錠」のインタビューフォームから、1%以上のものを書きだしておきます。
- 眠気(34.76%)
- めまい(8.24%)
- 疲労感(5.16%)
- 神経症状(4.49%)
- 胃腸障害(4.35%)
- 口渇(3.22%)
- 口唇・舌異常(2.68%)
- 神経過敏(1.54%)
- 悪心・嘔吐(1.61%)
- 血管障害(1.34%)
となっています。
この成分の特徴としては鎮静作用が強めです。
乗り物酔いに使うのはそのためでもあるのですが、風邪で使う場合はちょっと問題になりますね。
ただ『ベンザブロックYASUMO』はこれを逆手にとって、「しっかり寝て早く治したいかぜに、YASUMO」というキャッチコピーにしてますね。
睡眠改善薬としても販売されていますが、長期では使わない方が良いでしょう。依存につながることがあります。
相互作用
併用禁忌のものはありませんが、いくつか併用注意のものがあります。
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
中枢神経抑制剤 催眠剤 鎮静剤 抗不安剤等 | 減量するなど慎重に投与すること。 | 相互に作用を増強することがある。 |
MAO阻害剤 | 減量するなど慎重に投与すること。 | 中枢神経抑制作用が増強され、また抗コリン作動性による副作用が増強されることがある。 |
抗コリン作用のある薬剤 三環系抗うつ剤 フェノチアジン系薬剤 アトロピン硫酸塩水和物等 | 減量するなど慎重に投与すること。 | 併用により抗コリン作用が増強することがある。 |
アルコール | 用量を調節するなど注意すること。 | 飲酒により相互に作用を増強することがある。 |
併用禁忌というわけではないので、なんか眠いな~、ふらふらするな~と感じたら風邪薬の量を減らして様子をみてください。
ただ、MAO阻害薬(パーキンソン治療薬)については注意してください。
パーキンソンの治療はさじ加減が結構微妙なので、ちょっとした事で症状が変わることがあります。
パーキンソンの治療自体に抗コリン薬が使われている人もいると思うので、抗コリン作用のある第一世代はあまり使わない方が良いかもしれないですね。
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