『パブロンセレクトT』の特徴・効果・注意点【薬剤師が解説】

この製品の特徴は、去痰薬が2種類入っているという事でしょうか。

パッケージには「つらいのどの痛み・発熱に」と書かれていますが、そちらに対しては弱いと思います。
イブプロフェンの量が少ないんですよね。

去痰薬に関してはアンブロキソールとカルボシステインの組み合わせなので悪くないかと思います。

「つらいのどの痛み・発熱に」ではなくて「痰のからんだ咳に」ですね。

パッケージに惑わされず、成分を見て購入していただけたらと思います。

他の風邪薬については一覧を作ってあるのでこちらを見てみてください。まだ数は少ないですが。
風邪薬(総合感冒薬)一覧

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基本情報

製造販売元:大正製薬

・主な成分

成分名1日量(15歳以上の)はたらき
アンブロキソール塩酸塩45mg痰を出しやすくする
カルボシステイン750mg気道の粘液や粘膜を正常な状態に近づける
グリチルリチン酸二カリウム40mgのどや鼻の粘膜の炎症を鎮める
イブプロフェン450mg熱をさげ、痛みを和らげる
ジヒドロコデインリン酸塩24mg咳を抑える
dl-メチルエフェドリン塩酸塩60mg気管支をひろげ、咳を鎮める
クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5mg鼻水、くしゃみを抑える
リボフラビン(ビタミンB212mgビタミン補給
スクロールできます
成分名1日量
(15歳以上の)
はたらき
アンブロキソール
塩酸塩
45mg痰を出しやすくする
カルボシステイン750mg気道の粘液や粘膜を正常な状態に近づける
グリチルリチン酸
二カリウム
40mgのどや鼻の粘膜の炎症を鎮める
イブプロフェン450mg熱をさげ、痛みを和らげる
ジヒドロコデイン
リン酸塩
24mg咳を抑える
dl-メチルエフェドリン
塩酸塩
60mg気管支をひろげ、咳を鎮める
クロルフェニラミン
マレイン酸塩
7.5mg鼻水、くしゃみを抑える
リボフラビン
(ビタミンB2
12mgビタミン補給

・包装

・錠剤:18錠
(PTP包装)

各成分の効果・注意点

『パブロンセレクトT』の主要成分について、それぞれの効果と注意点を簡単にまとめています。

各成分名をタップ・クリックするとそれぞれの成分の簡単な解説記事にいきます。

  1. アンブロキソール塩酸塩
    • 去痰薬の気道潤滑薬で、気道の滑りを良くし痰を出しやすくします。
    • 気管支炎や気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、副鼻腔炎などに使用されます。
    • 副作用は少なく幅広い年齢層に使いやすい成分です。
  2. カルボシステイン
    • 去痰薬の気道粘液修復薬で、痰をサラサラにして粘膜を正常化し、痰を出しやすくします。
    • 上気道炎や気管支炎、気管支喘息や副鼻腔炎などに使用されます。
    • 副作用は非常に少ないですが、内服後数日経ってから固定薬疹が出ることが稀にあります。
  3. グリチルリチン酸二カリウム
    • 抗アレルギー・抗炎症作用があり、のどや鼻の粘膜の炎症をしずめる目的で配合されています。
    • 低カリウム血症に注意。だるさや痺れ、こむら返りや麻痺などがあったら中止して受診してください。
    • 甘草(カンゾウ)が入っている漢方薬を飲んでいる方は注意を。
  4. イブプロフェン
    • NSAIDsの一種。痛みや熱、炎症を抑えます。
    • 胃に負担がかかることがあります。アスピリン喘息にも注意を。
  5. ジヒドロコデインリン酸塩
    • 中枢性麻薬性鎮咳薬で、咳中枢を抑制することで咳を抑えます。
    • 痰を硬くする可能性があるので、主に痰のからまない咳に使います。
    • 便秘、眠気などの副作用に注意を。
    • 依存形成の可能性があり「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
    • 12歳未満は禁忌です(呼吸抑制のリスクが高い)。
  6. dl-メチルエフェドリン塩酸塩
    • 気管支拡張作用があり、咳を鎮めたり呼吸を楽にします。
    • 副作用には動悸や手の震えがあり、心疾患のある方は特に注意が必要です。
    • 濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。
  7. クロルフェニラミンマレイン酸塩
    • 鼻水やくしゃみ、痒みを抑えますが、鼻づまりにはあまり効きません。
    • 特に眠気には注意してください。
    • 抗コリン作用により、眼圧上昇や排尿困難などの副作用が出る可能性があります。
  8. リボフラビン(ビタミンB2
    • 水溶性ビタミンで、代謝やエネルギー産生に関与します。
    • 不足すると口唇炎や角膜炎などを起こすことがあります。
    • 摂り過ぎても尿として排泄されるため過剰症のリスクはほぼありません。

他の成分の薬を探してる方はこちらから。
成分の一覧表

使い方(用法・用量)

年齢1回の服用量1日の服用回数
15歳以上2錠3回

「食後なるべく30分以内に」となっています。
イブプロフェンで胃痛が起こる方もいるので一応注意してください。
でもあまり心配は要らないです。

15歳未満の方は服用しないでくださいとのことです。

イブプロフェンが入っていると15歳未満には使えないことになっています。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)

医療用のイブプロフェンは小児の解熱に適応がないんですよね。
滅多にないですが、ライ症候群を警戒して、という事だと思います。

ライ症候群
極めてまれですが、小児がインフルエンザや水痘・帯状疱疹にかかってる間にアスピリンなどのサリチル酸系の解熱鎮痛剤を飲むと発症する事があります。
症状は、脳浮腫や頭蓋内圧の上昇によって激しい吐き気・嘔吐、けいれん、意識障害、高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血糖などが短期間に発現して、死に至ることもあります。

イブプロフェンはサリチル酸系ではなくて、プロピオン酸系と呼ばれるものになります。
ライ症候群と確定された症例はすべてアスピリン及びジクロフェナクとの併用例となります。他のNSAIDsに関しては禁忌にはなっていません。
インフルエンザ脳症についても問題になるのはジクロフェナクです。(メフェナム酸は微妙)

国際的に小児の解熱にはアセトアミノフェンかイブプロフェンが推奨されているのに、市販薬だとイブプロフェンが使えないのは少しもったいないですね。

15歳未満の方はアセトアミノフェンが入ってるものにしましょう。
大人の方でも解熱だけが目的の場合はアセトアミノフェンが良いと思います。

製品全体としての注意点

注意してほしいこと

いくつか注意点を書いておきます。

  • 眠気に注意:眠気が出る可能性があるので注意してください。
    • 服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」となっています。ただ、全然眠くならない方もいるのでそういう方は問題ないですね。
  • 喘息:イブプロフェンによって喘息発作が誘発される事があります。
    • 他の風邪薬や解熱鎮痛剤で喘息の症状が出た事がある人は、解熱鎮痛剤としてはアセトアミノフェンだけが入ってる風邪薬を選ぶと良いかと思います。
  • ジドブジン(商品名:レトロビル、コンビビル)服用中の方は注意してください。
    • イブプロフェンと併用すると出血傾向が強まる可能性があります。
    • この製品の添付文書には記載がないですが、医療用のイブプロフェンはジドブジンとの併用は禁忌となっています。
  • 漢方薬服用中の方:グリチルリチン酸は甘草(カンゾウ)という生薬に含まれる成分ですが、過剰摂取で偽アルドステロン症の副作用が出る場合があります。漢方薬を服用中の方は注意してください。
    • カンゾウが入っていない漢方薬であれば問題ありません。
    • グリチルリチン酸カンゾウの解説記事にカンゾウが含まれる漢方薬を載せている(109種類)ので、気になる方は見てみてください。
  • 喘息治療中の方
    • 気管支拡張薬のメチルエフェドリンが入っているので、喘息を治療中の方はすでに服用(吸入)してる可能性があります。過剰摂取にならないように注意してください。
    • ジヒドロコデインは気道分泌の抑制と気管支を収縮させる作用もあるので、基本的には喘息には使いません(喘息発作には禁忌)。
  • 抗コリン作用:口の渇きや目のかすみ、眼圧上昇、排尿困難、便秘などの症状が出る可能性があります。
    • 気になる場合は減量または中止してください。
  • 服用期間:「5日間を超えて服用しないでください」となっています。
    • 風邪薬は症状を緩和するもので、風邪自体を治すわけではありません。3~4日服用しても症状が良くならない場合は、医師の診察を受けた方が良いかと思います。
    • ジヒドロコデインのオーバードーズ(過剰摂取)の問題もあります。

妊娠・授乳中の使用について

大事な事ですが、対象者が限られるため折り畳みにしておきます。

クリック・タップで開きます。

妊娠中の方

妊娠後期(28週以降)の方は禁忌です。
(この製品の説明書では「出産予定日12週以内の妊婦は飲まないで」という書き方になっています)

イブプロフェンにより胎児の動脈管(心臓と大動脈をつなぐ血管)が収縮した、という報告があります。
妊娠後期の方は、解熱鎮痛剤としてはアセトアミノフェンだけが入ったものにした方が良いかと思います。
(アセトアミノフェンは短期間であれば問題ないとされています)

また、ジヒドロコデインは妊娠28週以降は推奨されません
豪州ADECという危険度分類ではジヒドロコデインの分類はAとなり、「今までの使用経験上では大丈夫だった」とのことです。
ただ、違う基準(Briggs基準)によるとリスク4の「妊娠28週以降は胎児への危険性が示唆される」という分類になっています。

あとグリチルリチン酸ですが、医療用のグリチロンの添付文書には「グリチルリチン酸一アンモニウムを大量投与したときの動物実験(ラット)において腎奇形等が認められている」との記載があります。
ただ、この製品に入っている量であればまず問題はないかと思います。

メチルエフェドリンによって胎児が頻脈を起こす可能性もありますが、量が少なめなのであまり心配は要らないかと思います。

服用するにしても短期間の使用にとどめておいた方が無難だとは思います。
原則として、妊娠してる方は市販薬は使わず受診して医師に薬を処方してもらった方が良いと思います。
(というか、必ず受診してください)

授乳中の方

この製品の説明書には
授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること
と書いてあります。
ジヒドロコデインが入っているため、この記載があります。

とはいえ、そこまで心配する事もないかと思います。

Mothers’ Milk基準では、この製品に入ってる成分中一番リスクの高いもので、

  • ジヒドロコデイン
  • クロルフェニラミン

の2つが「L3(概ね適合)」となっています

ジヒドロコデインは基本的には「授乳を避けること」となっています。母乳に移行して乳児にモルヒネ中毒(傾眠、哺乳困難、呼吸困難等)が生じたとの報告があります。
母親に便秘や眠気などの副作用が出ている場合は授乳をやめた方が良いでしょうね。
似たようなものでデキストロメトルファンというのがあり、こちらは一応安全に使用可能となっています(効くかどうかは別)。

心配な方はジヒドロコデインが入っていない薬を選ぶようにしましょう。

メチルエフェドリンに関してはデータがありません。
基本的には「避けてください」と言われる事が多いですが、生後3ヵ月から使える製品も存在します。

「多くの薬は母親が飲んだ量の1%未満しか母乳中に移行しない」という事を考えると過剰な心配はいらないかと思います。

心配であれば授乳後に薬を服用すると良いでしょう。次の授乳までに薬はかなり分解されてます。
この場合、食後とかは気にしないでOKです。4~5時間程度時間を空けて、服用できるタイミングで服用してください。

心配な方は、薬を服用中は粉ミルクを使うという手もあります。

妊娠・授乳中の薬物治療に関して不安を持つ方も多いかと思います。
そういう方の相談に乗ってくれる機関があるのでそこのサイトのリンクを貼っておきます。
妊娠と薬情報センター:https://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

製品の特徴や利点、個人的な感想

この製品の特徴は、去痰薬が2種類入っていることでしょうか。

パッケージには「つらいのどの痛み・発熱に」と書かれていますが、解熱鎮痛剤のイブプロフェンは1日450mgと普通です。今は1日600mg入っている製品もあるので、アピールするには弱いかも。

グリチルリチン酸は風邪薬に配合できる最大量が入っていますが、その最大量自体が少ないのであまり効果は期待できないでしょう。そもそも医療用のは喉の炎症に使いません。
トラネキサム酸の方がまだ良かったかも?

去痰薬が2種類入っているのは良いですね。
ジヒドロコデインのような中枢性鎮咳薬は痰を硬くしてしまい、痰の排出が難しくなります。
痰がからんだ咳の場合は必ず去痰薬が入っているものを選んでください。

内容的には、一般的な風邪薬に去痰を2種類入れた製品で、悪くはないと思います。
イブプロフェンの量が少ないけど。

「つらいのどの痛み・発熱」がある人がこれを使ってもあまり効果を感じないでしょうね。
「つらいのどの痛み・発熱に」ではなくて「痰のからんだ咳に」ですね。
売り方を間違えてると思います。

使用した方の口コミ・レビュー、値段など

口コミを探したのですが見当たりませんでした…。

この製品は『パブロンメディカルT』という薬にグリチルリチン酸を足しただけなので、『パブロンメディカルT』の方を見てみます。
(『パブロンメディカルT』は製造終了しています)

「ものログ」というサイトの口コミです。

良い評価としては、

「喉の痛みが酷くなり飲みましたが効き目を感じた」
「すぐに喉イタが治りました」
「喉と鼻の風邪をひいたため購入!効いた!」

といった具合。

否定的な意見としては、

「効かない!」
「喉の痛みはなかなか引かなかった」
「飲んだら鼻水がとても出てきた」

といった感じ。

効果に対する評価はまあまあでしょうか。
(『パブロンセレクトT』にはグリチルリチン酸が入っていますが、効果はほぼ変わらないと思います)
喉の痛みについての評価ばかりでしたが、それなりに効いてはいるみたいですね。

去痰剤が2種類入ってるのが良いのかな?
「飲んだら鼻水が出てきた」というのも去痰剤のおかげかもしれません。副鼻腔炎の排膿にも使いますし。

症状が喉の痛みだけでしたらトラネキサム酸が750mg/日入っている製品の方が良いかと思います。
イブプロフェンも600mg/日入っているやつ。
(『ストナアイビージェルEX』『ベンザブロックLプレミアム』など)

値段について

メーカーの希望小売価格(税込)を見ると、

18錠1,408円

ということでした。

Yahooショッピング(送料含まず)で見てみると、

包装値段1日分に換算
18錠750~1,400円250~467円

※1日分のは、1日6錠で計算
※2025年2月時点です。

こんな感じでした。Amazonとか楽天だとまた違うと思いますけど。

希望小売価格だとちょっと高いですけど、この内容で1日250円くらいなら高くはないですね。

この記事を読んで「買おうかな?」と興味を持たれた方へ

まとめ

この記事では『パブロンセレクトT』について、各成分の効果と注意点、個人的な感想、使用者のレビューなどをご紹介しました。

咳・痰に使う成分が全部で4つ入ってますね。
「痰のからんだ咳」が出る人には良いのではないでしょうか。1箱750円くらいで買えれば高くはないし。

でもパッケージに書いてある「つらいのどの痛み・発熱に」はちょっと弱いかと思います。

イブプロフェンは少ないし、グリチルリチン酸は入っていてもいなくても変わらないでしょう。
せめてトラネキサム酸が入っていたら良かったのですが。

パッケージに書いてある事に惑わされず、成分を見て購入していただけたらと思います。

他の風邪薬については一覧を作ってあるのでこちらを見てみてください。まだ数は少ないですが。
風邪薬(総合感冒薬)一覧

風邪の症状で悩まされる方々にとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。

ただし、ご紹介した内容は一般的な情報に基づいており、個々の体調や症状によって適切な対応は異なる場合があります。

効果を感じられない場合や、症状が改善しない場合は、適切な医療機関を訪れることをお勧めします

上の方でも紹介しましたが、再度リンクを貼っておきます

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