「ナファゾリン」の解説 
作用・使用上の注意・製品一覧

「ナファゾリン」についての簡単な解説です。

目次

ナファゾリンを含む市販薬の製品一覧

解説記事を書いたことのある製品を載せています。

鼻炎薬(点鼻薬)

クリック・タップで開きます。

製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。

製品名1日あたりの成分量
パブロン点鼻0.05g/100ml

市販の点鼻薬は0.05%(0.05g/100ml)が最大濃度となっています。
(「鼻炎用点鼻薬製造(輸入)承認基準について」より)

※ここでご紹介している製品がすべてではありません。
あと、すでに製造中止になっている製品もあるかもしれません。
そのへんはご了承くださいますようお願い申し上げます。

分類・作用機序

ナファゾリン塩酸塩の化学構造式

KEGG DRUGより

分類

血管収縮剤」です。

作用としては交感神経刺激薬ですが、
その中でも「α(アルファ)₁刺激薬」となります。

自律神経には交感神経と副交感神経と2つあって、そのうちの交感神経に働くものですね。

交感神経には大きく分けて「α受容体」と「β受容体」という2種類の受容体があり、ナファゾリンはα受容体の方により強く作用を発揮する「α刺激薬」として使われます。

α受容体にはさらに「α₁」と「α₂」の2つがあり、このうちのα₁受容体に作用します。

(蛇足:α₂受容体について)

クリック・タップで開きます。
きつね作です。

交感神経終末から放出されたノルエピネフリンは、標的細胞のα₁受容体やβ受容体に結合することで交感神経刺激作用(血管収縮や心拍数上昇など)を引き起こします。

一方で、α₂受容体は交感神経終末側に存在し、ノルエピネフリンの過剰な放出を抑制する役割を持ちます。
これは負の(ネガティブ)フィードバックと呼ばれる仕組みです。

ノルエピネフリン自体もα₂受容体に結合します。
もともと体には交感神経が過剰に働くのを防ぐ仕組みがあるんですね。

作用機序

血管平滑筋にあるα₁受容体を刺激することで血管が収縮します。

そうすることで血流を減少させ、充血や腫れを軽減します。

効果や使用方法

効果

ナファゾリンには2つの用途があります。

  • 鼻粘膜の充血や腫れを抑えることで鼻づまりを解消
  • 結膜の血管を収縮させることで目の充血を解消

α₁刺激薬なので、全身の作用としては

  • 血管収縮(血圧上昇)
  • 瞳孔散大
  • 消化管の平滑筋収縮
  • 膀胱括約筋の収縮
  • 唾液腺の分泌抑制

などがあります。

「鼻炎用内服薬の製造販売承認基準について」という資料を見ると、ナファゾリンは載っていませんでした。
点鼻薬と点眼薬にしか入ってないようですね。

点鼻薬を使ってみると分かりますが、鼻が完全に詰まっている状態でも使用して15分もすればス~っと鼻が通るようになります。
持続時間は3~4時間といったところでしょうか。

血管収縮剤は他に「プソイドエフェドリン」や「フェニレフリン」がありますが、血管収縮の強さとしては
ナファゾリン > フェニレフリン > プソイドエフェドリン
のようです。
効果時間はこの逆になるようですね。

点眼薬にも入っているものがあると思いますが、基本的には目の充血は何か原因があって充血してるわけですね。
その原因を治さずに充血だけをとっても意味はないと思います。

使い続けていると「点眼を使わないと常に目が充血してる」という状況にもなりかねないので、常用はしない方が良いでしょうね。

医療用の使用例

「プリビナ液」と「プリビナ点眼液」というものがあります。
(この2つは「ナファゾリン硝酸塩」)

「プリビナ液」の適応は

  • 上気道の諸疾患の充血・うっ血
  • 上気道粘膜の表面麻酔時における局所麻酔剤の効力持続時間の延長

となっています。

外来では鼻づまりにしか使われてないと思いますが。
あとは胃カメラを鼻から入れるときかな?

抗ヒスタミン薬は鼻水やくしゃみは抑えますが、鼻づまりを解消する効果はあまりありません。
なので血管収縮剤が鼻づまりがひどい人に頓用として処方されます。

ただ、速効性で全身性の副作用もあまりなく使いやすいのですが、結構クセになる(点鼻薬性鼻炎)ので注意が必要ですね。
頓用・短期間の使用にとどめておいた方が良いと思います。

「プリビナ点眼液」は目の充血を解消するものですが、使っているのを見た事はありません。

用法・用量

※まだ点鼻薬の記事しか書いてないので、点鼻薬についてだけ書きます。
点眼薬については記事を書き次第ここに追記します。

市販のも医療用のも濃度は同じようですね。
0.05g/100ml(0.5mg/ml)となっています。

市販の『パブロン点鼻』の添付文書を見てみると「1回1~2度ずつ噴霧・1日6回まで」となっていますが、1日6回は使いすぎかもしれません。クセになってしまう可能性があります。
せいぜい3~4回を限度としておいた方が良いでしょうね。

使用上の注意点

医療用医薬品の「プリビナ液」を参考に書かせていただきます。

「プリビナ液」の添付文書にはこのような記載があります。

重要な基本的注意
連用又は頻回使用により反応性の低下や局所粘膜の二次充血を起こすことがあるので、急性充血期に限って使用するか、又は適切な休薬期間をおいて使用すること。

点鼻薬性鼻炎」というやつです。血管収縮剤の入った点鼻薬を使い続けるとクセになってしまって、「薬を使わないと常に鼻がつまる」という状態になってしまいます。
自分もこれになってしまい、抜け出すのにかなり時間がかかりました。

医療用の「プリビナ液」のインタビューフォームには次のような記載があります。

本剤の連続投与中に生じた鼻粘膜の二次充血、腫脹は、たとえ長期常用者の場合であっても投与中止により 7~10 日間位で消失するといわれている。

使うのをやめれば7~10日間で戻るということですね。
ただ、鼻がつまって苦しいのに薬を全く使わないっていうのが心理的にかなり難しいのです。使えば楽になりますしね。

とにかく鼻づまりの症状がひどい時だけの使用にとどめておいた方が良いと思います。

血管収縮剤は鼻づまりへの効果は強いですが、あくまで一時的な対症療法です。原因を治すわけではありません。
症状がひどい方は耳鼻科を受診した方が良いでしょう。

禁忌

  • 乳児及び2歳未満の幼児
  • MAO阻害剤を服用中

これらの状態にある方は禁忌となっています。乳幼児に使うことはないと思いますけど。

MAO阻害薬はパーキンソンに使う薬です。治療中の方は自分の飲んでいる薬がどんなものなのか確認しておいた方が良いでしょう。
商品名としては

  • エフピー
  • セレギリン塩酸塩「〇〇」(エフピーのジェネリック)
  • アジレクト
  • エクフィナ

があります。(2025年1月11日時点)

服用注意な人

  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 冠動脈疾患
  • 甲状腺機能亢進症
  • 交感神経作用薬による不眠、めまい等の既往のある方

このような疾患・状態にある方は、それそれの症状が悪化する可能性があるので一応注意してください。
(甲状腺機能亢進症に関しては、交感神経刺激作用が強まる可能性)

点鼻薬でも血圧上昇の副作用はそれなりの頻度で出ています。

副作用

点鼻薬として使う場合は全身性の副作用は少なめです。それでも交感神経に働くものなのでいろいろ出てくる可能性があります。

「プリビナ液」は「副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない」ということで詳しくは分かりませんが、次のような症状がでることがあります。添付文書のをそのまま載せておきます。

過敏症過敏症状
精神神経系眠気等の鎮静作用(特に小児)、神経過敏、頭痛、めまい、不眠症
循環器血圧上昇
呼吸器くしゃみ
胃腸悪心・嘔吐
熱感、刺激痛、乾燥感、嗅覚消失、反応性充血、鼻漏
長期使用顆粒球減少、反応性の低下

※すべて頻度不明です。

過剰症としては、交感神経刺激薬全般的な話になりますが、

交感神経刺激薬を大量に投与すると、めまい感、頭痛、悪心、嘔吐、発汗、口渇、頻脈、前胸部
痛、動悸、高血圧、排尿困難、筋力低下及び筋緊張、不安、落ち着きのなさ、不眠症、妄想や幻覚
を伴う中毒性精神病、不整脈、循環虚脱、痙攣、昏睡、呼吸不全がみられることもある。

ということです。

相互作用

併用禁忌のみがあります。逆に併用注意はありません。

併用禁忌

スクロールできます
薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
MAO阻害剤
 セレギリン塩酸塩
 (エフピー)
 ラサギリンメシル酸塩
 (アジレクト)
 サフィナミドメシル酸塩
 (エクフィナ)
急激な血圧上昇が起こるおそれがある。本剤はアドレナリン作動薬であり、MAO阻害剤の投与を受けている患者では、ノルアドレナリンの蓄積が増大しているため、併用した場合急激な血圧上昇が起こるおそれがある。

上にも書きましたが、MAO阻害薬はパーキンソンの薬です。治療中の方はご自身の飲んでいる薬の名前を確認しておいてください。

市販の点鼻薬では禁忌とはなっていないですね。

他の成分についてはこちらから。
成分の一覧表

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