「チペピジン」についての簡単な解説です。
チペピジンを含む市販薬の製品一覧
解説記事を書いたことのある製品を載せています。
風邪薬(総合感冒薬)
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製品名をクリック・タップすると、その製品の解説記事にいきます。
製品名 | 1日あたりの成分量 |
---|---|
ルルアタックFxa | チペピジンヒベンズ酸塩:75mg |
市販の風邪薬に配合できる1日の最大用量は、
・チペピジンヒベンズ酸塩:75mg
・チペピジンクエン酸塩:60mg
となっています。
(「かぜ薬の製造販売承認基準について」より)
(チペピジンヒベンズ酸塩11.07mg=チペピジンクエン酸塩10mg)
分類・作用機序
チペピジンヒベンズ酸塩の化学構造式
※左が主成分のチペピジンです。右がヒベンズ酸。
分類
咳止めですが、
その中でも「中枢性非麻薬性鎮咳薬」に分類されます。
作用機序
脳にある咳中枢を抑制することで咳を抑えます。
咳は本来、肺や気管などの呼吸器を守るために、外から入ってきた異物(ほこりやウイルスなど)を外に追い出す生体防御反応です。
気道粘膜上のセンサーが異物を感じ取ると、脳の咳中枢に信号が送られて咳が出ますが、この信号を抑えることで咳を鎮めるんですね。
また、チペピジンは他の鎮咳薬と違い、
- 気管支腺分泌亢進作用
- 気道粘膜線毛上皮運動亢進作用
もあるとされています。
効果や使用方法
効果
咳を抑え、痰を出しやすくする効果があります。
咳止めというのは基本的には痰の絡んでない咳(乾性咳嗽)に使いますが、これなら湿性咳嗽にも使えますね。
去痰作用については医療用医薬品の「アスベリン」の添付文書に
「ウサギ100mg/kg経口投与により、ブロムヘキシン塩酸塩50mg/kg経口投与時とほぼ同程度の気管支腺分泌亢進作用を示す」
との記載があります。
去痰作用はおまけだと思っていましたが、これを見るとそれなりですね。
上の試験で使ってる量が多すぎて単純な比較はできませんが、
ブロムヘキシン4mg(通常1回4mg)≒チペピジン8mg
という事になりますね。
チペピジンは通常1回20~40mg使うので、理論上、通常使用量でブロムヘキシン以上の気管支腺分泌亢進作用がある事になります。あんまりそんな話は聞いた事がないのですが…
あと、チペピジンについて調べていると
「急性咳嗽を主訴とする小児の上気道炎患者へのチペピジンヒベンズ酸塩の効果」
という論文を見つけました。
(リンクを貼って良いのかどうか分からないのでやめておきます。検索すれば出てくると思います)
この論文によると、「小児の急性咳嗽患者に対し、カルボシステインに加えチペピジンヒベンズ酸塩を投与すると、症状を遷延させる可能性がある。」
とのこと。カルボシステインは去痰薬です。
「去痰薬だけ」と「去痰薬+咳止め」で比較した場合、咳止めを使用した方が症状が長引くと。
これについては以前から書いてきた事ですが、
風邪のほとんどは上気道のウイルス感染で、そのウイルスを追い出すために咳が出るわけです。
なのでその咳を止めてしまうと逆に悪化して、気管支炎や肺炎になる可能性もあります。
なるべくなら咳止めは使わないで様子を見た方が良いでしょうね。
どうしてもつらい時に短期間使用するのが原則だと思います。
あと、この論文の結果をみるとチペピジンの去痰作用も疑わしいですね。あくまで「ウサギでは」という事ですね。
動物実験で効果があったとしても、ヒトで同じ効果があるとは限りません。
医療用の使用例
「アスベリン」という薬があります。後発品は出てないです(2024年12月30日時点)。
錠剤だけではなく、粉薬やシロップのもあります。
たぶん、お子さんがいる方なら一度は見た事があるのではないでしょうか?
小児科ではかなり使われてますね。
というか、ほぼ小児にしか使われてないと思います。
単独で使われる事はあまりなくて、カルボシステインやアンブロキソールなどの去痰薬と一緒に処方される事が多いかと思います。
本当なら安易に咳止めは使わない方が良いのですが、「咳で受診したのに咳止めも出してくれない…」という人がいるから仕方なく処方してる、と言ったところでしょうか。
用法・用量
市販薬では今まで記事を書いた事があるのは『ルルアタックFXa』しかありませんが、これはチペピジンヒベンズ酸として、
1回25mg・1日3回(1日75mg)
となっていますね。
医療用のアスベリンでは、
1回22.17~44.3mg・1日3回(1日66.5~132.9mg)
となっています。
(チペピジンクエン酸塩として1日60~120mg)
市販薬でも医療用と同程度の成分量が入ってるみたいですね。
使用上の注意点
副作用
「アスベリン」のインタビューフォームを見ると、
- 食欲不振(1.1%)
- 便秘(0.5%)
となっています。
他に、眠気、不眠、眩暈、軟便・下痢、痒み、などが出る場合があります。
また、過量投与により、眠気、眩暈、興奮、せん妄、見当識障害、意識障害、精神錯乱等があらわれることがある、とのことです。
あと、副作用というわけではないのですが尿が赤くなることがあります。
これはチペピジンの代謝物のせいなので、気にしなくて大丈夫です。
現在のところ、チペピジンが習慣性を引き起こすという報告は見たことがありません。
咳止めとしてはかなり安全性の高い方だと思います。
相互作用
他の薬や食べ物との飲み併せで問題になるものはありません。
使いやすいですね。
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