「フェニレフリン」についての簡単な解説です。
フェニレフリンを含む市販薬の製品一覧
解説記事を書いたことのある製品を載せています。
鼻炎薬(飲み薬)
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製品名 | 1日あたりの成分量 |
---|---|
コルゲンコーワ鼻炎 ジェルカプセルα | 15mg |
ストナリニ・サット | 30mg |
ストナリニS | 12mg |
鼻炎用内服薬に配合できる最大用量は1日30mgとなっています。
(「鼻炎用内服薬の製造販売承認基準について」より)
分類・作用機序
フェニレフリン塩酸塩の化学構造式
分類
「血管収縮剤」です。
作用としては交感神経刺激薬ですが、
その中でも「α(アルファ)₁刺激薬」となります。
自律神経には交感神経と副交感神経と2つあって、そのうちの交感神経に働くものですね。
交感神経には大きく分けて「α受容体」と「β受容体」という2種類の受容体があり、フェニレフリンはα受容体を選択的に刺激します。β受容体にはほとんど作用しません。
α受容体にはさらに「α₁」と「α₂」の2つがあり、このうちのα₁受容体に選択的に作用します。
(蛇足:α₂受容体について)
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交感神経終末から放出されたノルエピネフリンは、標的細胞のα₁受容体やβ受容体に結合することで交感神経刺激作用(血管収縮や心拍数上昇など)を引き起こします。
一方で、α₂受容体は交感神経終末側に存在し、ノルエピネフリンの過剰な放出を抑制する役割を持ちます。
これは負の(ネガティブ)フィードバックと呼ばれる仕組みです。
ノルエピネフリン自体もα₂受容体に結合します。
もともと体には交感神経が過剰に働くのを防ぐ仕組みがあるんですね。
作用機序
血管平滑筋にあるα₁受容体を刺激することで血管が収縮します。
そうすることで血流を減少させ、充血や腫れを軽減します。
効果や使用方法
効果
市販薬に配合されているフェニレフリンには2つの用途があります。
- 鼻粘膜の充血や腫れを抑えることで鼻づまりを解消
- 結膜の血管を収縮させることで目の充血を解消
市販の鼻炎用内服薬では「鼻粘膜の充血や腫れを抑えることで、鼻づまりを解消します」となっていますが、効果はないと思って良いでしょう。
鼻づまり解消が目的で薬を買う場合は、この成分が入っている飲み薬は避けた方が良いでしょうね。
鼻づまりがひどければ、血管収縮剤が入った点鼻薬を症状がひどい時だけ使う方が良いと思います。
注射の場合はきちんと血管収縮効果は認められています。
飲み薬の場合は腸や肝臓で代謝(他の物質に変換)を受けてしまうんですね。
点鼻薬でも効果は認められているようです。
血管収縮の強さとしては
ナファゾリン > フェニレフリン > プソイドエフェドリン
のようです。
効果時間はこの逆になるようですね。
ナファゾリンの効果はエピネフリンより強力となっていますが、フェニレフリンの効果はエピネフリンの5分の1程度です。
点眼薬にも入っているものがあると思いますが、基本的には目の充血は何か原因があって充血してるわけですね。
その原因を治さずに充血だけをとっても意味はないと思います。
使い続けていると「点眼を使わないと常に目が充血してる」という状況にもなりかねないので、常用はしない方が良いでしょうね。
医療用の使用例
医療用の薬では鼻に使うものはありません。
注射剤は
- 急性低血圧又はショック時の補助治療
- 発作性上室頻拍
- 局所麻酔時の作用延長
の適応があります。
点眼薬は
- 診断及び治療を目的とする散瞳
- 調節麻痺
ですね。
飲み薬はありません。効果がない事が分かっているからですね。
点鼻薬でもフェニレフリンが入っているものは存在しません。
医療用の点鼻薬に入っている血管収縮剤は
- ナファゾリン
- トラマゾリン
- テトラヒドロゾリン
の3つになります。
フェニレフリンだと効果が弱いのかもしれないですね。
用法・用量
市販の鼻炎用内服薬だと
1回10mg・1日3回(1日30mg)
が最大でしょうか。
風邪薬(総合感冒薬)として販売されている製品では、フェニレフリンが入っているものはないようです。
医療用では鼻づまりには使わないので比較ができません。
とにかく内服だと効果がほぼなくなるという事で、この成分の入っている飲み薬は買わない方が良いでしょう。
「飲んではダメ」ということではなくて、「意味がない」ということですね。
使用上の注意点
医療用医薬品の「ネオシネジンコーワ注」「ネオシネジンコーワ点眼液」を参考に書かせていただきます。
飲み薬であればそれほど気にしなくて良いかと思いますが、点鼻薬や点眼薬の場合は注意してください。
禁忌
点眼薬だけですが、
狭隅角や前房が浅いなどの眼圧上昇の素因のある方
は禁忌となっています。
急性閉塞隅角緑内障の発作を起こすことがあります。
市販の点眼薬には血管収縮剤が配合されているものも多いので、緑内障や眼圧が高い方は市販の点眼薬は使わない方が良いでしょうね。
服用注意な人
- 心室性頻拍
- 高血圧
- 重篤な動脈硬化症
- 甲状腺機能亢進症
- 心疾患
- 徐脈
このような疾患のある方は、それそれの症状が悪化する可能性があるので一応注意してください。
(甲状腺機能亢進症に関しては、交感神経刺激作用が強まる可能性)
副作用
注射剤、つまり全身投与の場合は
- 頭痛(3.13%)
- 手足のしびれ感・ふるえ感(1.30%)
- 不整脈(0.78%)
- 紅疹(0.78%)
- 息苦しい(0.52%)
となっています。(「ネオシネジンコーワ注」のインタビューフォームより)
点眼薬の場合は
- 眼圧上昇
- 血圧上昇
が多いようです。
過剰症としては、交感神経刺激薬全般的な話になりますが、
交感神経刺激薬を大量に投与すると、めまい感、頭痛、悪心、嘔吐、発汗、口渇、頻脈、前胸部
痛、動悸、高血圧、排尿困難、筋力低下及び筋緊張、不安、落ち着きのなさ、不眠症、妄想や幻覚
を伴う中毒性精神病、不整脈、循環虚脱、痙攣、昏睡、呼吸不全がみられることもある。
ということです。
相互作用
併用禁忌はありません。併用注意がいくつかあります。
併用注意
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
MAO阻害薬 セレギリン塩酸塩 ラサギリンメシル酸塩 サフィナミドメシル酸塩等 | MAO阻害薬で治療中又は治療後3週間以内の患者では血圧の異常上昇を起こすおそれがあるので、慎重に投与すること。 | 本剤はMAOによって代謝される。併用により代謝が阻害され、体内に蓄積し作用が増強する。 |
三環系抗うつ薬 イミプラミン アミトリプチリン等 | 本剤の作用が増強され、血圧の異常上昇をきたすことがあるので、慎重に投与すること。 | 三環系抗うつ剤はカテコラミン類の神経細胞内への再取り込みを阻害し、受容体部分での交感神経興奮アミンの濃度を増加するため、作用を増強すると考えられる。 |
分娩促進剤 オキシトシン エルゴタミン等 | 本剤の作用が増強され、血圧の異常上昇をきたすことがあるので、慎重に投与すること。 | オキシトシン等は末梢血管収縮作用を示すが、併用により相乗的に作用が増強するためと考えられている。 |
併用注意についての簡単な説明
・MAO(モノアミン酸化酵素)阻害薬はパーキンソン病に使われています。
商品名では「エフピー」「セレギリン塩酸塩〇〇」「アジレクト」「エクフィナ」などがあります。
・三環系抗うつ剤はそのまま抗うつ剤ですね。
・妊娠中の方はなるべく市販薬は使わない方が良いでしょう。何か症状があれば産婦人科を受診してください。
点眼薬でも全身作用が出ることは多いです。
ここに書いてあることはあまり気にしなくて大丈夫ですが、上記の薬を服用中の方は「一応そういう可能性もあるんだな」と思っておいてください。
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