「フルチカゾンプロピオン酸エステル」についての簡単な解説です。
フルチカゾンプロピオン酸エステルを含む市販薬の製品一覧
解説記事を書いたことのある製品を載せています。
鼻炎薬(点鼻薬)
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製品名 | 1日あたりの成分量 |
---|---|
フルナーゼ点鼻薬 | 51mg/100ml |
「鼻炎用点鼻薬製造(輸入)承認基準について」には最大濃度などは載っていませんでした。
ステロイド自体が載ってないですね。
『フルナーゼ点鼻薬』は医療用の「フルナーゼ点鼻液」と同じ濃度になっています。
分類・作用機序
フルチカゾンプロピオン酸エステルの化学構造式
分類
「ステロイド(副腎皮質ホルモン)」になります。
ここでいうステロイドとは「糖質コルチコイド」の事をいい、筋肉増強剤のようなタンパク同化ステロイドではありません。
作用機序
※ステロイドには様々な作用がありますが、ここでは点鼻薬に関する事のみ書かせていただきます。
アレルゲン(花粉やハウスダストなど)が鼻粘膜に接触するとマスト細胞が活性化して、サイトカインや、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が放出され、血管の拡張や粘膜の腫脹を引き起こします。
フルチカゾンはグルココルチコイド受容体に結合して、炎症を引き起こすサイトカインや化学物質の放出を抑制します。
作用としては、
- 血管収縮作用
- 浮腫抑制作用
- アレルギー性鼻炎抑制作用
など。
効果や使用方法
効果
フルチカゾンプロピオン酸エステルが入っている市販薬は、おそらくですが
『フルナーゼ点鼻薬』しか存在しません(他にあったらすみません)。
なので、ここでは『フルナーゼ点鼻薬』について書いておきます。
アレルギー性鼻炎などによる鼻水、鼻づまり、くしゃみを抑えます。
市販の『フルナーゼ点鼻薬』は「花粉による季節性アレルギー」に限定されていますね。
点鼻薬は直接鼻に噴霧することで全身への影響が少なくなっています。
また、アンテドラッグといって、局所(この場合は鼻)で効果を発揮した後、吸収されると代謝(他の物質に変換)を受けます。これも全身的な副作用の少なさに寄与してますね。
ちなみに、この成分は内服の場合はほとんど吸収されません。吸収されたものも大部分は初回通過効果(吸収後に肝臓で代謝される)を受けるので、点鼻や吸入のような形でしか効果がないようです。
鼻炎には飲み薬の抗ヒスタミン薬がよく使われますが、抗ヒスタミン薬は鼻づまりにはあまり効果がありません。
ステロイド点鼻薬は鼻の炎症を抑えることで血管を収縮させる効果もあるので、鼻づまりにも効果があります。
といっても、いわゆる「血管収縮剤」とは違い、クセになるという事はありません。
逆に、ある程度長期間使うことが多いですね。
血管収縮剤と違い使ってすぐに鼻づまりが解消するわけではないのですが、3日ほど使っていると鼻づまりも良くなってくると思います。
医療用の使用例
医療用では「フルナーゼ点鼻液」というのがあります。
内容としては市販の『フルナーゼ点鼻薬』と同じですね。
(以前はメーカーも同じだったはずですが、市販のは今は「Haleonジャパン」だかに変わってますね)
アレルギー性鼻炎や血管運動性鼻炎に使われます。
鼻づまりがあるアレルギー性鼻炎、花粉症では重症度に関わらず使用されていますね。
海外では副鼻腔炎にもよく使われているようです。日本では適応がないですが。
点鼻薬以外では、気管支喘息などに使う吸入薬に配合されています。
(「フルタイド」「アドエア」「フルティフォーム」)
用法・用量
市販のも医療用のも同じで、
各鼻腔に1回1噴霧ずつ・1日2回(朝・夕)
となっています。
なお、「1日最大4回(8噴霧)まで。使用間隔は3時間以上」となっています。
毎回よく振ってから使用してください。
最初だけはちゃんと「シュッ」と霧状に出てこないので、7回ほど空打ちが必要です。
市販のは成人用です。15歳未満は使用できません。
医療用だと、1回の噴霧量が半分になった小児用があります。
また、血管収縮剤の点鼻薬と違い、頓用ではありません。
ある程度長期間使用することで効果を発揮するものなので、継続使用が原則です。
あと、『フルナーゼ点鼻薬』は「1年間に3ヵ月を超えて使用しないでください」となっています。
使用してても改善しない場合、他の疾患の可能性がある、ということですね。
こういうステロイド点鼻薬は、耳鼻科でアレルギー性鼻炎の診断を受けた方が使用するべきものかと考えます。
他の疾患の場合でも鼻づまりなどの症状が軽減することがあると思いますが、症状は一時的に良くなってても病状は悪化してる可能性があります。
使用上の注意点
医療用の「フルナーゼ点鼻液」の添付文書・インタビューフォームを参考に書かせていただきます。
禁忌
・有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身の真菌症の方
には禁忌となっています。
また、市販薬の方は
- 全身の真菌症、結核性疾患、反復性鼻出血、感染症
- 鼻孔が化膿(毛根の感染によって、膿がたまり痛みや腫れを伴う)してる人
- 15歳未満
- 妊娠又は妊娠していると思われる人
も「使用しないでください」となっています。
ステロイドには免疫を低下させるという作用があります。
なので感染症の場合は悪化する可能性があります。
15歳未満の方は病院で小児用を処方してもらってください。
妊娠に関してですが、点鼻薬ではあるのですが胎児にも影響が出る可能性を完全に否定はできないので書いておきました。
(原則として、妊娠中の方は市販薬は使わず、病院で処方してもらってください)
皮下投与による動物実験において、奇形発生・胎児の発育抑制がみられたとのこと。
ただ、あくまで皮下投与での事であり、点鼻ではありません。
体内に吸収後は代謝され、胎盤・胎児への移行は少ないはずです。
「フルナーゼ点鼻液」はBriggs基準では「適合1」となっていて、
「過去の妊婦への投与経験から、胎児への危険性はないか、あってもごくわずかと考えられ、妊娠中の投与に適する」
となっています。
ちゃんと医師から処方してもらって(または相談して)、適正に使う分にはそれほど心配する事もないでしょう。
副作用
重大な副作用として、アナフィラキシーが報告されています。
この成分はアレルギー症状を抑えるものなのですが、この成分に対してアレルギー症状が出る方がいます。
滅多にないのですが、医療用のフルナーゼでアナフィラキシー様症状(呼吸困難等)が出た報告があるので注意してください。
その他の副作用としては、
- 鼻内刺激感(0.19%)
- 不快臭(0.13%)
- 鼻出血(0.11%)
となっています。
他には、咽頭の刺激感、乾燥感、頭痛などが出る可能性があります。
刺激感や不快臭はいいとして、鼻血が頻繁にあるようなら中止して病院にいってください。
また、使用後に鼻水が黄色や緑色になった場合も使用を中止して、耳鼻科で診てもらった方が良いでしょう。
相互作用
併用禁忌はありません。併用注意のものがあります。
併用注意
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
CYP3A4阻害作用を有する薬剤 リトナビル等 | 副腎皮質ステロイド剤を全身投与した場合と同様の症状があらわれる可能性がある。 特に、リトナビルとフルチカゾンプロピオン酸エステル製剤の併用により、クッシング症候群、副腎皮質機能抑制等が報告されているので、リトナビルとの併用は治療上の有益性がこれらの症状発現の危険性を上回ると判断される場合に限ること。 | CYP3A4による代謝が阻害されることにより、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 リトナビルは強いCYP3A4阻害作用を有し、リトナビルとフルチカゾンプロピオン酸エステル製剤を併用した臨床薬理試験において、血中フルチカゾンプロピオン酸エステル濃度の大幅な上昇、また血中コルチゾール値の著しい低下が認められている。 |
フルチカゾンプロピオン酸エステルは、通常は吸収された後に代謝されることで全身への影響が少なくなっているのですが、その代謝酵素(CYP3A4)を阻害する薬があります。
併用するとフルチカゾンが分解されないので血中濃度が高くなり、全身性の副作用が出る可能性があります。
上の表の「リトナビル」はHIV感染症に使う薬です。HIV感染症の方は、医師の指示なしに免疫抑制作用のある薬を使う事はしないでください。
リトナビル以外にもCYP3A4の働きを阻害する薬はたくさんあります。
気になる方は薬をもらっている薬局に聞いてみるといいでしょう。
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